「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第2部
白猫夢・銃聖抄 3
麒麟を巡る話、第88話。
秋也の釈明。
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3.
「ソレにしても、シュウヤ君。アンタ、ホントに運がいいわよ?」
「え?」
リスト司令は両手を挙げ、にっと笑って見せる。
「偶然アタシが『たまにはアルピナの顔を見に行くついでに軍事物資運んであげよっと』って気紛れ起こさなかったら、アンタは今みたいに、両手ぷらぷらさせられない状態になってただろうし。
こっちの兵士を何人もブッ飛ばしておいた身でその待遇なんて、本来なら破格って言っていいくらいなのよ」
「すんません……」
謝る秋也に対し、リストはもう一度、真面目な顔を見せる。
「まあ、ソレについてだけど、このまま釈放は無理。アタシたちもメンツと服務責任があるし、そうでなくてもアンタにはもう一つ、疑惑があるしね」
「疑惑、って言うと」
リスト司令の代わりに、アルピナが答える。
「3週間前、あなたはグリスロージュの兵士と思わしき人間と同行していたわよね? そして一昨日も、あなたはグリスロージュとの国境を強行突破した馬車に声をかけ、しかしそのまま走り去られて立ち往生する姿を、我々が確認しているわ。
その二つから導き出され、あなたに現在向けられている疑惑は、即ち――あなたはもしかしてグリスロージュ軍の関係者、あるいはスパイなのでは、と言う疑惑よ」
「ち、違います!」
秋也は慌てて、ソレを否定した。しかし先程まで笑顔を見せてくれていたリスト司令は、硬い表情で尋ねてくる。
「違うなら、なんでアンタはグリスロージュのヤツらと一緒にいたの? ソコ、詳しく話してほしいのよ」
「あ、はい」
秋也は西方へは本来、単なる旅を目的として訪れたこと、そして初めに訪れた港町、ブリックロードでアルトやロガン卿らと出会い、煉瓦運びに付き合ったこと(白猫については話がややこしくなりそうなので伏せておいた)、そのままフィッボから直々に亡命幇助の依頼を受け、それで国境まで来たが、馬車に置いて行かれてしまったことを話した。
話を聞き終えたリスト司令とアルピナは、揃って胡散臭いものを見るような顔を向けてきた。
「……シュウヤ君。ソレ、どこまでがホント?」
「全部です」
「いや、でもさー、ムチャクチャにも程があるわよ。特にモダス帝から直々に依頼を受けるなんて、帝国に入って2日、3日のヤツに起こる出来事じゃないわよ?」
「でも、本当なんです。フィッボ……、モダス帝はずっと、亡命を助けてくれる異邦人を探していたと言っていました」
「ソレが、ここ10年? まあ、確かにモダス帝はロージュマーブル陥落以後、目立った動きをしていないのは事実だけど。
うーん……」
と、ここでアルピナが口を開く。
「もし仮にコウさんの話が本当だった場合、我々が現在捜索している正体不明の馬車には、モダス帝が乗っていると言うことになりますね」
「多分、そうです」
「とすると、これは非常に政治的な問題に発展する可能性があります」
「そうね。……話が、本当ならだけど」
と、またもテントの外から声が入ってくる。
「レデル少佐、こちらにいらっしゃいますか?」
「ええ、いるわよ。どうしたの?」
アルピナがテントを開けると、そこには半ば興奮した様子の、蒼ざめた顔の兵士が立っていた。
「目下捜索中の馬車、森林北東部にて発見されました!」
「見つかったの!?」
「はい。しかし報告によれば」
兵士は現場の状況を、その蒼い顔で報告した。
「馬車は左前輪および後輪が損傷し、走行不能になっておりました。
また、敵兵士と思われる者がその付近で、血まみれになって倒れており、現在こちらへ搬送中です。
しかし、どうやら自決を試みようとしたらしく、瀕死の状態にあるとのことです」
「な……!?」
秋也はこの衝撃的な報告を聞き、思わず立ち上がっていた。
「そ、その兵士って、どんな? 見た目とか、分かりますか?」
「うん?」
尋ねられた兵士は、怪訝な顔を秋也に向ける。
「関係者以外に教えるわけにはいかん」
にべもなく断る兵士に、リスト司令がぺら、と手を振る。
「ああ、いいのよ。教えてあげて」
「よろしいのですか?」
「関係者っぽいし」
