「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第7部
火紅狐・掲露記 5
フォコの話、401話目。
克天狐の出自。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
「えー……と」
気まずくなった場の空気を戻そうと、再度フォコが手を挙げた。
「ナンクンを止める、ちゅうわけでは無いのんは分かりましたが、じゃあ、僕らには何を頼むつもりなんです?」
「それを言う前に、もう少し、説明しなければならないことがある。
さっきも触れたが、難訓は『己の創造物』、即ち自分に起源を発するもので、世界を満たしたいと考えている。この世界に生きる人間や、また、俺などは、言わば『不純物』に当たるわけだ」
「ふむ」
「例えそれが、自分の娘であっても、だ。奴にとっては『純度50%』の、不完全な存在なわけだ」
「ふむ。……え?」
その言葉に引っかかるものを感じ、フォコは尋ね返す。
「娘?」
「ああ。この場合、特にまずいことになってくる。
力を持たぬ人間を放っておいたとして、自分に影響があるとは、奴は思わんだろう。だが娘となれば、受け継いだ力は相当なものであるし、俺が直々に術を伝えたのだから、少なからず脅威と判断できる。
そしてここからが、俺が頼みたい件に関わってくるのだが……」「い、いや、いや、あのさ、タイカさん?」
今度はランニャが、慌てて話をさえぎった。
「娘って、ナンクンの?」
「そうだ」
「ナンクンって、タイカさんの奥さんだったんだよね?」
「ああ」
「じゃあその娘って、もしかしてタイカさんの……?」
「そうだ」
この回答に、フォコとランニャは驚愕し、顔を見合わせた。
「ちなみに私は知ってたが、な」
そう言ったルピアにもう一度、二人は驚愕した。
「なんで?」
「昔、私がやんちゃしてた時にな、父親が目一杯しかめっ面して、『頼むから揉め事を起こさんでくれ』って怒ってきたことがあってなぁ……。
その時の顔と、こないだ刀を打ってた時、こいつが見せてた顔が、笑ってしまうくらい似てたのさ。それで察した」
「そう、まさにそれだ。あいつはこの、多忙かつ緊張を極めつつある状況下に、揉め事を起こそうとしているのだ」
大火は地図を机に広げ、央中の中西部を指し示した。
「現在、フォルピア湖と呼ばれている地域に、俺はかつて、娘のかず、……克、天狐を封印した」
「封印?」
「あいつは俺に牙をむいたのだ。その理由は、これもまた、世界征服をしたいがため、だった。
その計画にとって邪魔となる俺と戦い、結果、天狐は敗れた。そして俺は、フォルピア湖中央にある島に、彼女を封じたのだ。
ところがつい最近、その封印に綻びが生じていることが判明した」
「綻び?」
「俺が封印を施す際、天狐はその封印術に、ある仕掛けを施していた。詳細は省くが、俺の持っていた刀、『夜桜』が破壊された際、術式が解けるように組み替えられていたのだ」
「あー、西方でアレが折られちゃったから……」
コクコクとうなずくランニャに、大火は新たに打たれた刀、「雪月花」の柄を叩いて見せる。
「だが、まだ完全には解除されてはいない。そこで封印した場所に赴き、術式を再構成する。『夜桜』の消失で欠けた部分を、この刀で代入して、な」
「なるほど。その手助けを私たちに……、と言うわけか」
「そう言うことだ。
……あいつが完全に復活すれば、難訓は即座に、あいつを殺しにかかる。俺に刃を向けるような跳ねっ返りとて、見殺しにはできん。
俺が守ってやらねばならんのだ」
話を聞き終え、ルピアは複雑な表情を浮かべていた。
「……君の話は分かった。
なるほど、君と同じ力量を持つような魔女が世界征服を狙っているとなれば、それは絵空事ではなくなる。君の強さがあれば容易に達成できるだろうし、そして実際、君は中央政府を掌握した。事実上、達成してしまっているわけだ。そういう話なら、動かないわけには行かないな。
だが断る」
ルピアはギロリと大火をにらみ、こう続けた。
「ゴーレムだろうが元人形だろうが、ランドは私の息子なんだ。
それを封印したのは、何故だ? 何故、私のところに返すとか、穏便で平和な方法が取れなかったんだ?
