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    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第3部

    蒼天剣・霊剣録 8

     ←蒼天剣・霊剣録 7 →蒼天剣番外編 その1
    晴奈の話、第118話。
    晴奈とウィルバーの共闘。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    8.
    「……い! おい! 起きろ、セイナ!」
     誰かが体をゆすっている。晴奈は重たいまぶたをこじ開け、その相手を見た。
    「……うう、ん、ウィルバー? ……ウィルバーだと!?」
    「お、ようやく起きた。早いとこ脱出するぜ、ホラ!」
     ウィルバーが無理矢理に、晴奈の腕を引っ張る。
    「何をする! 離せ、無礼者!」
    「目、覚ませって! 早いとこ脱出しねーと、俺たち細切れに解剖されちまうぞ!」
    「……? 何を言って……」
     尋ねようとしたところで、記憶が断片的に蘇ってくる。
    「……む? 確か、私は天玄で、お前と戦っていたはず」
    「そーそー、そうだよ。んで、いきなり誰かが『ショックビート』使って横槍入れやがったんだよ。だからオレたちは気を失って、ここまで運ばれてきたんだ」
    「そう、か。……解剖と言うのは、一体何のことだ?」「しっ」
     ウィルバーが何かに気付き、慌てて晴奈の口を押さえる。晴奈はウィルバーの手をはがそうとしたが、とても真剣な目つきだったため、素直に手を止めた。
     と、二人がいた部屋に薄い光が差し込む。そしてドサドサと言う音と共に、十数名の人間が放り込まれた。
    「はい、次」
    「はいよ」
     少し間を置いて、また人が放り込まれる。光が弱くてよく分からないが、どうやら東門で戦っていた教団員と剣士、そして連合軍の兵士のようだ。
    「後いくつ残ってたっけ」
    「2台分」
     光の向こう側から、ボソボソと声が聞こえてくる。やがて光は途切れ、晴奈とウィルバーはふたたび薄闇の中に取り残された。
     ウィルバーはそろそろと手を離し、状況を説明する。
    「さっきから何度か、あーやって人が運ばれて来るんだ。お前はついさっき運ばれてきた」
    「そうか。彼奴らは一体、何者だ?」
    「アマハラ大司祭の抱えてる隠密部隊だ。会話を聞いたところでは、どうやらオレたちはヤツの実験台にさせられるらしい」
    「実験台だと!?」
    「バカ、声でけえよ!」
     ウィルバーはもう一度、晴奈の口を押さえた。
    「ともかくだ。ここでぼんやり寝転んでたら、明日には紫色に光る標本にでもされかねない。次に人が運ばれてくる前に、急いで脱出しようぜ」
     晴奈はコクコクとうなずき承知した。ウィルバーがもう一度手を離したところで、晴奈が質問する。
    「他の者たちは?」
    「助ける余裕は無い。ともかく、オレたちが脱出するのが最優先だ」
    「何だと?」
    「落ち着けって。いくらなんでも、このまんま見捨てるつもりはねーよ。これでもオレは、こいつらを率いる役目に就いてんだからな。
     まず、第一にやらなきゃならないのは、オレたちが先に出て、こいつらを助け出せる手段を確保することだ。そうだろ?」
    「そう言うことならば、まあ、良しとしようか。……む、刀が」
     晴奈は腰に手を当て、自分の武器が奪われているのに気付いた。
    「まあ、当然っちゃ当然だろ。無力化しなきゃ集めた意味ねーからな。しばらくは素手で行動しなきゃならねーけど、ま、セイナなら大丈夫だろ」
    「馴れ馴れしく呼ぶな。私とお前は敵同士だぞ」
     憮然とする晴奈に、ウィルバーは軽口を叩く。
    「何ならオレのこと、ウィルって呼んでいいぜ。オレの愛称だ」
    「何を馬鹿な。脱出するのに協力し合うのはやぶさかではない。だが、馴れ合う必要など無いだろう」
    「へーへー、お堅いこって」
     ウィルバーは両手を挙げ、静かに部屋の壁を探り始めた。
    「……ここだ。ここが、さっき開いてたところだな。……外に人はいないみたいだ。セイナ、蹴破るぜ」
    「承知した」
     晴奈とウィルバーは同時に扉を蹴る。
     二、三度蹴りつけたところでミシミシと音を立て、扉が破れた。
    「よし、急いで出るぞ!」「おう!」
     人がいないのをもう一度確認し、晴奈たちは廊下を走った。

     しばらく黙っていた霙子が、不意に口を開く。
    「……エルスさん。この女、どうするの?」
    「とりあえず、牢に入れる。それから尋問するつもりだよ。彼女には要人暗殺やその教唆、央南連合転覆の謀議など、かなりの重犯罪容疑がある。
     確定すれば、確実に終身刑だろうね」
    「そう。……じゃあ、それでもいいかな」
     霙子はエルスの手を取り、ぎゅっと握りしめる。
    「条件、ちょっと変えるわ。こいつだけじゃなく、篠原龍明も牢にぶち込んで。約束すれば、教えたげる」
    「そのつもりだよ。……じゃあ、案内してもらおうかな」
     エルスは優しく笑いかけ、もう一度霙子の頭を撫でた。

     天原の隠れ家から少し離れた、天神湖のほとり。
     ボロボロの外套をまとった狐獣人がくんくんと鼻を鳴らす。
    「……間違い無いね。かなり濃い魔力を感じるね。かなり大規模に、魔術実験を行っているみたいだね。ようやくあの本を見つけられる、かねぇ?」
     狐獣人は拳を握りしめ、ぽつりとつぶやいた。
    「待っててね、雪花。必ずあの本、持って帰ってあげるからね」
     狐獣人の姿をしたモールは、その魔力源へと向かった。



     天原を狙い、様々な人間がその場に集まっていく。決戦の時は、近付いていた。

    蒼天剣・霊剣録 終

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    2016.03.25 修正
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    ~ Comment ~

     

    あくまで「蒼天剣」はファンタジーでいさせたい><
    実を言うとショッカーやデビルマン的な展開も好きではなかったり。
    敵の力で強くさせられるって言うのは、なんだか敗北した気分になってしまいます。
    強くなるにしてもそのままでいるとしても、主人公の意思に委ねたいところですね。

    ライバル同士が手を組む展開は好きですね。
    あくまで敵だけど、目の前の脅威を倒すために結束する、
    って言う流れはバトル系の王道ですし。

     

    セイナとウィルバーが組む話ですね。
    実験台にされそう!!っていうのが面白いですね。いっそのこと、実験台にされて猛烈に強くなる!!??って展開でも面白そうですね。…と、そうなると最早ファンタジーではなくて、SFになりそうですね。どうも、LandMでした。
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