「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第3部
白猫夢・荒野抄 6
麒麟を巡る話、第124話。
帝国軍、再統制。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
帝都、カプラスランドでも同様に朝を迎えていたが、城内はそれまでとは明らかに違う雰囲気を漂わせていた。
「オラ、いつまで寝ぼけてやがるッ!? さっさと起きろ! さっさと来い!」
まだ居住者の半分も目を覚ましていない兵舎に、アルトの怒声が飛ぶ。
「なんだ……うるさいな」
「どこのバカだ……?」
のろのろとした仕草で窓を開けた兵士に、アルトはなお一層、罵声を浴びせる。
「今何時だと思ってやがる!? それでもお前ら、兵士のつもりかッ!? ボーっとしてんじゃねえぞ、コラ!」
「な、……陛下?」
「じゃないだろ」
「髪の色は一緒だが……」
「……あんなに下品な方ではない」
戸惑う兵士たちに対し、アルトは背後に立っていたアロイスに向き直る。
「伝えろ」
「了解した。
皆の者、昨夜遅く、フィッボ・モダス皇帝陛下が戻られた。隣国、プラティノアール王国の者に拉致されていたがようやく脱出の機会を得て、ここに戻られたのだ。
しかし不埒者揃いの隣国政府は、もう一度陛下の玉体を奪おうと計画しているとの情報を得ている。即刻態勢を整え、彼奴らを撃退するのだ」
実質上の首脳、参謀アロイスにこう説かれても、兵士たちは神妙な顔をするばかりだった。
「……陛下が戻った、って」
「あれ、どう見ても陛下じゃないし」
「襲ってくるったって、あんなのを奪還しに? まさか!」
「おい、何をゴチャゴチャ言ってやがる!?」
アルトは周りに立っていた手下の一人から小銃を奪い、兵舎に向かって撃ち放った。
「うわっ!?」
「危ねえ!」
「な、何をする!?」
「皇帝たる俺の命令が聞けないってのか、あぁ!? つべこべ言ってねーで早く出て来い!」
「……」
しばらくして、憮然とした顔の兵士たちがぞろぞろと、兵舎から現れる。
だが誰もがアルトに対し、不審そうな目を向けていた。
「何だよ? 何か文句があんのか?」
アルトの問いに、兵士たちは口々に反発の意を示す。
「お前、誰なんだよ?」
「どう見ても陛下じゃない」
「ふざけてると承知せんぞ!」
「ほーお」
アルトはそれに対し、つかつかと足音を立て、兵士たちの群れに寄る。
「文句があるってんだな。俺の言うことなんか聞けるか、さっさと兵舎に戻って寝てたいと、そう言うんだな」
「ああ、そうだよ。何でお前なんかの」
兵士の一人が突っかかりかけた、次の瞬間――。
「じゃあいい。お前は寝てろ」
兵舎の壁からごつ、と鈍い音が響く。
「なっ……!?」
「ひい……っ!」
つい一瞬前までアルトの前に立ち、反発の姿勢を見せていた兵士が、いつの間にか壁に叩きつけられ、壁の奥へと突き抜けていた。
「う……ぐ、……うっ」
穴からもぞもぞと、血まみれの姿で這い出してきた兵士は、そこで力尽き、気を失う。
「へっへ……、なんなら永久に寝ててもいいんだぜ?
で、お前らはどうする? 俺はやっさしーいからよ、休みたいってんならゆーっくり部屋の中で休ませてやるぜぇ?
