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「火紅狐」
火紅狐 第7部

火紅狐・狐殿記 4

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フォコの話、406話目。
難訓の、最後の「お人形」。

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4.
「……!」
 扉に引っかけたらしい帽子を直しつつ近付いてくる、灰と黒の縦縞のピエロ服を着た、その子供を見て、フォコは身構えた。
「ナンクンのゴーレム……!」
「これはこれは、二コル卿」
 ピエロはにやり、と気味の悪い笑みを浮かべた。
 その顔は、真顔であれば、黒水晶の中で眠る少女――天狐の顔に、そっくりだった。
「あなた様が、克大火様の護衛、と言うわけでございますか」
「お前だけじゃないぞ」
 いつの間にか、ルピア・ランニャ母娘も、フォコの側に来ていた。
「カツミ君の言う通りだったな。やっぱり、ここへ探りを入れに来たか」
「ええ、お察しの通りでございます。そして目的のものも、見つけることができました。主様に、良い報告が致せそうです」
「礼の一つでも言ってほしいもんだがな」
「言ったところで、あなた方は喜ばれないことは明白でございますから。わたくしを、止めるおつもりでしょうし」
 そう言ってピエロは、じゃらり、と鎖を手に取る。
 その先には無数の棘が付いた鉄球がつながれており、やたらに凶悪な印象を与えていた。
「モルゲンシュテルン(モーニングスター)、……の派生か。シュテルンペッツェ、とでも呼べばいいか」
「どうとでもお呼びいただいて、結構でございます」
 ピエロは鎖をヒュンヒュンと音を立てて振り回し、名前を名乗った。
「申し遅れました。わたくしの名は、ホーネット。
 あなた方一派に散々打ち壊された兄弟たちの、末の者でございます。それ故……」
 ホーネットは鎖を離し、ごう、と音を立てて鉄球を投げ付けた。
「うお……っ!」
 フォコたち三人はその場から飛びのき、鉄球をかわす。
 床に落ちた鉄球はボゴ、と鈍い音を立て、床に大穴を開けた。
「今までの兄弟たちが経験してきた情報をすべて、わたくしの身に集積・蓄積し、対処を立てております。
 例えば二コル卿、あなたの行動パターンは……」「『ファイアランス』!」
 ホーネットが言い終わらないうちに、フォコは魔術を放っていた。
「強い相手に対しては、十分な距離を取った上で、火の術で攻撃をなさいます」
「うっ……!?」
 ホーネットは姿勢を低くし、フォコの放った火の槍をかわし、もう一度鉄球を投げ付けた。
「ぐあ、っ」
 辛うじて盾を掲げ、鉄球が体にめりこむのは防いだものの、フォコは弾き飛ばされてしまった。
「そしてランニャ様、いえ、ゴールドマン夫人」
「このやろッ!」
 剣を振り上げ、飛び掛かってくるランニャに、ホーネットはにやぁ、と不気味な笑みを向ける。
「直情径行なあなた様は、夫様があのように攻撃されれば……」
「う、……っ」
 ホーネットは鎖をランニャの剣と右手、胸にぶつけ、フォコと同様に弾く。
「……愚かにも、真正面から向かって来られる」
「げ、ほっ」
 フォコもランニャも、部屋の端にまで飛ばされていた。
 特にランニャの方はダメージが深く、剣は真っ二つに折られ、腕も不自然に曲がり、口からは血まで吐いている。
「ランニャ! 大丈夫か!?」
「げほ、げほっ……、だ、だい、じょぶ」
「嘘言うなや、……ああ、くそっ」
 フォコには治療術の資質が無く、彼女を治すことができない。
「ふざけんなや、ポンコツ人形……! 何してくれとんねや、あぁ!?」
 フォコの反応を見たホーネットは、あの嫌味じみたクスクス笑いを浮かべる。
「やはり、やはり、データの通りでございますね。その知性のわりに、すぐ、激昂される。
 そうなればもう、後の行動は奥様と同じ。滅多やたらに飛び込まれ、……そしてわたくしの、餌食となるでしょう」
「……~ッ」
 フォコは怒りに任せて駆け出そうとする自分を、懸命に抑える。
 一方、冷静に状況を見定めようと構えていたルピアに、ホーネットは声をかけた。
「そしてネール大公」
「……」
 ホーネットはニヤニヤと笑いながら、扉の外を指差した。
「あなた様のデータも、元夫様からいただいております」
「……なに?」
 ルピアが目を向けた先には、扉の陰からそっと顔を出す、シロッコの姿があった。
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