黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第3部

    白猫夢・崩都抄 6

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    麒麟を巡る話、第130話。
    説得、鎮圧、反発。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    6.
    「あれは……!」
     アルピナたちも、向かってくる兵士たちも、その声に動きを止める。
    「さっきの兵士か!?」
    「う、うむ」
     先程拘束し、軍服を借りた兵士たちが、訓練場の真ん中に立っている。
    「その人たちを撃つんじゃないッ! 武器を下ろせッ!」
     その声を受け、兵士たちの動きが止まる。
    「……なんだ?」
    「一人は向こうの軍服着てるが、……あれってさっき、回転連射砲持って行った奴らじゃないか?」
    「ああ、そうらしいな……?」
     しかし武器は構えたまま、下ろす気配はない。依然、アルピナたちも兵士たちも、互いに銃を向けあったままである。
    「一体どうしたんだ、お前ら? 撃つなとは?」
    「いい加減に目を醒ますんだ! お前ら、盗賊から恵んでもらったような武器で戦う気なのか!?」
     アルピナの軍服を着た兵士の言葉に、何人かが声を漏らす。
    「……言われりゃ、まあ」
    「そりゃ確かに、わだかまりは」
     その声に応じ、女性兵士はこう続ける。
    「あの人たちは、あの偽皇帝がさらってきた女の子を助けに来ただけだ! それをお前らが勝手にドンパチしようと……!
     もっと冷静になれ! 私たちが付き従ってきたのは、誰だった!? あの下卑た盗賊頭じゃないだろう!? 今ここでその銃を使ったら、一生あいつの奴隷になるんだぞ!」
    「……」
     女性兵士の必死の説得に、兵士たちはざわめき出す。
    「力任せで言うこと聞かせられたけど、……確かになぁ」
    「これからずっとあいつの言うこと聞くって考えたら、……うーん」
    「武器は確かにすごいけどなぁ、……あいつが君主じゃなぁ」
     元々から力任せに、モノで釣って懐柔しようとしたからか、兵士たちは口々にアルトへの不満をこぼし始めた。
    「大体、俺たちそこまで戦争したいかって言われたらなぁ」
    「だよなぁ。そりゃ、あの参謀殿は怖いけど」
    「殺されたくないから従っただけで」
     場の空気が微妙なものになり、戦闘の緊張感が緩んでくる。
    (どうする?)
     小声で尋ねてきたサンクに、アルピナはこう返した。
    (もう少し様子を見ましょう。もしかしたら戦わずに済むかも知れないし)
    (うむ。不戦となるに越したことは無い)
     その間にも彼女は説得を続けており、兵士の大半が戦意を捨てたように見えた。
    「まあ……うん」
    「俺たちを狙うんじゃないなら、なぁ」
    「見なかったことにしてもいいよなー、なんて」
     そんな意見も出始め、アルピナたちはほっと、安堵のため息を漏らしかけた。

     その時だった。
    「うあ……っ!」
     説得し続けていた彼女が、突然跳ねる。周りにいた他の二人も突然、弾かれたように倒れ込んだ。
    「……な、何だ?」
    「撃たれた?」
     突然の展開に、兵士たちも、アルピナたちも言葉を失う。
     そこへ武装した、汚い身なりの男たちが現れた。
    「あいつらは……」
    「トッドレール一味か!」
     サンデルの怒声に、男たちはヘラヘラと笑いながら答える。
    「ご名答だ。まったく、折角やる気になってくれてたってのに、このバカが水差してくれちゃって、よぉ?」
    「邪魔すんじゃねえよ、ったく」
     ならず者らは銃を構え、兵士たちに向ける。
    「さっさと訓練に戻れや、兵隊さんよ? 皇帝陛下がおかんむりになるぜ?」
    「朝のこと、忘れたわけじゃあねーよなぁ? あんな風に壁に叩きつけられたいのか、え?」
    「いつまでぼんやりしてんだ、皇帝に頭潰されっぞ、コラ!」
     皇帝となったアルトの威を借りたならず者たちは、口々に兵士たちを罵る。
     が――唖然としていた兵士たちの顔に、次第に険が差し始めた。
    「……よくも同僚を撃ちやがったな」
    「非常時だからお前らのことを、少しでも友軍と思おうとしたが……」
    「できるわけねぇ……! こんなことをされて、そんな風に思えるかッ!」
     兵士たちはつい数分前までアルピナたちに向けていた武器を、ならず者らに向けた。
    「なんだよ、やるってのか?」
    「俺たちに手ぇ出したら、皇帝陛下がどう思うか……」
     アルトを脅しに使うならず者たちに、兵士たちは毅然とこう返した。
    「皇帝陛下? 誰のことを言っている?」
    「まさかあのならず者のことか?」
    「誰があんな奴に付き従ってやるものか!」
    「お前らみたいなカス共を引き連れるような下衆野郎が君主なぞッ!」
     そう叫ぶなり、兵士たちは一斉に銃を撃ち込んだ。
    「げ……っ」
    「や、やべぇ!」
     あっさりと反旗を翻され、ならず者たちは散り散りに逃げつつ、応戦する。
    「う、撃て、撃てっ! ここで反乱されたら、兄貴に大目玉を食うぞ!」
     瞬く間に、その場は戦場と化した。



     恐らく――秋也たちの潜入が無ければ、あるいは潜入のタイミングが一日でも遅ければ、これほど簡単に帝国軍がトッドレール一味に反発することなど、まず無かっただろう。
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