ま、張り切って働きたいってんなら、それも聞いてやるが、よ?」
「……一所懸命、任務に当たらせていただきます」
「がっ、頑張ります」
「ご命令を」
兵士たちはそれ以上、何の反発もできなくなった。
とは言え、アルト一味が持参してきた武器・弾薬、兵器を確認した兵士たちは、一様に驚きの声を挙げた。
「なんだこりゃ……!?」
「俺の親指くらいあるぞ、この弾丸」
「これ、どれも金火狐マークが付いてるが、……あんたらが買って来たのか?」
「そうとも」
武器の山を背にしたアルトは、ニヤニヤと笑って説明する。
「拳銃350丁、小銃150丁、散弾銃150丁、榴弾砲80丁、迫撃砲50丁、それから高射砲5基、対装甲ライフル3丁、……そして、へっへへ、とびっきりの武器もあるぜ。
ま、見てみな」
アルトにそう促され、兵士たちはそちらに目をやる。
「何だあれ。キモっ」
「車輪に、……銃みたいなのが固定されてるが」
「主に銃身がキモい」
「なんであんなに銃身ばっかり付いてるんだ?」
「あの銃口で一斉に撃つ、……と言う武器なのか?」
口々に質問する兵士に対し、アルトは手下に撃つよう命じる。
「あの木でいい。2秒くらいで充分だろ」
「ういっす」
手下たち2名が車輪をがっしりとつかんで固定し、もう1名が銃身の後ろに回ってクランクレバーをぐりぐりと回す。
するとその奇妙な銃はガチャガチャと音を立て――木を一瞬で粉微塵にした。
「……な、なんだ今の!?」
「すげえうるせえ」
「いや、んなことより」
「木がぐちゃぐちゃだ……」
「へっへへへ……」
アルトはにやぁ、と笑い、その恐るべき兵器を紹介した。
「金火狐商会の、極秘開発の試作品なんだけれっどもよ、……ちょっとばかり人脈使って手に入れた代物だ。
その名も回転式連射砲――開発コード『ダークレイブン』とか言ってたな」
「……」
絶句する兵士たちに、アルトはこう続けた。
「まさかお前ら、ここまで超兵器が揃ってて、『もう勝てない』『戦えやしない』みてーなことは、言うわけねえよな?」
アルトの問いに、否定的な意見を返す者は誰もいなかった。
この日は秋也たちにとって長い長い、壮絶な一日となる。
白猫夢・荒野抄 終
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帝国軍、再統制。
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帝都、カプラスランドでも同様に朝を迎えていたが、城内はそれまでとは明らかに違う雰囲気を漂わせていた。
「オラ、いつまで寝ぼけてやがるッ!? さっさと起きろ! さっさと来い!」
まだ居住者の半分も目を覚ましていない兵舎に、アルトの怒声が飛ぶ。
「なんだ……うるさいな」
「どこのバカだ……?」
のろのろとした仕草で窓を開けた兵士に、アルトはなお一層、罵声を浴びせる。
「今何時だと思ってやがる!? それでもお前ら、兵士のつもりかッ!? ボーっとしてんじゃねえぞ、コラ!」
「な、……陛下?」
「じゃないだろ」
「髪の色は一緒だが……」
「……あんなに下品な方ではない」
戸惑う兵士たちに対し、アルトは背後に立っていたアロイスに向き直る。
「伝えろ」
「了解した。
皆の者、昨夜遅く、フィッボ・モダス皇帝陛下が戻られた。隣国、プラティノアール王国の者に拉致されていたがようやく脱出の機会を得て、ここに戻られたのだ。
しかし不埒者揃いの隣国政府は、もう一度陛下の玉体を奪おうと計画しているとの情報を得ている。即刻態勢を整え、彼奴らを撃退するのだ」
実質上の首脳、参謀アロイスにこう説かれても、兵士たちは神妙な顔をするばかりだった。
「……陛下が戻った、って」
「あれ、どう見ても陛下じゃないし」
「襲ってくるったって、あんなのを奪還しに? まさか!」
「おい、何をゴチャゴチャ言ってやがる!?」
アルトは周りに立っていた手下の一人から小銃を奪い、兵舎に向かって撃ち放った。
「うわっ!?」
「危ねえ!」
「な、何をする!?」
「皇帝たる俺の命令が聞けないってのか、あぁ!? つべこべ言ってねーで早く出て来い!」
「……」
しばらくして、憮然とした顔の兵士たちがぞろぞろと、兵舎から現れる。
だが誰もがアルトに対し、不審そうな目を向けていた。
「何だよ? 何か文句があんのか?」
アルトの問いに、兵士たちは口々に反発の意を示す。
「お前、誰なんだよ?」
「どう見ても陛下じゃない」
「ふざけてると承知せんぞ!」
「ほーお」
アルトはそれに対し、つかつかと足音を立て、兵士たちの群れに寄る。
「文句があるってんだな。俺の言うことなんか聞けるか、さっさと兵舎に戻って寝てたいと、そう言うんだな」
「ああ、そうだよ。何でお前なんかの」
兵士の一人が突っかかりかけた、次の瞬間――。
「じゃあいい。お前は寝てろ」
兵舎の壁からごつ、と鈍い音が響く。
「なっ……!?」
「ひい……っ!」
つい一瞬前までアルトの前に立ち、反発の姿勢を見せていた兵士が、いつの間にか壁に叩きつけられ、壁の奥へと突き抜けていた。
「う……ぐ、……うっ」
穴からもぞもぞと、血まみれの姿で這い出してきた兵士は、そこで力尽き、気を失う。
「へっへ……、なんなら永久に寝ててもいいんだぜ?
