黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第2部

    白猫夢・荷運抄 6

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    麒麟を巡る話、第62話。
    無事、帝国領へ。

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    6.
     結局秋也たちは、ローバーウォード森林地帯において3回、プラティノアール王国からの襲撃を受けた。
     しかしそのどれもを、帝国側に一人の死者も出すことなく撃退して見せ、彼らは見事に国境の門を叩いた。
    「おお……、閣下! ご無事でしたか!」
     門を開け、向こう側にいた兵士たちが一斉に飛び出し、出迎える。
    「あれから二ヶ月も経ち、我々はどれだけ閣下らの無事をお祈りしたことか!」
    「よい、よい。労いの言葉をかけてくれるのは嬉しいが、実のところはあまり、期待はされておらなんだろう?
     あ、いや、諸君らの本心を疑うわけでは無い。軍本営の意向が、恐らくはそうであろう、と言うことを言いたかったのだ」
    「……仰る通りです。中には『参謀閣下が厄介払いをしたのではないか』とまでうそぶく者も」
    「かかか……、ならば一泡吹かせられようと言うもの。私にとっては大戦果であるな。
     済まないが諸君、我々は死線をいくらか潜って疲れた。少しばかり、ここで休ませてはもらえんだろうか?」
     ロガン卿の要請に、門番たちは敬礼で返した。
    「了解であります、閣下。すぐに寝床を用意致します」
    「うむ」
     と、ロガン卿と門番が話している間、秋也は門の内と外とをきょろきょろ見返していた。
    「どうした?」
    「いや、国境って言ってたけど、向こうの……、プラティノアール側の兵士はいないんだなって」
    「そりゃま、この国境はグリスロージュ側が勝手に延ばしたもんだからな。国境って言うより、前線基地って考えた方がいい」
    「……? なら尚更、兵士がいないなんて」
    「今現在の、事実上の交戦区域、かつプラティノアール側の国境線はあの森と、そこを出た辺りなんだよ。
     普段だったらあの森に入る前に何やかやと襲撃されてるだろうが、ま、今回に限っては相手方が、俺たちを森の中に誘導するために人払いしてたんだろうよ。今頃はさぞ、悔しがってるだろうけどな。
     そんでも、この作戦は一度きりさ――また同じことやろうとしたら、今度は間違いなく集中砲火を喰らってハイおしまい、だろうしな」
     そんなことを話しているうちに、どうやら寝床の準備が整ったらしい。
    「おい、二人とも! いつまで門前でくっちゃべっているんだ!? 早くこっちに来い!」
     サンデルがいつものようにフンフンと鼻を鳴らしながら、二人に手を振ってきた。



     さらに4日後。
     秋也たちはグリスロージュ帝国の首都、カプラスランドに到着した。
    「なんか……、本当にこっちは、戦時中なんだって感じがするな」
     街行く人々の顔に穏やかな色は見えず、どことなく苦しそうにすら見える。
    「やっぱり海上封鎖とか、そう言うのが効いてるのかな」
    「それもある。鉱産資源と森林資源を除けば、我が国は豊かとは言い難い。海上封鎖により貿易が止まって以降、食糧難の傾向が出始めている。既に配給制の話も、あちこちから出ている状況にある。
     そして、それに関連して起こっている問題が、政府側の士気低下だ。……部外者である貴君らにはあまり多くは話せないが、今現在、帝政政府および軍本営は、皇帝派と参謀派に分かれていてな」
    「俺は多少、聞き及んでますぜ。皇帝陛下は民意優先派、参謀は戦争断行派なんでしょ?」
    「左様。……これ以上のことは、今は私の口からは言えんな」
     それを受け、アルトが代わりに解説する。
    「要するに今、帝国は戦争やめて休戦してほしいって言ってる国民の意見を尊重したいって派と、勝つまで戦争をやめるわけには行かないって言う参謀殿に追従する派に分かれてるんだ。
     で、閣下は前者ですよね?」
    「その論調で言えば、前者と言うことになる」
     立場上からか、ロガン卿は婉曲な言い方をしている。
    「普通に考えりゃ、王様、皇帝様の意見が絶対、……なはずなんだけれっども。
     ところが現在、帝国軍の実権を握ってるのは参謀殿なんだ。皇帝さんがどうも、参謀に反発できてないんだってさ。って言うのも、元々は……」「トッド君」
     と、ロガン卿が苦い顔を向けてきた。
    「情報通の貴君であれば、この街でそんな話をすればどうなるか、知らぬわけではなかろう?」
    「……ですやね。いや、これは失敬」
     アルトはそう返し、肩をすくめて見せた。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    いわゆるシンクタンク的役割を果たす組織、部署を「参謀」もしくは「参謀部/参謀局」と呼ぶこともありますが、こちらの話中では特に指定が無い限り、「参謀」は特定の人物が就く役職としています。
    平たく言えばアロイス以外に参謀役の人間はいない、ということで。

    NoTitle 

    思うんですが、「参謀」では「その他大勢」のような気がしますので、「参謀長」のほうが適しているのではと思います。

    細かいことですけど。

    NoTitle 

    詳しくはおいおい話していきます。

    NoTitle 

    その話木になりますv-301
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