「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第2部
白猫夢・銃聖抄 5
麒麟を巡る話、第90話。
リスト司令の寄宿舎。
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5.
秋也たちを乗せた車は10時間ほどで――2頭立ての馬車であれば休み休み進んで、2日かかる距離である――プラティノアール王国の首都、シルバーレイクに到着した。
リスト司令の私邸で待たされていた秋也とアルピナのところに、リスト司令が戻ってきた。
「サンデルさんは軍の病院に移送したわ。何とか命が保って助かったわね。元々タフだったみたいだし。
今は容体も安定してきてるらしいわ。多分、助かるわね」
「良かった……」
ほっと一息つく秋也に、アルピナがピン、と人差し指を立てて見せる。
「コウさん、あなたは本当に兵士とか、軍関係者ではないみたいね。油断しすぎよ。
あなたがモダス帝のことを口走りそうになって、すごく焦ったわ」
「え?」
「もしあそこであなたがうっかり秘密の暴露をしてしまっていたら、わたしたちはあなたを拘束しなきゃならなくなるところだったのよ?
状況が落ち着くまで、あなたは何もしゃべらない方がいいわ」
「すみません、気を付けます」
ぺこりと頭を下げる秋也に、アルピナはクス、と笑みを返した。
「な、なんですか?」
「司令から『縛返し』の話を聞いていたけど、あなたがその、息子さんなのよね」
「縛返し」と言うのは秋也の母、黄晴奈の異名の一つである。
とある戦争で敵に捕まり、その本拠に連れ去られたことがあったのだが、彼女はそこから脱出し、逆に敵を一網打尽にしてしまったことから、その呼び名が付いた。
「ええ、まあ」
「じゃあもしかして、わたしたちに捕まっておいて、実は王国で大乱闘しようなんて考えてたり?」
「いやいやいやいや、無いですって」
ぷるぷると頭を横に振る秋也を見て、アルピナも、リスト司令も大笑いする。
「あはは……、面白い子ね。からかい甲斐があるわ」
「え、え?」
秋也が戸惑っている間に、リスト司令とアルピナは短く会話を交わす。
「じゃあ、伝えておいて頂戴」
「分かりました」
アルピナが部屋を出たところで、リスト司令は秋也に向き直る。
「しばらくは、アタシん家で生活するといいわ。外にはなるべく出ないようにね」
「分かりました」
「部屋は……、2階の空いてるトコなら適当に使っていいわよ」
「はあ」
「つっても勝手なんか分かんないだろうし、簡単に案内するわ。付いてきて」
リスト司令は私邸のあちこちを回り、秋也に紹介した。
「3階はアタシの部屋と屋上だけ。許可なくアタシの部屋に入ったらおしおきするわよ。
2階は寄宿舎みたいなもんになってるわ。今は4人入ってる」
「寄宿舎?」
「アタシが直々に銃士としての指導をしてる、選抜メンバーの寄宿舎よ。
ちなみにさっきのアルピナも、アタシの教え子。一番射撃がうまいから、機会があったら腕前見せてもらいなさい。
ちなみにさっき、アルピナが何もしゃべるなっつってたけど、寄宿舎の子とは話していいわよ、普通に。ただし、グリスロージュ関係は絶対にしゃべんないでね。ややこしくなるし。
で、1階は食堂と書斎と応接室があるわ。ま、アタシの方からあっちこっち出向くコトが多いから、応接室はほとんど使ってないけどね。
地下はただの倉庫。つっても火薬とか銃弾とか、ソレの製造機とかあるけど、アンタはあんまり用が無いと思うわ」
秋也は空き部屋を一つ宛がわれ、数日をそこで過ごすことになった。
そしてこの間にも、秋也の親しみやすさが発揮され――。
「ただいまー、……ってあれ?」
2日後、リスト司令が私邸に戻ってきた際、彼女は丁度、秋也と訓練生たちがカードゲームに興じているところに出くわした。
「いつの間に、そんなに仲良くなったの?」
「ええ、色々話してたら、まあ、こんな感じで」
「……アンタのお父さんもお母さんもそんなにじゃなかったけど、アンタ人一倍、人懐っこいのね」
「良く言われます」
リスト司令の言葉に、秋也は苦笑して返した。
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リスト司令の寄宿舎。
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秋也たちを乗せた車は10時間ほどで――2頭立ての馬車であれば休み休み進んで、2日かかる距離である――プラティノアール王国の首都、シルバーレイクに到着した。
リスト司令の私邸で待たされていた秋也とアルピナのところに、リスト司令が戻ってきた。
「サンデルさんは軍の病院に移送したわ。何とか命が保って助かったわね。元々タフだったみたいだし。
今は容体も安定してきてるらしいわ。多分、助かるわね」
「良かった……」
ほっと一息つく秋也に、アルピナがピン、と人差し指を立てて見せる。
「コウさん、あなたは本当に兵士とか、軍関係者ではないみたいね。油断しすぎよ。
あなたがモダス帝のことを口走りそうになって、すごく焦ったわ」
「え?」
「もしあそこであなたがうっかり秘密の暴露をしてしまっていたら、わたしたちはあなたを拘束しなきゃならなくなるところだったのよ?
