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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第1部

    白猫夢・遭克抄 3

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    麒麟を巡る話、第28話。
    天狐ちゃん、再び。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     秋也たちが渾沌に敗北した、その3日後――。

     ミッドランド郊外、とある屋敷の中。
    「ねえ、姉(あね)さんっ」
    「あー?」
     歩く度にシャラシャラと鈴の音を鳴らす長耳が、机に脚を乗せて座り込む狐獣人らしき少女の肩をポンポンと叩きながら、こう尋ねてきた。
    「昂子ちゃん、いつ来るんだろうねっ?」
    「知るかよ」
     狐獣人は九つある自分の尻尾をわしゃわしゃと撫でながら、気怠そうに応える。
    「来るっつって、ソレからもう、予定してた日を3日、4日過ぎてるんだろ? 途中で『やっぱヤダ』っつって、帰ったんじゃねーの?」
    「ソレは、……無いと思うけど。もしそんなコトあったら、小鈴が伝えてくるだろうし」
    「大見得切って家を出た手前、帰るに帰れねーっつーコトもあるだろ?」
    「ソレは、……ありそうだけど、無いと思いたいなーって。
     そ、ソレにさ、ほら、姉さんの『お気に入り』の息子さんも一緒なんだし、逃げるってコトは無いんじゃないかなー、なんて」
    「……じゃあ、他に何か、アクシデントみたいなのがあったってか?」
     狐獣人は机から脚を降ろし、ひょこ、と立ち上がる。
    「鈴林、お前さぁ。ファンタジーとか童話とか好きなのはお前の勝手だけどよ、もうちょっと現実的になれよなー。
     いくらあの姉さんの血筋だっつっても、そうそう毎度毎度、トラブルに巻き込まれるワケが……」
     そう返していたところで、屋敷の戸をトントン、と叩く音が響く。
    「あ、はーい!」
     鈴林と呼ばれた長耳は、姉弟子の小言を切り上げて玄関に飛んで行った。
    「……ったく」
     狐獣人は肩をすくめ、もう一度椅子に座り直そうとした。
     そこに、鈴林の叫び声が飛んでくる。
    「姉さん姉さん姉さんっ! 来て来て早く来て!」
    「あぁ? ……なんだよ、うるっせーなー」
     狐獣人は本当に面倒臭そうに、玄関へ向かう。
    「なんだよ、受講者か?」
    「違う違う違うの! 昂子ちゃんと秋也くんと、あと一人来たんだけど、あの、えっと」
    「ん? よーやく来たの、……あぁ?」
     玄関先に立っていた鈴林と、来訪者とを見て、狐獣人は目を丸くした。
    「……何があったのか、聞いた方がいいのか?」
     訪れた三人――顔全体に包帯を巻いたウォン。目に隈のできた、土気色の顔をした昂子。そして左腕を、何重もの布で覆い隠す秋也の姿に、狐獣人は怪訝な顔を向けた。



    「ふーん……? 克渾沌、ねぇ」
     秋也から話を聞き終えた狐獣人――克大火の七番弟子、金毛九尾の克天狐は、もう一度訝しげな表情を浮かべる。
     ちなみに、昂子とウォンは小屋に入るなり即座に、鈴林によって寝かし付けられた。話を聞こうにも、あまりにも心身を耗弱させており、まともに話すことすらできなかったためである。
    「その名前は知らねーな。……ただ、楓模様の付いた仮面を付けた、無茶苦茶に強ええ女、ってのには心当たりがある」
    「うんうん」
     天狐と鈴林の二人は、揃って渋い顔になった。
    「知ってるんですか?」
     尋ねた秋也に、天狐はふん、と鼻を鳴らす。
    「ああ。……忌々しいコトに負けちまったんだよな、そいつに」
    「え?」
    「意外な顔すんなよ。……つってもな、オレが負けたのは、今まで3回しかねーんだぜ?
     オレの師匠とそいつと、お前のお袋さんに、だけだ。ソレ以外は負けてねー」
    「あ、そ、そうですね」
     かしこまる秋也を見て、天狐はぷっと噴き出した。
    「あんまり堅くなんなよ、オレも話し辛い。気軽に『天狐ちゃん』っつー感じでしゃべってくれたらいいからよ」
    「あ、はい。……えーと、じゃあ、天狐ちゃん」
    「おう」
    「オレの腕……、その……、見てくれないかな、……って」
     秋也は口ごもりながら、隠していた左腕を見せる。
    「……ひっでえな。悪趣味過ぎるぜ」
    「ああ……」
     秋也の左腕があった場所には、猫の手を模したぬいぐるみが付けられていた。
    「コレは……」
     天狐がその腕をつかむと、秋也はビク、と震える。
    「感覚はあるみたいだな」
    「ああ」
     撫でたりつねったり、握ったりしながら、天狐は秋也の腕を見定める。
    「うーん……。コレは、……アレかなぁ」
    「アレ?」
    「ちょっと待て。……よっ、と」
     天狐は壁に備え付けてあった本棚から、本を取り出した。
    「と、と、……と。コレだな。
     生物と無生物との境界を弄る、『魔獣の呪』ってヤツだ」
    「治せるのか?」
    「んー」
     天狐は再度、苦い顔になる。
    「治せるっちゃ治せるけど、今ソレ治したらお前、出血多量で死ぬぜ」
    「えっ」
    「腕と肩が、魔術的なチカラで強引にくっつけられた状態だから、術を解除したらその瞬間、血が切断面からバチャバチャ飛び出すぞ。元の腕も無い状態だから、縫合とかもできないしな。
     オレとしては、そのままにしておくコトをおすすめするけど、な」
    「マジかー……」
     元々の腕とぬいぐるみの腕とで顔を覆う秋也に、天狐はさらにこう告げた。
    「一番綺麗に収まる方法としては、やっぱりその渾沌って女に、元に戻してもらうしかねーな」
    「……やっぱり、そうなるか」
     その返答に、秋也はがっくりと肩を落とした。
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    ちょっとばかり跳ねっ返りな娘ですから。

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