黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第2部

    白猫夢・跳境抄 3

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    麒麟を巡る話、第84話。
    小銃相手の白兵戦。

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    3.
     アルトの立てた作戦は、次の通り。
     まず、秋也が鉤縄(かぎなわ:一端に鉤爪が付いた縄ばしごである)を使って壁を越え、そこで爆竹を使って騒ぎを起こす。遠くから聞けば銃の発砲音に良く似ているため、兵士たちは敵の襲撃と勘違いし、そこへ押しかける。
     その隙にアルトが馬車を動かし、守りの薄くなった関所を強行突破。後は秋也のいるところまで駆け、彼を回収して遠くへ逃げ去る、と言うものである。

     秋也は爆竹を風呂敷に包んで背負い、兵士たちの目が届かない辺りにまで、壁伝いに南下する。
    「ココでいいかな。……よっと」
     秋也は鉤縄をくるくると回し、壁の上端を目がけて投げつける。一度も使ったことのない道具ではあったが、思いの外簡単に、鉤は壁の向こう側に食い込んだ。
    (ムカつくけど、アイツの言うとおりかもな。やってみれば、案外できるもんなんだな)
     3メートルほどの高さをよじ登り、秋也は周囲を見渡す。
    (プラティノアール兵の姿は無いな。グリスロージュ側も、こっちにはいないっぽい)
    鉤爪を外し、今度は登ってきた辺りに食い込ませて、そっと降りる。
    「……ふう。で、後はコレか」
     秋也は背負っていた風呂敷を開き、爆竹を取り出そうとした。
     ところが――。
    「ん?」
     秋也の前方に数ヶ所、不自然に盛り上がった草むらがいくつか確認できる。それが動いたように見え、秋也は瞬きした。
    「気のせい……」
     と、その草むらががばっと翻り、その下からは――。
    「……じゃなかった」
     小銃を背負ったプラティノアールの兵士たちが、続々と現れた。

    「んー」
     アルトが懐中時計を確認し、低く唸る。
    「遅い、……か?」
     尋ねたロガン卿に、アルトは無言でうなずく。
    「あの、何か、その、あったのでしょうか」
     不安げな表情を浮かべたノヴァに、アルトは肩をすくめる。
    「それか、まだ壁のこっち側でまごついてるかのどっちかですな。どちらにせよ、まだ動くのは早計と……」
     そう言いかけたところで、パン、パンと破裂音が聞こえてきた。
    「おっ、ちゃんと向こうへ行けたようですな。……ん?」
     アルトはにやりと笑いかけ、その顔を途中で強張らせる。
    「どうした?」
    「俺があいつに持たせた爆竹は、3、4回くらい音が鳴って終わりのはずなんですがねぇ」
     そうつぶやく間にも、破裂音は立て続けに響いてくる。
    「うん? だが何度も鳴っているな」
     サンデルのとぼけた反応に、アルトは軽く舌打ちする。
    「あのですな、大尉殿。3つだけ鳴る量を渡したんですから、結果は3つだけ鳴らなきゃおかしいわけですよ」
    「そんなことは分かっている。だが現実にそれ以上鳴っているのなら、多く渡し過ぎたのだろう」
    「よしんば俺が多めに渡したとして、シュウヤだってバカじゃあない。あんまり多めにパンパン鳴らしてたら、兵士に位置を気取られるでしょうが。
     4個目以降の音は、じゃあ爆竹じゃないってことですよ」
    「つまり?」
     アルトは、今度ははっきり聞こえるくらいの舌打ちを漏らした。
    「シュウヤが危険だってことです! 銃撃されてんですよ、向こうで!
     さあ、こうしちゃいられない! 飛ばしますぜ!」
     そう叫ぶなり、アルトは勢いよく手綱を引っ張った。

     どうやら、秋也はグリスロージュの兵と間違われたらしい。
    「撃て、撃て、撃てーッ!」
     突如現れたプラティノアールの銃士たちに散々、追い回されていた。
    「おわっ、ちょ、やべ、わ、わ、わっ」
     幸い、彼らの持っている小銃は連発可能なリボルバー式ではなく、一発ずつ装填・排莢するボルトアクション式だったため、銃弾が立て続けに飛んでくることは無かったが、それでも8名で横2列に構えられ、代わる代わる掃射されては、応戦などできるはずもない。
     秋也は己の運動神経と直感を最大限に発揮し、銃弾をギリギリで避けようと飛び回るが、体のあちこちに、火箸を叩きつけられたような痛みが走っている。どうやら何発かはかわし切れず、かすっているらしい。
    「痛てえなあぁ、くそっ!」
     と、そのうちに弾が切れたらしく、銃士たちからの攻撃が止まる。そして、その機を逃す秋也ではない。
    「よっしゃ!」
     前列の一人が弾込めに一瞬手間取ったその隙を突き、秋也は間合いを詰める。
    「おりゃあッ!」
     迫ってきた秋也に兵士が気付き、顔を上げかけたが、秋也はその顔に向かって、力一杯に頭突きを食らわせた。
    「ふが、が、ばっ」
     兵士の口と鼻から鈍い声と血が漏れ、そのまま倒れ込む。
    「しまっ……」
     前列の残り3人が小銃を向けようとしたが、秋也の方が一瞬早い。
    「だーッ!」
    「うぐっ!?」「ぎゃっ!?」「うわ、わっ!?」
     これも力一杯に踏み込み、3人を押し潰すようにタックルして弾く。
    「貴様ああッ!」
     そのうちに後列の兵士たちが、弾を装填し終えたらしく、小銃を構える。
     だが秋也は倒れ込んだ一人を持ち上げ、盾にする。
    「撃つなっつーの、一々かわすのしんどいんだから」
    「う……ぬ」
     秋也は前方の兵士と、後方遠くから迫ってくるグリスロージュの兵士とを交互に見つつ、馬車が来るのを待った。
    (早く来てくれ、アルト!)
     と――後方の兵士たちの、さらに後ろから、馬車が飛び出してくるのが確認できた。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    秋也はアホですが運動神経はずば抜けてます。
    勘も利くので、めちゃくちゃ頑張れば弾は何とか避けられます。
    必死ですが。

    NoTitle 

    銃を避けるなんてぱねえっすv-12v-26
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