「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第3部
白猫夢・崩都抄 3
麒麟を巡る話、第127話。
突入計画の検討。
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3.
「……えっ」
「な、何者だ!?」
「王国兵!?」
銃に弾を込めていた最中の3人は、慌てて車輪をつかみ、銃を向けようとする。
「ど、どっち撃つ!?」
「え、……えー、女の方!」
「わ、わかっ」
言い終わらないうちに、サンクが放った小銃の弾が、左車輪をつかんでいた兵士の腕を貫通する。
「うっ、あ、……ぎああっ」
腕の肉がえぐられ、兵士は絶叫する。
「はう、はうっ、……はっ、っ」
そしてその弾は真ん中、銃の発射レバーをつかんでいた兵士の右肩にも突き刺さる。しかしこれは貫通せず、兵士は血の噴き出す己の肩を抱え込み、その場に倒れる。
「う、わ、……うわ」
残る一人は混乱したらしく、立ち尽くしている。
「悪いな」
その残り一人を、秋也が峰打ちした。
負傷した帝国兵3人を介抱した上で、彼らが穴だらけにした廃屋の中に閉じ込めて縛り上げたところで、秋也たちは奪った銃の観察を始めた。
「コレって、金火狐マークですよね」
「確か、そうね。良く知ってるわね、シュウヤ君」
「だってオレ、中央の生まれですし」
「あ、そっか、そうだったわね。……金火狐製の兵器、か。
もしかしたら、なんだけど、この兵器の話、聞いたことがあるかも」
「俺からしたら、そっちの方が『良く知ってるな』だぞ」
サンクにそう言われ、アルピナは口ごもりつつ、こう返してきた。
「お義父さん、……スタッガート博士から聞いた話なんだけど、金火狐で働いてた時、当時ライバル視してた人が、大量に銃弾をバラ撒けるような、連装型の銃のアイデアを話してきたことがあるらしいの」
「銃弾を、大量に?」
サンクの問いにうなずきつつ、アルピナは話を続ける。
「リボルバーってあるでしょ? 弾倉が回転して5連発か、6連発撃てるやつ。あれも連続で撃てると言えば撃てるけれど、結局は銃身が一つだから、連発すると熱がこもり過ぎて、変形・腔発の危険性が高まってくるのよ。
それでそのライバルさん、逆転の発想だって、銃身の方を複数用意すればいくらでも撃てるんじゃないかって言ったそうなんだけど、……お義父さんは一笑に付したらしいわ、その時。『現実的に考えてみろ、一分一秒を争うような事態差し迫る戦場で、一々銃身を変える暇などあるか』って言ってね。
……その答えが、これみたいね」
アルピナは弾を込めず、その奇妙な銃――回転連射砲の発射レバーをくるくると回す。するとその動きに合わせて銃身が、ガチャガチャと音を立てて回転した。
「これだけ銃身が付いてて、しかも回転していれば多少は放熱効果も期待できるし、2000発撃っても銃身一丁ずつの疲労は軽減されるわけね。実際あれだけ撃ってたのに、手袋越しで触れるくらいには冷えてるし」
「それで、これからどうする? あまりここでのんびりもしていられんぞ」
サンデルの問いに、アルピナはこう返した。
「そうね。いつ城内の兵士が、彼らが戻って来ないことに気付くかも分からないし。できる限り早急に突入して、速やかに脱出しないといけないんだけど、ね」
その間にサンクが、炭とまな板を持って戻ってくる。
「サンデル、城内の地図を描いてくれ。それから、どの辺りにベルちゃんとトッドレール氏がいそうか、予想できたらしてみてほしい」
「承知した」
サンデルは炭を受け取り、まな板にガリガリと城内の簡略図を書き込んだ。
「ここが城門だ。貴君らも見た通り、城の周囲には堀が巡らされており、入る道はここと裏門しか無い。
裏門については、入るのはまず無謀と言っていいだろう。何故なら大兵舎が目の前にあるからだ」
「なるほど。重武装してる奴らの真ん前に来ちゃ、そりゃまずいな。じゃあ正面からか?」
「うむ。幸いにして、城門の前は執務院となっている。兵士の大半は恐らく、その執務院を越えて北東にある訓練場で、射撃訓練を行っているだろうからな。正面切って攻撃するならともかく、こっそり入る分にはそうそう気付かれるまい。成功の確率はそう低くはないであろう。
ベル嬢の居場所についてであるが、恐らく最も守りの堅い、北西の王宮にいるだろう。客間も揃っておるし、軟禁などしておくにはうってつけだ。
最も危険なのは北東側の大兵舎と軍本営、そして執務院よりさらに西側にある小兵舎だ。城門からまっすぐ北へ向かって進めば、すぐ王宮に侵入できる」
「予想される兵力は?」
「恐らくは……、1万か、それ以下と言うところではないかと思う。度重なる混乱で兵の多くは逃げ出しているだろうが、それでも5000や6000を切るようなことは無いだろうな」
と、拘束していた兵士の一人がぼそ、と応じる。
「300くらいです。今朝になって、ここ最近で徴兵した民間人のほとんどが解放されました。元々から兵役に就いてる人間は200くらいですが、新しく皇帝になった奴が100人くらい連れて来てます」
「うん?」
唐突に会話に入ってきた兵士に驚き、皆は一斉に振り返る。
「何故それを我々に?」
「……お忘れですか、マーニュ大尉」
「うん? ……あっ!?」
サンデルは慌てて、その兵士に駆け寄った。
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突入計画の検討。
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3.
