黄輪雑貨本店 新館


    「火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・狐殿記 7

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    フォコの話、409話目。
    黒い悪魔と白い妖魔。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    7.
    「……チッ」
     大火はその結果に、顔をしかめた。
    「あなたはいつの間に、そこまで愚かになったのでしょう」
    「仮説が事実であるかどうか検証するのは魔術師、研究者の端くれとして、当然の行為だ」
    「結果が分かっていることをわざわざ実証なさるとは、愚かでなくて何と申せばいいのやら」
     そう言って、今度は難訓が術を放つ。
    「『ピアシングクロス』」
    「ぐ、ふ……っ」
     先程とは反対に、大火の体を難訓の術が貫き、大火はその場に倒れる。
    「……」
     だが、大火もまた、何事も無かったかのような状態で、その場に立っていた。
    「この呪いは便利であると同時に、疎ましいものでもございますね」
    「そうだな。……俺はお前を、どんな方法を用いようと殺せない。そして逆に、お前は俺を、どんな方法を用いようと、殺せない。
     この呪いの特筆すべき欠点であり、特長でもある」
     そう言って大火は左の手袋を脱ぎ、薬指の無い左手を見せた。
     難訓も応じるように、裸の左手を挙げて見せた。
    「わたくしたち同士で決着が付くのならば、本当に、話は早いのに」
    「つくづく、そう思う。だが白雪」
     大火は再度、刀を抜く。
    「お前がこれ以上、一聖に手を出すつもりなら、俺はいくら無為に終わろうとも、お前を斬り続けるぞ」
    「クスクスクスクス」
     難訓は笑い出し、もう一度肩をすくめた。
    「分かりました、分かりました。今しばらく、あの子には手を出さないでおきましょう。
     どの道、今のわたくしには、そんな余裕がございません故」
    「うん?」
    「先程も申し上げた通り、わたくしの手足となるべき人形たちが、すべて壊れてしまいました。必要数を造り、幾許かの『慣らし』を済ませ、十分な体制を整え直すまで、相当の時間を要します。
     ですので、確約いたしましょう――わたくしは後50年か、100年は、わたくしの方から動くことは無いと。そして一聖が自分から刃向わない限り、わたくしの方から手を出しはしない、と」
    「ならば、いい」
    「では、また」
     難訓はフードを深く被り、その場から消えた。



     天狐の眠る部屋に残されていたフォコとランニャ、そしてルピアは、大火が戻るまでの間、会話を交わしていた。
    「この子もカツミ君に封印されたまま、か」
     黒水晶を眺め、ルピアはそうつぶやく。
    「タイカさんも、色々大変ですな。あれもこれも、一人でやってかなアカンみたいですし」
    「……そうだな。ランドの件もあいつにしてみれば、無理難題を要求されているようなものなんだろう。
     そう考えると、……さっき怒鳴った話、私だってデカいこと言えないんだよな。自分の都合を押し付けたわけだし」
    「いやぁ……、そもそもがタイカさんと、ナンクンの都合から出た話ですし」
    「……すごいコトに巻き込まれてるんだよなぁ、あたしたち」
     フォコに膝枕をしてもらっていたランニャがふと、そんなことを言った。
    「ん?」
    「タイカさんはそれこそ『悪魔』、人外に近い存在じゃないか。それに対抗するナンクンも、同じくらいヤバい奴なんだろうし。
     その二人が争ってる、その渦中に、あたしたちは関わった。生きてるのが不思議なくらいだよねぇ」
     ランニャの頭を撫でながら、フォコもそれに同意する。
    「ホンマやなぁ……。こんな滅茶苦茶な目、そうそう遭いたくないわ、ホンマ」
    「私も同感だな。今回の件が明らかになれば、相当な騒ぎになるだろう、な。悪魔と悪魔が戦っているなど、背筋が冷える話だ」
    「特に、中央政府筋には知られたくないことだ」
     と、そこへ大火が戻って来た。
    「今回の一件は終生、世に広めないよう、強く要請する」
    「分かってるさ。中央の小役人や木っ端軍人共がテンコちゃんの存在を知ったら、利用しようだの強請(ゆすり)の材料に使おうだの、ろくな話にゃならん。
     この話は私とランニャ、そしてフォコ君の胸にしまっておくさ。そうだよな、お二人さん?」
    「ええ、ナイショにしときます」
    「勿論だよ」
     それを受けて、大火は小さく頭を下げた。
    「協力、誠に感謝する」
    「ええですよ」
     フォコはニヤリと笑い、こう返した。
    「契約は契約、タイカさんが守ってくれはったんですから、僕らも守った。
     それだけの話ですわ」



     こうして、世界の命運を揺るがしかねなかったこの一大事件は、「大交渉」と言う歴史上の壮大な事件に隠れる形で、ひっそりと解決された。

    火紅狐・狐殿記 終
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    いいえ、前話で手を打たれてしまってます。

    このままシロッコを放逐したとして、
    彼は果たして、難訓にとって有益な存在――即ち、
    「できる限り姿を隠していたい」彼女のためになるか?
    恐らく否でしょう。あることないこと言いふらす一方で、
    難訓についても辺り構わずしゃべり倒す恐れ、大ありです。

    というわけで、難訓が既に手を打ってしまってます。
    踊らされたダメ人間です、シロッコ。

    NoTitle 

    どうせ女房とよりを戻せないのならと、この神殿についてシロッコさんがあることないこといいふらすような予感が……。

    まあ次の章で手が打たれるか(^^;)
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