「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第1部
白猫夢・克己抄 5
麒麟を巡る話、第40話。
星になった秋也。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
その異様な剣気を感じ取った昂子とウォンは、互いに防御姿勢を取る。
「下がって、ウォン!」「僕の後ろにいろ、アコ!」
そう同時に言い放ち、両者とも同時に、同じ術を放つ。
「『マジックシールド』!」
術が発動され、魔力でできた半透明の盾が二重に形成されたその直後、二人はその場から弾き飛ばされた。
「う、わっ!?」「きゃあっ!」
二人は元いた場所から、何メートルも後方に転がされる。
「く、っ……」
「いた、ぁ……」
どうにか立ち上がり、体勢を整えようとするが、二人ともふら、と膝を着く。
「……そんな!」
「しゅ……」
仁王立ちになっている渾沌の前に、ぼろぼろになった布きれが落ちていた。
それは紛れもなく、渾沌によって取り付けられた、秋也の左腕だった。
「秋也ああああ……っ!」
二人は秋也の死を予感し、ともに絶叫した。
が――。
「……ひ、……ひとつ」
まるでうめくような、渾沌の声が返ってくる。
「ひとつ、聞いて、……い、いいかしら」
と、渾沌の仮面に空いた穴、そして体中から、だらだらと赤い筋が流れてくる。
そして口からも、ごぼごぼと泡を立てて血が噴き出している。
「なんだ?」
渾沌の背後から、声が聞こえてくる。
その声を聞いた昂子とウォンは、またも同時に叫んだ。
「秋也!?」「生きてたのか!?」
その間に、渾沌の体がガクガクと震えだす。
「あ、あなた……、お母さんから、……げほっ、……その技、お、教わったの、かしら」
「技……、って?」
「せ、……『星剣舞』、……よね、……ごぼっ、……今の、……わ、ざ」
「せい……けん……ぶ? いや、知らない」
「……そ、そう」
渾沌の体が、ゆっくりと前に倒れていく。
「……負けたわ……」
その背後から、左腕の無い、片腕一本の秋也が現れた。
「……正拳武ってなんだ? なんかの体術か? ……分かんねーけど」
秋也は右腕を掲げ、昂子とウォンにこう叫んだ。
「か、っ、……ゴホン、勝ったぞ、昂子、ウォン!」
「……秋也……!」
二人は同時に、秋也の元へと走って行った。
「最初は本当に、やべーと思ってたんだ。マジでコレは、真っ二つにされるなって」
いまだ動かない渾沌を遠巻きに眺めつつ、秋也は二人に、渾沌が「地断」を放った後のことを話し始めた。
「でも――まあ、腕は吹っ飛ばされたけど――ギリギリ避けれた。
で、昂子たちも何とか凌いだみたいだってのが確認できたから、オレは渾沌の方に向き直って、そしたら渾沌のヤツが、棒立ちで笑ってやがったからさ。
ソレ見てたらすげームカついてきたから、ぱっと飛び込んで、そんで袈裟切りしてやろうと思って。そしたらソレもあいつ、何故か避けようとしねーんだよ。
だからざっくり行ったんだけどよ、それでも笑ってやがるから、どんだけ調子こいてんだよと思って、胴を払ってみたり、後ろから刺してみたりしたんだけど、……そしたらあいつが声色変えて、『何の技使ったのよ』っつって」
「……シュウヤ?」
話を聞いた二人は、怪訝な顔を浮かべる。
「ソレ、あたしたちが吹っ飛んでた時の話?」
「だろうと思うけど。なんで?」
「僕たちが弾かれていたのは、いくらなんでも10秒も無いはずだ。
その10秒足らずの間に、お前は僕たちの無事を確認し、渾沌に真正面から詰め寄って、あまつさえ前やら後ろやらに回り込んで三太刀、四太刀も喰らわせたと言うのか?」
「……え?」
そう問われ、秋也は呆然となる。
「……言われてみれば……、あれ?」
秋也は思わず、問い返していた。
「オレ、なんでそんなに色々できたんだ? しかも、あの渾沌相手に」
「そんなの分かるワケないじゃん」
「僕にも皆目、見当が付かない。もしやテンコちゃんが助けて、……くれたりはしていないようだし」
辺りを見回しても、天狐や鈴林の姿は無い。
そして――渾沌の姿も無かった。
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星になった秋也。
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5.