「……えっ」
「な、何者だ!?」
「王国兵!?」
銃に弾を込めていた最中の3人は、慌てて車輪をつかみ、銃を向けようとする。
「ど、どっち撃つ!?」
「え、……えー、女の方!」
「わ、わかっ」
言い終わらないうちに、サンクが放った小銃の弾が、左車輪をつかんでいた兵士の腕を貫通する。
「うっ、あ、……ぎああっ」
腕の肉がえぐられ、兵士は絶叫する。
「はう、はうっ、……はっ、っ」
そしてその弾は真ん中、銃の発射レバーをつかんでいた兵士の右肩にも突き刺さる。しかしこれは貫通せず、兵士は血の噴き出す己の肩を抱え込み、その場に倒れる。
「う、わ、……うわ」
残る一人は混乱したらしく、立ち尽くしている。
「悪いな」
その残り一人を、秋也が峰打ちした。
負傷した帝国兵3人を介抱した上で、彼らが穴だらけにした廃屋の中に閉じ込めて縛り上げたところで、秋也たちは奪った銃の観察を始めた。
「コレって、金火狐マークですよね」
「確か、そうね。良く知ってるわね、シュウヤ君」
「だってオレ、中央の生まれですし」
「あ、そっか、そうだったわね。……金火狐製の兵器、か。
もしかしたら、なんだけど、この兵器の話、聞いたことがあるかも」
「俺からしたら、そっちの方が『良く知ってるな』だぞ」
サンクにそう言われ、アルピナは口ごもりつつ、こう返してきた。
「お義父さん、……スタッガート博士から聞いた話なんだけど、金火狐で働いてた時、当時ライバル視してた人が、大量に銃弾をバラ撒けるような、連装型の銃のアイデアを話してきたことがあるらしいの」
「銃弾を、大量に?」
サンクの問いにうなずきつつ、アルピナは話を続ける。
「リボルバーってあるでしょ? 弾倉が回転して5連発か、6連発撃てるやつ。あれも連続で撃てると言えば撃てるけれど、結局は銃身が一つだから、連発すると熱がこもり過ぎて、変形・腔発の危険性が高まってくるのよ。
それでそのライバルさん、逆転の発想だって、銃身の方を複数用意すればいくらでも撃てるんじゃないかって言ったそうなんだけど、……お義父さんは一笑に付したらしいわ、その時。『現実的に考えてみろ、一分一秒を争うような事態差し迫る戦場で、一々銃身を変える暇などあるか』って言ってね。
……その答えが、これみたいね」
アルピナは弾を込めず、その奇妙な銃――回転連射砲の発射レバーをくるくると回す。するとその動きに合わせて銃身が、ガチャガチャと音を立てて回転した。
「これだけ銃身が付いてて、しかも回転していれば多少は放熱効果も期待できるし、2000発撃っても銃身一丁ずつの疲労は軽減されるわけね。実際あれだけ撃ってたのに、手袋越しで触れるくらいには冷えてるし」
「それで、これからどうする? あまりここでのんびりもしていられんぞ」
サンデルの問いに、アルピナはこう返した。
「そうね。いつ城内の兵士が、彼らが戻って来ないことに気付くかも分からないし。できる限り早急に突入して、速やかに脱出しないといけないんだけど、ね」
その間にサンクが、炭とまな板を持って戻ってくる。
「サンデル、城内の地図を描いてくれ。それから、どの辺りにベルちゃんとトッドレール氏がいそうか、予想できたらしてみてほしい」
「承知した」
サンデルは炭を受け取り、まな板にガリガリと城内の簡略図を書き込んだ。
「ここが城門だ。貴君らも見た通り、城の周囲には堀が巡らされており、入る道はここと裏門しか無い。
裏門については、入るのはまず無謀と言っていいだろう。何故なら大兵舎が目の前にあるからだ」
「なるほど。重武装してる奴らの真ん前に来ちゃ、そりゃまずいな。じゃあ正面からか?」
「うむ。幸いにして、城門の前は執務院となっている。兵士の大半は恐らく、その執務院を越えて北東にある訓練場で、射撃訓練を行っているだろうからな。正面切って攻撃するならともかく、こっそり入る分にはそうそう気付かれるまい。成功の確率はそう低くはないであろう。
ベル嬢の居場所についてであるが、恐らく最も守りの堅い、北西の王宮にいるだろう。客間も揃っておるし、軟禁などしておくにはうってつけだ。
最も危険なのは北東側の大兵舎と軍本営、そして執務院よりさらに西側にある小兵舎だ。城門からまっすぐ北へ向かって進めば、すぐ王宮に侵入できる」
「予想される兵力は?」
「恐らくは……、1万か、それ以下と言うところではないかと思う。度重なる混乱で兵の多くは逃げ出しているだろうが、それでも5000や6000を切るようなことは無いだろうな」
と、拘束していた兵士の一人がぼそ、と応じる。
「300くらいです。今朝になって、ここ最近で徴兵した民間人のほとんどが解放されました。元々から兵役に就いてる人間は200くらいですが、新しく皇帝になった奴が100人くらい連れて来てます」
「うん?」
唐突に会話に入ってきた兵士に驚き、皆は一斉に振り返る。
「何故それを我々に?」
「……お忘れですか、マーニュ大尉」
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