それをちゃんと説明してくれ。でなきゃ、私は協力しない」
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克天狐の出自。
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「えー……と」
気まずくなった場の空気を戻そうと、再度フォコが手を挙げた。
「ナンクンを止める、ちゅうわけでは無いのんは分かりましたが、じゃあ、僕らには何を頼むつもりなんです?」
「それを言う前に、もう少し、説明しなければならないことがある。
さっきも触れたが、難訓は『己の創造物』、即ち自分に起源を発するもので、世界を満たしたいと考えている。この世界に生きる人間や、また、俺などは、言わば『不純物』に当たるわけだ」
「ふむ」
「例えそれが、自分の娘であっても、だ。奴にとっては『純度50%』の、不完全な存在なわけだ」
「ふむ。……え?」
その言葉に引っかかるものを感じ、フォコは尋ね返す。
「娘?」
「ああ。この場合、特にまずいことになってくる。
力を持たぬ人間を放っておいたとして、自分に影響があるとは、奴は思わんだろう。だが娘となれば、受け継いだ力は相当なものであるし、俺が直々に術を伝えたのだから、少なからず脅威と判断できる。
そしてここからが、俺が頼みたい件に関わってくるのだが……」「い、いや、いや、あのさ、タイカさん?」
今度はランニャが、慌てて話をさえぎった。
「娘って、ナンクンの?」
「そうだ」
「ナンクンって、タイカさんの奥さんだったんだよね?」
「ああ」
「じゃあその娘って、もしかしてタイカさんの……?」
「そうだ」
この回答に、フォコとランニャは驚愕し、顔を見合わせた。
「ちなみに私は知ってたが、な」
そう言ったルピアにもう一度、二人は驚愕した。
「なんで?」
「昔、私がやんちゃしてた時にな、父親が目一杯しかめっ面して、『頼むから揉め事を起こさんでくれ』って怒ってきたことがあってなぁ……。
その時の顔と、こないだ刀を打ってた時、こいつが見せてた顔が、笑ってしまうくらい似てたのさ。それで察した」
「そう、まさにそれだ。あいつはこの、多忙かつ緊張を極めつつある状況下に、揉め事を起こそうとしているのだ」
大火は地図を机に広げ、央中の中西部を指し示した。
「現在、フォルピア湖と呼ばれている地域に、俺はかつて、娘のかず、……克、天狐を封印した」
「封印?」
「あいつは俺に牙をむいたのだ。その理由は、これもまた、世界征服をしたいがため、だった。
その計画にとって邪魔となる俺と戦い、結果、天狐は敗れた。そして俺は、フォルピア湖中央にある島に、彼女を封じたのだ。
ところがつい最近、その封印に綻びが生じていることが判明した」
「綻び?」
「俺が封印を施す際、天狐はその封印術に、ある仕掛けを施していた。詳細は省くが、俺の持っていた刀、『夜桜』が破壊された際、術式が解けるように組み替えられていたのだ」
「あー、西方でアレが折られちゃったから……」
コクコクとうなずくランニャに、大火は新たに打たれた刀、「雪月花」の柄を叩いて見せる。
「だが、まだ完全には解除されてはいない。そこで封印した場所に赴き、術式を再構成する。『夜桜』の消失で欠けた部分を、この刀で代入して、な」
「なるほど。その手助けを私たちに……、と言うわけか」
「そう言うことだ。
……あいつが完全に復活すれば、難訓は即座に、あいつを殺しにかかる。俺に刃を向けるような跳ねっ返りとて、見殺しにはできん。
俺が守ってやらねばならんのだ」
話を聞き終え、ルピアは複雑な表情を浮かべていた。
「……君の話は分かった。
なるほど、君と同じ力量を持つような魔女が世界征服を狙っているとなれば、それは絵空事ではなくなる。君の強さがあれば容易に達成できるだろうし、そして実際、君は中央政府を掌握した。事実上、達成してしまっているわけだ。そういう話なら、動かないわけには行かないな。
だが断る」
ルピアはギロリと大火をにらみ、こう続けた。
「ゴーレムだろうが元人形だろうが、ランドは私の息子なんだ。
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