黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第2部

    白猫夢・帝憶抄 7

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    麒麟を巡る話、第80話。
    夢は悪夢となって。

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    7.
     フィリップ改め、フィッボ・モダスと名乗るようになった彼は、王からの圧政で苦しめられてきた村々を回り、反王国の同志を集めた。
     3つの村を――それも自分の村と同じように、崩壊した廃村である――回ったところで集まったのはたった200人だったが、フィッボにとってはそれで十分だった。
     何故なら彼自身が一騎当千、いや、一騎当万、当十万と言うべき、恐ろしいほどの実力を備えていたからである。



     そして3年後、グリサルジャン王国の中心、カプラス城。
    「わ、わしが悪かった! わしの負けだ! だから、だからどうか、命だけは……」
    「お前の欲で、どれだけの人間が犠牲になってきたと思ってるんだ!」
     フィッボは泣きわめく国王に向け、剣を投げ付ける。
    「誰がお前など助けるかッ! 死んで詫びろーッ!」
    「ぐぎゃああ……っ」
     剣は国王の胸を貫通し、玉座へ磔(はりつけ)にした。
    「……終わった」
     そうつぶやいた彼に、彼の背後に立っていた者たちが応える。
    「おめでとうございます、陛下」
    「これで長い戦いにも、終止符が打たれましたな」
     既にこの頃、彼に従う者たちは当初の100倍、2万人となっていた。
    「そうだな」
     フィッボは玉座に突き刺さったままの剣を抜き、国王の死骸を傍らに放り捨て、まだ血の滴るその椅子に座った。
    「本日を以て、グリサルジャン王国は我がモダス帝国の傘下に入った。
     今後は国号をグリソモダス帝国とし、新たな歴史を紡ぐこととしよう」
     その宣言に、側近たちは城が揺れんばかりの、喜びの声を上げた。

     フィッボが新たな国王となり、帝国領内にはしばしの平和が訪れるかと思われた。
     フィッボは危険な鉱山採掘のいくつかに対して閉鎖を指示すると共に、代わりの産業として、酪農を推進しようとした。
     これにより、フィッボが望んでいた通りの平和が訪れると思われたが――。
    「そうか……。どうにかして、和平の道を探れないものか」
     隣国であるロージュマーブル王国の兵士が、国境付近で度々目撃されるようになったのである。
     フィッボは旧王国下でも穏健派として知られており、この頃既に側近の一人となっていたシャルル・ロガン卿に、この件を相談した。
    「難しいところではありますな。いくらこちらの内情が変わったとは言え、土地の質が変わったわけではありませんからな。
     彼奴らの目的は依然として、北にある鉱山にあります故」
    「鉱山か。となると……、そうだな」
     フィッボはこんなことを提案した。
    「鉱山の採掘権は、すべてロージュマーブルや、ついでにプラティノアールにもくれてやっても良いのではないか?」
    「な、なんと!?」
    「落ち着け、シャルル。その代わりにだ、産出されたものに関しては、そうだな……、我々と向こうで3対7くらいで折半するよう、提案してみてはどうだろうか?」
    「しかしそれだと、強欲な相手方が納得するかどうか。よしんば合意したとして、その取り決めを守るような連中とも思えませんが……」
    「そこも対策は考えている」
     フィッボは自分を指差し、こう言ってのけた。
    「もし取り決めを無視し、向こうが独占するようなことがあれば、私が懲らしめにかかる。我が国内であるから、それは容易だ。
     それに2ヶ国へ打診するのは、『もし片方が断った際、もう片方の丸儲けになるかも知れない』、それを予想させるためだ」
    「なるほど、向こう2つも仲の悪さは折り紙つきですからな。左様な提案をすれば、両者とも出張って来ざるを得ない、と」
    「そう言うことだ。では早速、割譲できそうな鉱山を視察に行くとしよう」

     フィッボはロガン卿を伴い、鉱山地帯の村へと向かった。
    「とは言え、旧王国時代に比べれば操業率は大幅に下がっているはずだ。私も元は鉱夫だったからな、あの暗さと汚さと苦しさは身に染みて知っている。
     今は恐らく、牧歌的な風景が広がっていることだろう」
     フィッボはロガン卿にそう予想を聞かせ、微笑んだ。
     しかし――村に着いた途端、その予想は砕け散った。
    「な、なんだ、これは!?」
     村には牧草や家畜どころか、人の姿すら見えない。
     それどころか元々村があったはずの場所には、露天掘りを行ったと思われる、人工的な大穴が空いている。
    「これは……、採掘を!? 何故だっ!?」
     フィッボは穴に駆け寄り、大声を上げた。
    「これはどう言うことだ!? 誰かいないのか!?」
     しかし、何の声も返っては来ない。
    「ここは確かに、私が酪農を行うよう指示したはず! 決して、採掘を推進せよなどとは命じていないはずだ!」
     と、穴の底の方から、のそ……、と人が現れた。
    「おい、そこの君! これは一体、誰の指示で行っているのだ!?」
     穴の底にいた鉱夫は、疲れ切った声でこう返した。
    「誰って……、フィッボ・モダス皇帝陛下ですよ。側近のクサーラ卿から直々に、そう聞かされましてね。
     なんでも村人総出で、とにかく掘って掘って掘りまくるようにって。まったく、ようやく穴掘りから解放されるかと思ったら、とんだ君主様でさ」
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    NoTitle 

    フィッボにとって、ここからが悪夢の始まりです。

    NoTitle 

    前より酷いだとv-393
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