で、お前らはどうする? 俺はやっさしーいからよ、休みたいってんならゆーっくり部屋の中で休ませてやるぜぇ?
ま、張り切って働きたいってんなら、それも聞いてやるが、よ?」
「……一所懸命、任務に当たらせていただきます」
「がっ、頑張ります」
「ご命令を」
兵士たちはそれ以上、何の反発もできなくなった。
とは言え、アルト一味が持参してきた武器・弾薬、兵器を確認した兵士たちは、一様に驚きの声を挙げた。
「なんだこりゃ……!?」
「俺の親指くらいあるぞ、この弾丸」
「これ、どれも金火狐マークが付いてるが、……あんたらが買って来たのか?」
「そうとも」
武器の山を背にしたアルトは、ニヤニヤと笑って説明する。
「拳銃350丁、小銃150丁、散弾銃150丁、榴弾砲80丁、迫撃砲50丁、それから高射砲5基、対装甲ライフル3丁、……そして、へっへへ、とびっきりの武器もあるぜ。
ま、見てみな」
アルトにそう促され、兵士たちはそちらに目をやる。
「何だあれ。キモっ」
「車輪に、……銃みたいなのが固定されてるが」
「主に銃身がキモい」
「なんであんなに銃身ばっかり付いてるんだ?」
「あの銃口で一斉に撃つ、……と言う武器なのか?」
口々に質問する兵士に対し、アルトは手下に撃つよう命じる。
「あの木でいい。2秒くらいで充分だろ」
「ういっす」
手下たち2名が車輪をがっしりとつかんで固定し、もう1名が銃身の後ろに回ってクランクレバーをぐりぐりと回す。
するとその奇妙な銃はガチャガチャと音を立て――木を一瞬で粉微塵にした。
「……な、なんだ今の!?」
「すげえうるせえ」
「いや、んなことより」
「木がぐちゃぐちゃだ……」
「へっへへへ……」
アルトはにやぁ、と笑い、その恐るべき兵器を紹介した。
「金火狐商会の、極秘開発の試作品なんだけれっどもよ、……ちょっとばかり人脈使って手に入れた代物だ。
その名も回転式連射砲――開発コード『ダークレイブン』とか言ってたな」
「……」
絶句する兵士たちに、アルトはこう続けた。
「まさかお前ら、ここまで超兵器が揃ってて、『もう勝てない』『戦えやしない』みてーなことは、言うわけねえよな?」
アルトの問いに、否定的な意見を返す者は誰もいなかった。
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双月千年世界 3;白猫夢

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双月千年世界 目次 / あらすじ

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短編・掌編

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ガトリング機関銃(^^;)
またえげつないものを……(^^;)
シュウヤくんたちとしては、もう、「夜襲」しかないですな。
がんばれ!
またえげつないものを……(^^;)
シュウヤくんたちとしては、もう、「夜襲」しかないですな。
がんばれ!
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ただ、こんなヤツに好き好んで従う兵士がいるかどうか。
勝負の分かれ目は、そこにあるかな、と。