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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第1部

    白猫夢・逸狼抄 2

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    麒麟を巡る話、第12話。
    確執、今もなお。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
    「うめー」「うまぁ」
     缶詰ではない食事を口にし、秋也と昂子は同時に感動する。
    「肉、臭くない!」
    「野菜、こんなに食べられる!」
    「やっぱり……」
     そしてまた同時に、二人は声を挙げた。
    「普通の料理、サイコー!」
     と、二人で騒いでいるところに、店主がそっとやってくる。
    「すまんが、お二方。あまり大声を出すのは遠慮願いたい」
    「あ、すんません」
     ぺこ、と頭を下げた秋也に、店主は苦々しい目線を向ける。
    「まったく、これだから焔の奴らは……」
    「え?」
     秋也たちがわずかながらも憮然とし、それに対して見た店主はぺこ、と頭を下げ返す。
    「……いや、失敬。今は友好関係にある方々に、無礼なことを言った」
     そう言い残してそそくさと立ち去った店主に、昂子も眉をひそめる。
    「何アレ、すっげー感じ悪いんだけど」
    「まあ、そう言うなって。元々さ、焔流と黒炎は仲悪かったんだしさ、今でもまだ、良く思ってないヤツもいるんだよ」
    「昔のコトじゃん」
    「お前にとっちゃ昔のコト、産まれてもいない前の話だろーけどさ、歳いったヤツにはまだ『今』の話なんだって」
    「……どーでもいーや。食べよ、食べよっ!」
     昂子はけろっとした顔で、肉を口に入れた。



     その夜――。
    「……ええ。間違いありません、見覚えがあります。宿帳の名前からしても、彼に相違ないでしょう」
     先程秋也たちをたしなめた、あの教団員の店主が、黒鳥宮の人間と「魔術頭巾」で連絡を取っていた。
    「どう致しますか?」
    《どうって、……うーん》
     真剣な声色を立てる店主に対し、相手はぼんやりとした返答を返す。
    《どうもしなくていいんじゃないかなー、なんて》
    「何故です? 表向きは休戦協定や友好宣言を結んだとは言え、あの焔流ですよ? その上、奴は先の大会で、我々に恥をかかせた! このまま何もしないで通すなど……」
    《表向きには友好にしてるでしょ? じゃあ、表向きだけでいいからニコニコ笑って通せばいいじゃないですか》
    「そんなわけには……」
    《私もね、どちらかって言えば友好派なんですよねぇ。そりゃ教団員ですから武術はたしなんではいますけども、血生臭いのや汗臭いのは嫌いなんですよ》
    「ふざけないでください!」
    《ふざけてなんかいません。私は『わざわざ無意味に揉めるようなことはしたくない、折角どちら側も仲良くしようと言ってるんだから、そのまま通す方がいいだろう』と、至極まともに主張してるだけですよ。
     それともあなた、超穏健派である今の教主に逆らうと言うおつもりですか? それこそふざけた、不遜な態度じゃありませんか?》
    「それは……、いや……」
     相手は余程面倒だったらしく、ここで話を切り上げてきた。
    《とにかく、私からは何もしないことをお勧めします。一応、上には話を通しますけど、多分私と同じ答えが返ってくるでしょうね。
     また何かあったら教えてください。それじゃ》
    「あ、ちょっ」
     店主は話を続けようとしたが、そこで通信は切れた。

     宿の中をうろついていた昂子は、この会話を物陰で、そっと耳にしていた。
    (やっぱあの店主、あたしら嫌ってたみたいね)
     昂子は欠伸を噛み殺しながら、店主の行動を嘲った。
    (話の感じからすると、相手は教団の総本山の誰か、ちょっと偉い人だったのかしらね。でも結局、襲うとかってのは却下された感じか。
     イマドキ流行んないって、武力行使とか力ずくとか、喧嘩とかメンツとか。ばっかみたい)
     昂子は小さく欠伸をし、それから寝室に戻った。



     黒荘にて秋也たちを拘束すると言う、この物騒な計画はあっさり却下されたものの、教団本部には秋也たちが来ている旨については、約束通り伝えられた。
     そして予想されていた通り、教団の上層部はそのまま通すことを決定した。
     それを良しとしなかったのが――。
    (……やはり、腑に落ちない!)
     あの少年、ウォンである。
    (母上を侮辱するわけではないが、相手は我らが誇り、教団の威信を担って舞台に上がった僧兵たちを、あろうことか公衆の面前で辱めた奴なんだぞ!? それを何の咎めもせずに通すなど、僕たちのメンツに関わる!
     僕は嫌だぞ、『黒炎教団は腑抜けの集まりだ』などと囃されるのは!)
     ウォンは壁にかけていた武器――三節棍を手にし、部屋を抜け出した。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    >ポールさん
    こちらこそ、ありがとうございました。
    また大阪ないし京都、あるいは関西圏内にいらっしゃった際は、
    またお会いしましょう。

    ウォンくんではないです。まったく別人ですね。

    「ボケ」と「ツッコミ」と「境界型」の三人になりますね。
    誰がどれなのかはあえて言及しませんが。

    NoTitle 

    >しやたん
    ヌンチャクは二節棍。
    一本足りません。

    NoTitle 

    ヌンチャクキターv-405

    NoTitle 

    先日はいらしていただいてどうもありがとうございました。あの波乱万丈な大長編をふたつも書いたのはどんなかたなのかと思っていたら柔和そうなかただったのでびっくりしました。いつになるかはわかりませんが、また絶対に大阪に行きますのでそのときはよろしく。まだタコ焼きもお好み焼きも食ってないので(^^)

    もしかしてプロローグでひどい目にあっていたのはこのウォンくん……じゃないですよね。

    ウォンくんも加わって三人パーティになったら……いかん。「ボケ」がふたりと「ツッコミ」がひとりで、「巻き込まれておろおろする普通人」がいない(笑)
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