「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第3部
白猫夢・崩都抄 2
麒麟を巡る話、第126話。
超兵器を目の当たりにして。
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2.
秋也たち一行は新市街をこっそりと北西へ進み、カプラス城が見える位置にまで迫った。
「硝煙の臭いがきつくなってきたな。相当撃ちまくってるな、こりゃ」
「とは言え市街地で撃ったりなんかはしてないみたいね、流石に」
と、アルピナがそう言った次の瞬間――。
「……あら」
「出てきたっスね」
城内から兵士3名が、珍妙な形をした巨大な銃を運び出してくるのが見えた。
「やっぱり城の中じゃまずかったか、これ撃つの」
「だな。壁がすぐボロボロになっちまう」
「俺たちが自分の城崩しちゃ意味ないしな」
口々にそんなことを言いながら、帝国兵らは城の前で一旦、その車輪の付いた銃を停める。
これを聞き、アルピナは首を傾げる。
「城壁を簡単に崩せるような銃……? 対装甲ライフルにしては、銃身が短く感じられるけれど」
「って言うか、何スかアレ。銃身付け過ぎっしょ」
「確かに、……不格好だな」
やがて帝国兵たちは銃を廃屋に向け、狙いを定める。
「固定良し!」
「弾丸装填良し! 発射!」
次の瞬間、バババ……、と切れ間無い炸裂音が轟き、その銃は廃屋に大穴を開けた。
「ヒューッ、あっと言う間だな!」
「見ろよ、穴から向こうの通りが見えるぜ!」
「こいつはマジですげえや!」
横方向から見る形となった秋也たちも、その圧倒的な破壊力を見せ付けられ、呆然とするばかりだった。
「……」
「対装甲ライフルで騒いでたが、……白けちまう威力だな」
「あんなもので撃たれたら、人間の10人や20人、ひとたまりも無く千切られるぞ!?」
「あんなのアリかよぉー……」
が、アルピナは一人、冷静に状況を読む。
「……もう少し様子を見ましょう。もしかしたら、……奪えるかも」
「え……!?」
まだショックから抜けきっていないものの、秋也はその根拠を聞こうと、しどろもどろに尋ねる。
「ど、どうやって奪うんスか? だってアレ、滅茶苦茶って言うか、ええと、とんでもない威力っスよ? 下手に飛び込んだら、蜂の巣って言うか、細切れって言うか」
「敵がこっちを向けばね」
「へ?」
「……なーるほど」
どうやらサンクは、アルピナの立てた作戦を察したらしい。
「じゃあ、俺とサンデルは迂回して、向こうに回るとするか」
「ええ、お願いね。わたしとシュウヤ君はここで待機してるわ」
「どう言うことだ?」
この行軍で半ば恒例となったサンデルの問いに、今度もアルピナは丁寧に答えてくれた。
「確かに正面から向かえばどうしようもない相手でしょうけど、こうやって今、真横から眺めていたわたしたちに、被害はまったく無いわ。多分あの銃は斜め、あるいは横からの攻撃に対しては、非常に脆いんじゃないかと思うの。
それにあの銃、兵士三人がかりでがっしり固定しないと撃てないらしいわ。多分、反動がものすごく強いんでしょうね。となると、取り回しが非常にしにくいものなんじゃないかなって」
「ふむ……、ならば両横から挟み撃ちにすれば仕留められるやも、と言うわけか」
「そう言うこと。ただ、まだ城からそう離れてないから、奪うのに手間取れば、城の中から一斉射撃を食らう恐れもあるわ。
ここは特に、慎重に行きましょう。そして首尾よく奪えたら、一旦隠れて作戦を練るわよ」
サンクとサンデルを向かい側に向かわせ、秋也とアルピナは物陰に隠れ、じっと帝国兵の行動を観察していた。
「ひゃー、腕が痛え」
「撃ち過ぎたな、流石に」
「あんだけあった弾が、もう切れちまった」
その発言に、アルピナが舌打ちしかける。
しかし次に聞こえてきた言葉に、またニヤリと笑みを見せた。
「追加分、取ってくるよ。どれくらいいるかな?」
「そうだな……、今のが2000発だろ? もっと撃ちたいし、倍は欲しいな」
「分かった」
その間に、兵士らを挟んで向かい側の通りに、サンクたちの姿を見つける。
秋也たちの位置から見れば二人をすぐに確認できたが、どうやら帝国兵らの位置からは死角になっているらしい。
サンクたちに全く気付く様子も無く、城に帰っていた兵士が帯状につながれた銃弾の束を持って戻ってきた。
「取ってきたよー」
「おう。じゃ……」
帝国兵たち3名の注意が、銃に向けられる。
(今よ!)