状況が落ち着くまで、あなたは何もしゃべらない方がいいわ」
「すみません、気を付けます」
ぺこりと頭を下げる秋也に、アルピナはクス、と笑みを返した。
「な、なんですか?」
「司令から『縛返し』の話を聞いていたけど、あなたがその、息子さんなのよね」
「縛返し」と言うのは秋也の母、黄晴奈の異名の一つである。
とある戦争で敵に捕まり、その本拠に連れ去られたことがあったのだが、彼女はそこから脱出し、逆に敵を一網打尽にしてしまったことから、その呼び名が付いた。
「ええ、まあ」
「じゃあもしかして、わたしたちに捕まっておいて、実は王国で大乱闘しようなんて考えてたり?」
「いやいやいやいや、無いですって」
ぷるぷると頭を横に振る秋也を見て、アルピナも、リスト司令も大笑いする。
「あはは……、面白い子ね。からかい甲斐があるわ」
「え、え?」
秋也が戸惑っている間に、リスト司令とアルピナは短く会話を交わす。
「じゃあ、伝えておいて頂戴」
「分かりました」
アルピナが部屋を出たところで、リスト司令は秋也に向き直る。
「しばらくは、アタシん家で生活するといいわ。外にはなるべく出ないようにね」
「分かりました」
「部屋は……、2階の空いてるトコなら適当に使っていいわよ」
「はあ」
「つっても勝手なんか分かんないだろうし、簡単に案内するわ。付いてきて」
リスト司令は私邸のあちこちを回り、秋也に紹介した。
「3階はアタシの部屋と屋上だけ。許可なくアタシの部屋に入ったらおしおきするわよ。
2階は寄宿舎みたいなもんになってるわ。今は4人入ってる」
「寄宿舎?」
「アタシが直々に銃士としての指導をしてる、選抜メンバーの寄宿舎よ。
ちなみにさっきのアルピナも、アタシの教え子。一番射撃がうまいから、機会があったら腕前見せてもらいなさい。
ちなみにさっき、アルピナが何もしゃべるなっつってたけど、寄宿舎の子とは話していいわよ、普通に。ただし、グリスロージュ関係は絶対にしゃべんないでね。ややこしくなるし。
で、1階は食堂と書斎と応接室があるわ。ま、アタシの方からあっちこっち出向くコトが多いから、応接室はほとんど使ってないけどね。
地下はただの倉庫。つっても火薬とか銃弾とか、ソレの製造機とかあるけど、アンタはあんまり用が無いと思うわ」
秋也は空き部屋を一つ宛がわれ、数日をそこで過ごすことになった。
そしてこの間にも、秋也の親しみやすさが発揮され――。
「ただいまー、……ってあれ?」
2日後、リスト司令が私邸に戻ってきた際、彼女は丁度、秋也と訓練生たちがカードゲームに興じているところに出くわした。
「いつの間に、そんなに仲良くなったの?」
「ええ、色々話してたら、まあ、こんな感じで」
「……アンタのお父さんもお母さんもそんなにじゃなかったけど、アンタ人一倍、人懐っこいのね」
「良く言われます」
リスト司令の言葉に、秋也は苦笑して返した。
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