黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第1部

    白猫夢・習狐抄 4

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    麒麟を巡る話、第34話。
    天狐ゼミのOB。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    4.
     天狐が言っていた通り、暦が9月を迎える頃には、いかにも学生然とした若者の姿が、街にチラホラと目立ち始めた。
    「でも、全員取るワケじゃないんだろ?」
     鱒(ます)とスクランブルエッグのクレープを片手にそう尋ねた秋也に、チョコバナナクレープを頬張っていた天狐がうなずく。
    「もぐ……、ああ、毎年100人、200人は押し寄せてくるからな。んなもん全員取ってたら、授業進行がムチャクチャになっちまうぜ」
     この日は、修行は休みだった。ゼミ開講とその受講受付の事前準備のため、天狐は秋也を伴って買い物に出ているのだ。
     ちなみに他三人は、天狐の屋敷の方で大掃除に取り掛かっている。
    「一期当たり、何人くらいなんだ?」
    「そうだな、20人くらいって決めてる。そんくらいが丁度いいからよ。
     ま、時々だけど、オレのゼミを受けるコト自体がステータスだと思ってるバカや、到底オレの話を聞くレベルに達してないクセに受けようとする、身の程知らずのボンクラがうじゃうじゃ湧いたりするコトもあるから、時には4名とか5名とかになる時はある。
     前にも言ったと思うが、オレは人にモノを教える時は徹底的に教え込むからな。『ただ在籍できるだけでいい』なんて抜かすアホは、湖に蹴っ飛ばして追い出すコトにしてる。
     その分、評判は確かだぜ? 例えば、えーと、何てったっけ……、ああ、コイツだ」
     そう言って天狐は、雑貨屋に掲示されていたポスターを指差す。
    「このトポリーノってヤツ、523年……、だっけ、524年だっけかにいた受講生だったんだぜ」
    「え、マジで?」
    「マジ、マジ。当時から結構頭の切れるヤツだったんだけどな、ゼミを出た後にすぐ、ゴールドマン商会から声がかかったらしくてな。で、ソコで働いた後独立して、今じゃこうやって大ヒット商品を次々出してる実業家ってワケだ」
     これを聞いて、改めて秋也は、天狐ゼミのレベルの高さを実感した。
    「すげーなぁ、天狐ちゃんは」
    「ケケケッ」
     どうやら、天狐は褒め言葉やおだてに弱い性質らしい。秋也の素直な賞賛を受け、顔を赤らめて喜んでいた。

     と、二人の背後から声が飛んできた。
    「テンコちゃん、お久しぶりです!」
    「あん?」
     二人が振り向くと、正面に貼られていたポスターと同じ、福々しい姿の兎獣人が立っていた。
    「あれっ? ……あれ!?」
     秋也は驚き、兎獣人とポスターとを見比べる。
     一方、天狐も多少驚いてはいたようだが、すぐ会釈を返した。
    「よお、フェリー。太ったなぁ、お前」
    「あはは、テンコちゃんはお変わりないようで」
     フェリーと呼ばれた兎獣人は、秋也に目を向ける。
    「あれ、もう受講生の締切って終わっちゃってました?」
    「いや、コイツはオレの旧友の息子さん。今ちょっと、ウチで修行してるんだ。下半期講座が始まるまでな」
    「あ、そうなんですか、びっくりしたぁ。
     ……おっと、申し遅れました。私、フェルディナント・トポリーノと申します。524年上半期生でした」
     そう自己紹介し、フェリーは秋也に手を差し出す。
    「あ、ど、ども。シュウヤ・コウです。焔流の剣士です」
     秋也も手を差し出し、握手を交わす。
    「どうも、どうも」
    「あの……、トポリーノさん?」
    「はい、なんでしょう?」
    「あの、トポリーノさんですよね? トポリーノ野外雑貨の」
    「ええ、そのトポリーノです」
     ニコニコと笑うその福々しい顔は、ポスターに描かれていたものとまったく一緒だった。
    「一体どうしたんだ、そのトポリーノさんがよ?」
     と、天狐は訝しげな顔で尋ねてくる。
    「今や央中屈指の実業家さんが、なんだってこんな小島に? 商品の宣伝でもしに来たか?」
    「ああ、それもやるんですが、もう一つ目的がありまして」
    「って言うと?」
     そう尋ねたところで、天狐は「いや」と改めた。
    「待てよ、お前さっき、受講生募集について聞いたな?」
    「ええ、まあ」
    「お前、子供いたよな。一番上はもう14だか、15だかの」
    「はい」
    「連れて来てるんだろ。ウチに預けたいとか思って」
    「ご明察です」
     その回答に、天狐は苦い顔をした。
    「ウチのゼミ生だったんなら知ってんだろ、オレの性格をよ? 縁故入講なんかさせねーぞ?」
    「あ、その点は大丈夫です」
     フェリーはパタパタと手を振り、こう返した。
    「ノイン……、うちの子は優秀ですから。私に似て」
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    出木杉くん、小学生の頃からあれだけ優秀だと、将来はとんでもない大物になりそうですね。
    出来る人はやはり、どこか違うものなんでしょうね。

    NoTitle 

    v-405出来すぎ君か!
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    麒麟を巡る話、第34話。天狐ゼミのOB。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -4. 天狐が言っていた通り、暦が9月を迎える頃には、いかにも学生然とした若者の姿が、街にチラホラと目立ち始めた。「でも、全員取るワケじゃないんだろ?」 鱒(ます)とスクランブル?...
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