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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第1部

    白猫夢・逸狼抄 3

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    麒麟を巡る話、第13話。
    ウォンの暴走。

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    3.
    「あー……、だから朝食は雑だったんだな。昨夜のに比べて」
    「露骨に嫌がってたわね。ま、缶詰よりはマシだけどさ」
     翌朝、黒荘の宿を発った二人は、店主の態度について話していた。
    「にしてもさ、根に持ち過ぎだと思うんだよね。そりゃ確かに、大会で恥かかされたってのはあるだろうけど、ソレだって結局、秋也より弱かったからじゃんよ」
    「お前、ソレは教団の奴らの前では絶対言うなよ」
    「なんでよ? 間違ってないじゃん」
    「そりゃ、そう言う見方もあるだろうけどさ……。
     お前、人の傷口に塩をぐりっぐり塗り込むな。しかも無意識に」
    「そう?」
     あっけらかんと返す昂子に、秋也は苦い顔を返すしかなかった。



     自分の部屋を飛び出したウォンは、怒りに満ちた足取りで黒鳥宮の中を突き進んでいた。
    (こうなれば僕一人ででも……!)
     単騎で秋也たちを迎え撃つ覚悟を決め、ガツガツと足音を立てて闊歩していると――。
    「ウォーナード様!」
     呼び止められ、ウォンは振り返る。
     そこには顔をこわばらせた僧兵たちが6名、合掌しながら直立しているのが確認できた。
    「なんだっ」
     思わず声を荒げてしまい、ウォンは取り繕う。
    「コホン、……なんだ?」
    「我々も、焔流剣士がこちらに向かってくると聞きました。……もしや、ウォーナード様は」
    「……だとしたらどうだと言うんだ。止めるのか?」
     高圧的な口調でそう返し、僧兵たちを退けようとしたが――。
    「我々もお供致します!」
    「何? 僕に、付いてくる?」
     思ってもいない反応に、ウォンは思わず聞き返した。
    「我々も上層部の決定には納得しておりません!」
    「我々に仇なした焔流の人間をこのまま素通りにしておくなど、到底我慢なりません!」
     僧兵たちの言葉に、ウォンは思わずにやりとする。
    「……そうか、お前たちもか」
     ウォンは手にしていた三節棍を掲げ、こう叫んだ。
    「よし、他にも同志がいるはずだ! 集めて焔流を叩くぞッ!
     たるみ切った上層部の決定など、知ったことか! 僕たちは真に教団の威信を背負いし者として、憎き焔流の奴らに鉄槌を下してやるのだ!」
    「おうッ!」
    「僕は正門裏にて待機する! お前たちは修練場と住居棟を密かに周り、僕が同志を募っていることを伝え、人を集めるんだ!」
     ウォンは僧兵たちに指示を飛ばし、正門に向かって駆け出した。

     1時間後、正門裏には50名を超える僧兵たちが集まった。
    「ふむ……、意外に少ないな」
    「折悪く、ワニオン枢機卿がいらっしゃいまして。修練場の者には声をかけることができず……」
    「朝の修練に出ている者も多い分、住居棟には人が居るはずも無し、か。……いや、しかし」
     ウォンは首を振り、握り拳を固めた。
    「焔流剣士とは言え、たった一人や二人が相手であれば、これで十分事は足りる。
     よし、全員出陣だ! 憎き焔流剣士を、血祭りに挙げてやるぞ!」
    「おうッ!」
     50名を超える僧兵たちは、ウォンを先頭にして行進を始めた。
    「な……っ?」
     固まって進んでくる僧兵たちを見て、門番らは目を白黒させる。
    「何をなさるおつもりですか、ウォーナード様!?」
    「決まっている! 我らに恥をかかせた焔流の者を、ここで袋叩きにしてやるのだ!」
    「そんな……! 猊下らのご意思を、無視なさるおつもりですか!?」
     止めようとする門番に、ウォンは三節棍を向けた。
    「お前は悔しくないのか!? これ以上彼奴らに、嘲られてなるものか!
     どけ! どかなければ力づくで通るぞ!」
     ウォンが構えると同時に、背後の僧兵たちも凄んでくる。
    「う……ぐ」
     門番はそれに気圧され、仕方なく門を開けた。
    「行くぞ! 朝に黒荘を発ったのならば、こことふもとの中間地点、中腹あたりで接触するはず! それまでに峠を封鎖し、足止めするんだ!」
    「おうッ!」
     バタバタと足音を立て、門を突破した僧兵たちの後姿を見た門番は、慌てて宮内に駆け込む。
    「ウォーナード様が乱心された! 兵を集めて焔流の人間を討とうとしている! 誰か、誰か来てくれーッ!」
     この騒ぎは間もなく、教団の上層部が知ることとなった。
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    NoTitle 

    そんなことには、秋也が絶対にさせません。

    NoTitle 

    昂子たんが目の前で酷い目に遭わされるんですねv-398
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