黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第2部

    白猫夢・荷運抄 3

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    麒麟を巡る話、第59話。
    輸送作戦の開始。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     マチェレ王国の出国手続きを終え、いよいよ秋也たちが就く本隊はブリック―マーブル街道を西へと進み始めた。
    「どーよ?」
     国境を越えてから15分ほどして、御者台に座って手綱を握っていたアルトが、横に並んで座っていた秋也に尋ねる。
    「ん?」
    「剣士って言ってたけど、戦場に出た経験は無いんだろ?」
    「ああ」
    「こうして漠然と敵に狙われる気分、初めて味わったんじゃないかって、さ」
    「そうだな……、まあ……」
     秋也は辺りを見回すが、特に危険な様子やその兆候は見付からない。
    「実感が無い、ってのが正直な感想だな」
    「だろうな。まだ、マークされてもいないからな」
     馬車は前述の作戦に加え、より目を付けられないようにと、一般の荷馬車風に擬装されていたし、秋也たちもいかにも平穏な農民が好みそうなポンチョと帽子を被っている。
    「このまま平穏無事に……、って行く可能性って、どれくらいだろ」
    「俺の見立てじゃあ、半分以下ってところだな」
    「半分以下?」
     不安がる秋也に対し、アルトはその論拠を聞かせる。
    「まず偽々作戦が無い場合を考えるとな。こうやってカモフラージュするってのは、通常の戦闘においても、よく使われてる戦術、作戦なわけだ。それだけに成果はあるし、一方で見破るテクニックも少なくない。だからこれ単体だと、成功確率は良くて7割弱ってところだ。
     で、マスターが嬉々として立てた偽々作戦だけれっども、俺の予想と勘から言わせてもらえば、あんまりなーって感じはあるんだ」
    「あんまり?」
    「今回みたいな、落とし穴を避けた先にもういっこ落とし穴を作っとく、なんて戦術も結構昔からあるし、効果も高い。その点で言うと、擬装作戦と同じなんだよな。だから7割かけるの7割で、5割を切る計算になる。
     でさ、昨日言いかけてた話になるんだけれっども、何年か前に新しくプラティノアール王国の宰相になった奴ってのが、とんでもない切れ者だってうわさがあるんだ。
     その宰相閣下さんが、こんな古典的な戦法の重ね合わせを見抜けないようなマヌケとは、俺にゃ到底思えないんだよな」
    「つってもさ、その宰相って、まあ、宰相だからさ、相当忙しいんだろ? 流石にこんな細かい末端の動きにまで目を配るなんてコト、できないんじゃないか?」
    「それも一理、だな。
     ただ、俺たちが加担してるこれは、敵国のやってる『軍事行動』だ。それを今まさに戦時中って言うこの時、見抜けない司令官がいるかよって話になってくる。
     もしいたとして、それは明らかな防衛の穴だぜ。聡明な宰相閣下さんであれば、そんなマヌケの首を挿げ替えるくらいのことはやってのけると、俺はそう思うがねぇ……?」
    「……」
     アルトの見解を聞き、秋也は不安を覚える。
    「……どーよ?」
    「なにが?」
     秋也のそんな顔をニヤニヤと眺めながら、アルトが再度尋ねてきた。
    「不安になってきたんじゃないか?」
    「そりゃ、……まあ、な」

     アルトに軽く脅されたものの、作戦開始からの数日間は実にのどかな旅となった。
     その間に秋也は――ある意味、剣術の腕以上にこの才能は、彼にとってかけがえのない特長と言えるかも知れない――ロガン卿やサンデル、その他この本隊に付随していた帝国の兵士たちと親しくなることができた。
    「なるほど、貴君は央南の出なのか。道理で顔つきが違うはずだ」
    「ええ、みたいですね。将軍も短耳ですけど、生まれはこちらなんですか?」
     秋也にそう問われ、ロガン卿は「うむ」とうなずく。
    「私もサンデルも、実を言えば央北系の三世なのだ。家系も歳も違うが、似た点が多くてな。その縁からか、何度も共に行動しておる」
    「そうなんですか」
     と、ここでサンデルも話に加わる。
    「実を申せば我々二人とも、元はグリサルジャン王国の兵だったのだが、敗戦後、帝国に登用されたのだ。帝国との戦争時、そこそこ程度にはいい働きをしたと評価されてな」
    「お前の場合はそこそこだろう。私はもう少しばかりは活躍したぞ」
    「ははは、閣下には敵いませんなぁ」
    「ふっふふ……」
     会った当初は彼らに対し、取っ付きにくい印象を覚えていた秋也だったが、こうして寝食を共にするうち、案外大らかで性根の清々しい者たちと分かり、打ち解けることができた。



     そのため――後にプラティノアール王国の兵たちによって襲撃された際、秋也は彼らに対し、最初は深い嫌悪感を抱くことになる。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    向こうの首脳陣も優秀ですからねぇ。
    襲われないわけが無かった。

    NoTitle 

    やっぱり襲撃されちゃうのねv-393
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