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    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第1部

    白猫夢・麒麟抄 1

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    麒麟の話、第1話。
    克大火の弟子;未来を見つめる者。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     読めていたはずだ。
    「な……なんで……」
     ボクには、すべてが読めていたはずだった。
    「なんで……こうなった……」
     読めていたはずだったんだ!

     だけど何故、何故!?
    「思い知ったか、麒麟」
    「なにを、……何を、思い知れって言うんだッ!」
     何故ボクは、このいけ好かない、真っ黒な、
    「己の身の程を、だ」
    「……ッ、そんなもの!」
     魔術と求道と、マコトさんのコトくらいしか考えてない、
    「分かり切ってるさ!
     分かり切ってる、ボクはアンタより魔力がある! アンタより魔術理論に長けている! その上、アンタには無い能力も持ってる!」
     ボクより弱いハズの、
    「アンタなんかより、ずっとずっと、ボクの方が強いんだってコトもだッ!」
    「ククク……」
     まるで鴉みたいな、クセの強い笑い方をする、
    「もう一度だ……! もう一度来い! 叩き伏せてやるッ!
     来いよ、タイカああああああッ!」
     この師匠に。

    「お前のことは、十分に理解していたと思っていたが」
     何故?
    「過大評価していたようだ」
     何故なんだ?
    「お前がこれほどの、愚にもつかぬ暴挙に出ようとは。そして」
     何故、ボクは。
    「己が負けたことも、理解しようとしないとは、な」
     何故負けたんだ……?



     ボクには、分かっていた。

     ボクには、お師匠のタイカさん――ボクが知る限り、ボクを除けば、世界一の魔術師である、彼にも無い能力を持っていた。
     そのチカラが有ったから、タイカさんはボクを弟子にした。
     そして弟子になり、修行と勉強を続け、ボクの魔力と知力はぐんぐんと伸び、タイカさんに並び、そしてついには追い抜いた。
     そして今、ボクはタイカさんを実際に超えようと、挑んだ。

     分かっていた。
     分かっていたはずなのに。

     ボクには、分かっていたはずだった。
     でも――結果は、違った。
     ボクが分かっていた結果とは、まるで違っていたんだ。



     でも――負けた瞬間に、また、あることが分かった。
    「……そんなコト、するの……」
    「何かは分からんが、……俺はお前にそうするのだろう、な」
    「一体、ボクはどうなるんだ」
    「『見れ』ばいい」
    「……そう……だね……」
     それ以上、ボクは何も言えなかった。

     タイカさんが「見ろ」と言った瞬間、ボクはまた、未来を見た。
     そこにいたボクは、……もう、人間じゃ無さそうだった。

     ボクは一体、何になったんだろう……?

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    新連載始まりました。
    いや、始まってないか。

    これは新連載の、プロローグです。本編は明日から。
    そしてこの「麒麟抄」2話目はその、本編第1部を終了後に掲載する予定です。
    ああ、ややこしい。
    今作は、今までの自分にはかなり珍しく、見切り発車の連続になると思います。
    収拾付けられるのか、今からものすごく心配。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2013.11.21 一部修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    ご指摘ありがとうございます。

    状況としては、(話し手の)傲慢な発言に、
    師匠であれば本来たしなめたり、叱ったりするべきなのでしょうが、
    それが通用しない、聞き入れないだろうと分かっているので、
    仕方なく笑うしかなかった、……という感じですね。
    「引きつり笑い」という表現でもおかしくは無いかなと思います。

    ただ、伝えたかったそのニュアンスが、
    今一つ表現できていなかったかも知れません。
    後日、修正します。

    NoTitle 

    引きつり笑いの使い方おかしくないですか?

    NoTitle 

    応援、ありがとうございます。
    これからよろしく、お付き合いください。

    自分の場合、書いているうちに着地点がずれていくことが良くあり、
    書き貯めずに順次発表していくと、
    話のつながりがおかしなことになってしまうもんで(;´∀`)
    最初いいキャラだった人が、後ですごく嫌なヤツになってしまったりとか。
    そういったずれを避けるため、一度書き上げてから全体の手直しをし、それから掲載してます。
    細かいところが気になっちゃう性格なので……。

    NoTitle 

    なんとかしようと思ったらなんとかなるものです(^^)

    見切り発車を一度クリアしてしまえば、怖いものがひとつなくなります。

    健闘をお祈りいたします。

    わたしの場合、むしろ、「書き貯めて一度に発表」のほうが、どちらかといえば失敗の可能性が高い、という……いやほら、書いているうちに手直ししたくなっちゃったり、書きたいところだけ先に書いて満足しちゃったり、前後のつながりが破綻していることに書いていて気がついたり、と……(^^;A
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    麒麟の話、第1話。克大火の弟子;未来を見つめる者。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1. 読めていたはずだ。「な……なんで……」 ボクには、すべてが読めていたはずだった。「なんで……こうなった……」 読めていたはずだったんだ! だけど何故、何故!?...
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