その異様な剣気を感じ取った昂子とウォンは、互いに防御姿勢を取る。
「下がって、ウォン!」「僕の後ろにいろ、アコ!」
そう同時に言い放ち、両者とも同時に、同じ術を放つ。
「『マジックシールド』!」
術が発動され、魔力でできた半透明の盾が二重に形成されたその直後、二人はその場から弾き飛ばされた。
「う、わっ!?」「きゃあっ!」
二人は元いた場所から、何メートルも後方に転がされる。
「く、っ……」
「いた、ぁ……」
どうにか立ち上がり、体勢を整えようとするが、二人ともふら、と膝を着く。
「……そんな!」
「しゅ……」
仁王立ちになっている渾沌の前に、ぼろぼろになった布きれが落ちていた。
それは紛れもなく、渾沌によって取り付けられた、秋也の左腕だった。
「秋也ああああ……っ!」
二人は秋也の死を予感し、ともに絶叫した。
が――。
「……ひ、……ひとつ」
まるでうめくような、渾沌の声が返ってくる。
「ひとつ、聞いて、……い、いいかしら」
と、渾沌の仮面に空いた穴、そして体中から、だらだらと赤い筋が流れてくる。
そして口からも、ごぼごぼと泡を立てて血が噴き出している。
「なんだ?」
渾沌の背後から、声が聞こえてくる。
その声を聞いた昂子とウォンは、またも同時に叫んだ。
「秋也!?」「生きてたのか!?」
その間に、渾沌の体がガクガクと震えだす。
「あ、あなた……、お母さんから、……げほっ、……その技、お、教わったの、かしら」
「技……、って?」
「せ、……『星剣舞』、……よね、……ごぼっ、……今の、……わ、ざ」
「せい……けん……ぶ? いや、知らない」
「……そ、そう」
渾沌の体が、ゆっくりと前に倒れていく。
「……負けたわ……」
その背後から、左腕の無い、片腕一本の秋也が現れた。
「……正拳武ってなんだ? なんかの体術か? ……分かんねーけど」
秋也は右腕を掲げ、昂子とウォンにこう叫んだ。
「か、っ、……ゴホン、勝ったぞ、昂子、ウォン!」
「……秋也……!」
二人は同時に、秋也の元へと走って行った。
「最初は本当に、やべーと思ってたんだ。マジでコレは、真っ二つにされるなって」
いまだ動かない渾沌を遠巻きに眺めつつ、秋也は二人に、渾沌が「地断」を放った後のことを話し始めた。
「でも――まあ、腕は吹っ飛ばされたけど――ギリギリ避けれた。
で、昂子たちも何とか凌いだみたいだってのが確認できたから、オレは渾沌の方に向き直って、そしたら渾沌のヤツが、棒立ちで笑ってやがったからさ。
ソレ見てたらすげームカついてきたから、ぱっと飛び込んで、そんで袈裟切りしてやろうと思って。そしたらソレもあいつ、何故か避けようとしねーんだよ。
だからざっくり行ったんだけどよ、それでも笑ってやがるから、どんだけ調子こいてんだよと思って、胴を払ってみたり、後ろから刺してみたりしたんだけど、……そしたらあいつが声色変えて、『何の技使ったのよ』っつって」
「……シュウヤ?」
話を聞いた二人は、怪訝な顔を浮かべる。
「ソレ、あたしたちが吹っ飛んでた時の話?」
「だろうと思うけど。なんで?」
「僕たちが弾かれていたのは、いくらなんでも10秒も無いはずだ。
その10秒足らずの間に、お前は僕たちの無事を確認し、渾沌に真正面から詰め寄って、あまつさえ前やら後ろやらに回り込んで三太刀、四太刀も喰らわせたと言うのか?」
「……え?」
そう問われ、秋也は呆然となる。
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「オレ、なんでそんなに色々できたんだ? しかも、あの渾沌相手に」
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麒麟を巡る話、第40話。星になった秋也。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -5. その異様な剣気を感じ取った昂子とウォンは、互いに防御姿勢を取る。「下がって、ウォン!」「僕の後ろにいろ、アコ!」 そう同時に言い放ち、両者とも同時に、同じ術を放つ。「『?...
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- at 2012.06.20 04:43
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腕はちゃんと返してくれます。次回。