アルピナの合図で、秋也たち4人は物陰から飛び出し、両側から帝国兵たちに襲いかかった。
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超兵器を目の当たりにして。
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秋也たち一行は新市街をこっそりと北西へ進み、カプラス城が見える位置にまで迫った。
「硝煙の臭いがきつくなってきたな。相当撃ちまくってるな、こりゃ」
「とは言え市街地で撃ったりなんかはしてないみたいね、流石に」
と、アルピナがそう言った次の瞬間――。
「……あら」
「出てきたっスね」
城内から兵士3名が、珍妙な形をした巨大な銃を運び出してくるのが見えた。
「やっぱり城の中じゃまずかったか、これ撃つの」
「だな。壁がすぐボロボロになっちまう」
「俺たちが自分の城崩しちゃ意味ないしな」
口々にそんなことを言いながら、帝国兵らは城の前で一旦、その車輪の付いた銃を停める。
これを聞き、アルピナは首を傾げる。
「城壁を簡単に崩せるような銃……? 対装甲ライフルにしては、銃身が短く感じられるけれど」
「って言うか、何スかアレ。銃身付け過ぎっしょ」
「確かに、……不格好だな」
やがて帝国兵たちは銃を廃屋に向け、狙いを定める。
「固定良し!」
「弾丸装填良し! 発射!」
次の瞬間、バババ……、と切れ間無い炸裂音が轟き、その銃は廃屋に大穴を開けた。
「ヒューッ、あっと言う間だな!」
「見ろよ、穴から向こうの通りが見えるぜ!」
「こいつはマジですげえや!」
横方向から見る形となった秋也たちも、その圧倒的な破壊力を見せ付けられ、呆然とするばかりだった。
「……」
「対装甲ライフルで騒いでたが、……白けちまう威力だな」
「あんなもので撃たれたら、人間の10人や20人、ひとたまりも無く千切られるぞ!?」
「あんなのアリかよぉー……」
が、アルピナは一人、冷静に状況を読む。
「……もう少し様子を見ましょう。もしかしたら、……奪えるかも」
「え……!?」
まだショックから抜けきっていないものの、秋也はその根拠を聞こうと、しどろもどろに尋ねる。
「ど、どうやって奪うんスか? だってアレ、滅茶苦茶って言うか、ええと、とんでもない威力っスよ? 下手に飛び込んだら、蜂の巣って言うか、細切れって言うか」
「敵がこっちを向けばね」
「へ?」
「……なーるほど」
どうやらサンクは、アルピナの立てた作戦を察したらしい。
「じゃあ、俺とサンデルは迂回して、向こうに回るとするか」
「ええ、お願いね。わたしとシュウヤ君はここで待機してるわ」
「どう言うことだ?」
この行軍で半ば恒例となったサンデルの問いに、今度もアルピナは丁寧に答えてくれた。
「確かに正面から向かえばどうしようもない相手でしょうけど、こうやって今、真横から眺めていたわたしたちに、被害はまったく無いわ。多分あの銃は斜め、あるいは横からの攻撃に対しては、非常に脆いんじゃないかと思うの。
それにあの銃、兵士三人がかりでがっしり固定しないと撃てないらしいわ。多分、反動がものすごく強いんでしょうね。となると、取り回しが非常にしにくいものなんじゃないかなって」
「ふむ……、ならば両横から挟み撃ちにすれば仕留められるやも、と言うわけか」
「そう言うこと。ただ、まだ城からそう離れてないから、奪うのに手間取れば、城の中から一斉射撃を食らう恐れもあるわ。
ここは特に、慎重に行きましょう。そして首尾よく奪えたら、一旦隠れて作戦を練るわよ」
サンクとサンデルを向かい側に向かわせ、秋也とアルピナは物陰に隠れ、じっと帝国兵の行動を観察していた。
「ひゃー、腕が痛え」
「撃ち過ぎたな、流石に」
「あんだけあった弾が、もう切れちまった」
その発言に、アルピナが舌打ちしかける。
しかし次に聞こえてきた言葉に、またニヤリと笑みを見せた。
「追加分、取ってくるよ。どれくらいいるかな?」
「そうだな……、今のが2000発だろ? もっと撃ちたいし、倍は欲しいな」
「分かった」
その間に、兵士らを挟んで向かい側の通りに、サンクたちの姿を見つける。
秋也たちの位置から見れば二人をすぐに確認できたが、どうやら帝国兵らの位置からは死角になっているらしい。
サンクたちに全く気付く様子も無く、城に帰っていた兵士が帯状につながれた銃弾の束を持って戻ってきた。
「取ってきたよー」
「おう。じゃ……」
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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
後述しますが、このガトリング砲はまだ研究開発の試作品を、アルトがパク……、持ってきたもの。
今現在の、最新版のウィキペディアを開発者が閲覧できるなら、そりゃベルト式にはしないでしょうが、彼らは現在試行錯誤の真っ最中なわけで。
きっと実用化される頃には、箱型弾倉も開発されているでしょう。
今現在の、最新版のウィキペディアを開発者が閲覧できるなら、そりゃベルト式にはしないでしょうが、彼らは現在試行錯誤の真っ最中なわけで。
きっと実用化される頃には、箱型弾倉も開発されているでしょう。
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NoTitle
間違いや、間違いっぽいものがあればこちらも目一杯真面目にお答えするつもりです。
むしろどんと来い、です。
詳細は11月7日の記事にて。