「了解しました。
筋骨隆々の短耳で、グリスロージュ兵卒では一般的と見られる薬缶刈りの頭をしており、見た目は30代の半ばとのことです」
「……サンデルさん!」
この報告に、秋也も顔を蒼くした。
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秋也の釈明。
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「ソレにしても、シュウヤ君。アンタ、ホントに運がいいわよ?」
「え?」
リスト司令は両手を挙げ、にっと笑って見せる。
「偶然アタシが『たまにはアルピナの顔を見に行くついでに軍事物資運んであげよっと』って気紛れ起こさなかったら、アンタは今みたいに、両手ぷらぷらさせられない状態になってただろうし。
こっちの兵士を何人もブッ飛ばしておいた身でその待遇なんて、本来なら破格って言っていいくらいなのよ」
「すんません……」
謝る秋也に対し、リストはもう一度、真面目な顔を見せる。
「まあ、ソレについてだけど、このまま釈放は無理。アタシたちもメンツと服務責任があるし、そうでなくてもアンタにはもう一つ、疑惑があるしね」
「疑惑、って言うと」
リスト司令の代わりに、アルピナが答える。
「3週間前、あなたはグリスロージュの兵士と思わしき人間と同行していたわよね? そして一昨日も、あなたはグリスロージュとの国境を強行突破した馬車に声をかけ、しかしそのまま走り去られて立ち往生する姿を、我々が確認しているわ。
その二つから導き出され、あなたに現在向けられている疑惑は、即ち――あなたはもしかしてグリスロージュ軍の関係者、あるいはスパイなのでは、と言う疑惑よ」
「ち、違います!」
秋也は慌てて、ソレを否定した。しかし先程まで笑顔を見せてくれていたリスト司令は、硬い表情で尋ねてくる。
「違うなら、なんでアンタはグリスロージュのヤツらと一緒にいたの? ソコ、詳しく話してほしいのよ」
「あ、はい」
秋也は西方へは本来、単なる旅を目的として訪れたこと、そして初めに訪れた港町、ブリックロードでアルトやロガン卿らと出会い、煉瓦運びに付き合ったこと(白猫については話がややこしくなりそうなので伏せておいた)、そのままフィッボから直々に亡命幇助の依頼を受け、それで国境まで来たが、馬車に置いて行かれてしまったことを話した。
話を聞き終えたリスト司令とアルピナは、揃って胡散臭いものを見るような顔を向けてきた。
「……シュウヤ君。ソレ、どこまでがホント?」
「全部です」
「いや、でもさー、ムチャクチャにも程があるわよ。特にモダス帝から直々に依頼を受けるなんて、帝国に入って2日、3日のヤツに起こる出来事じゃないわよ?」
「でも、本当なんです。フィッボ……、モダス帝はずっと、亡命を助けてくれる異邦人を探していたと言っていました」
「ソレが、ここ10年? まあ、確かにモダス帝はロージュマーブル陥落以後、目立った動きをしていないのは事実だけど。
うーん……」
と、ここでアルピナが口を開く。
「もし仮にコウさんの話が本当だった場合、我々が現在捜索している正体不明の馬車には、モダス帝が乗っていると言うことになりますね」
「多分、そうです」
「とすると、これは非常に政治的な問題に発展する可能性があります」
「そうね。……話が、本当ならだけど」
と、またもテントの外から声が入ってくる。
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「ええ、いるわよ。どうしたの?」
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「はい。しかし報告によれば」
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当ブログがなんと985位(参加総数:648656サイト)にランクインしていました。
ついに3桁台に突入しました。割合で言うと0.148%。
小説総合ランキングでも30位と上位に食い込み、大躍進です。
ひとえに皆様のご声援の賜物であり、ありがたい限りです。
これからもよろしくお願いいたします。
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