「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第3部
白猫夢・追鉄抄 4
麒麟を巡る話、第140話。
「すげえ」しか言えない相手。
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4.
居合抜きの如く抜き払われた渾沌の剣から九個の青い光弾が発射され、アロイスに向かって飛んで行く。
「ウゴ……ッ!?」
対装甲ライフルの連射でさえ貫けなかったアロイスの体を、光弾は易々と貫通する。
「馬鹿ナ……! 私ガ……コンナ……簡単ニ……!?」
大きく穴の開いた箇所から、アロイスの体はゆっくりと後方に折れ、やがて真っ二つに破断した。
「20年前と同じだと思ってた? お生憎様、私はあれから桁違いに成長したのよ」
「……ダ、ダガ……」
上半身だけになったアロイスは、なおも口を開く。
「忘レタワケデハアルマイ……私ハ何度デモ蘇リ……ソシテマタ……ガー……新タナ御子ヲ立テルノダ……。
永遠ニ……イタチゴッコヲ……ガ、ガッ……続ケルツモリカ……オ前タチ『克』ハ……?」
「そのつもりよ」
渾沌は残っていたアロイスの頭部に、がつっ、と剣を突き立てた。
「あなたたちが諦めるまで、いくらでも続けるつもりよ。
私たちにはそれができるだけの力も、意志もあるもの」
次の瞬間、アロイスの体が爆発し、渾沌を巻き込む。
「ちょっ!?」
秋也は驚き、声を挙げるが、渾沌の笑い声が返ってくる。
「あはは……、何? 私がこの程度で死ぬと思ったの?」
もうもうと立つ土煙の中から、渾沌は平然と戻ってきた。
「はい、これで大丈夫」
渾沌は傷ついた秋也たち一行を、治療術で癒してくれた。
「すげえな……。本国の最新医療チームでもなかなかこうは……」
痕も残らず完治した足を撫でながら、サンクが感心した声を挙げる。渾沌はそれを、いつもの含み笑いで応じた。
「私を誰だと思ってるの? 『克』よ?」
「いつもながらアンタ、人間離れしてるぜ……」
「うふふふ」
と、秋也は彼女の声を聴いて、あることを思い出した。
「あれ? ……渾沌?」
「何かしら?」
「国境にいた?」
「さあ?」
「……もしかしてオレがあそこで撃たれた時、助けてくれた?」
「ええ。助けてあげたわよ」
「後、……もう一個聞くけどさ」
「どうぞ」
「昨日、民家で寝泊まりしてたオレたちの側にいた? その仮面、昨夜も見たような……」
「ええ。見守ってあげてたわよ」
「まったく……、呆れるほどアンタ、すげーよなぁ」
「うふふっ」
そのやり取りに、同様に治療を受けたベルが頬を膨らませる。
「シュウヤ、それで結局、この人誰なの?」
「あ、えーと」
「そうねぇ。良くお世話してるから、お母さんみたいなもんね」
こう返され、ベルは目を丸くする。
「えっ!? じゃあ、この人がセイナさんなの?」
「違うっつの。変なコト言わないでくれよ、渾沌」
「あははは……。ごめんなさいね、今のは冗談。
その晴奈の、古い友達みたいなもんよ。秋也とも、結構古い付き合いなの」
「ちなみに前に言ってた『悪魔みたいな剣士』ってのはこの人だよ。すげー変だけどすげー強いんだ、マジで」
「へ、へぇー……」
目をパチパチとさせたベルを見て、渾沌は口元をにやっとさせる。
「あなた、もしかして秋也の恋人? 反応がそれっぽいけど」
「ふえっ!?」
「……ああもう、一々かっわいいわぁ」
渾沌はいきなり、ベルにぎゅっと抱き着いてきた。
「ひゃあ!? ちょ、な、何するのよ!?」
「んもう、持ち帰りたーい」
「ちょ、やめろって渾沌!」
秋也は慌てて引きはがそうとするが、渾沌はその前にベルから離れ、するりと逃れる。
「冗談よ、冗談。……っと、ところで秋也、あなたたちが乗ってきた車壊れちゃったし、帰る手段が無いでしょ?」
「……ああ、そうだな」
憮然としている秋也に、渾沌はピン、と人差し指を立てて見せた。
「私が『テレポート』使って、シルバーレイクまで送ってあげるわよ」
「え、いいのか!?」
「勿論。秋也のためならそれくらい、お安い御用よ」
そう言うなり渾沌は、ぼそっと呪文らしきものを唱えた。
秋也たちが瞬きを一回、二回するくらいの間に、一行は見覚えのある場所に戻っていた。
「……あれ?」
「ここって……」
「あたしん家、……の庭、だね」
一行がきょろきょろとしている間に、屋敷の中から人が現れた。
「ハーミット卿!」
「ああ、うん、……おかえり。いきなりだね」
流石の卿もこんなことは想像していなかったらしく、驚いている。
「もしかしてこれ、『テレ……』」「じゃ、私はこの辺で、ね」
そう言って渾沌はそそくさと去ろうとしたが、秋也がそれを止める。
「もう行くのか、渾沌?」
「ええ。アル、……じゃないか、アロイスを倒したこと、師匠に報告しないといけないから」
そう返したところで、卿が渾沌へ声をかけてきた。
「師匠? アル? ……コントンさんだっけ、ちょっといいかい?」
「ん?」
怪訝な声を返した渾沌に、ハーミット卿はこんな質問をぶつけてきた。
「その師匠と言うのは、タイカかな?」
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居合抜きの如く抜き払われた渾沌の剣から九個の青い光弾が発射され、アロイスに向かって飛んで行く。
「ウゴ……ッ!?」
対装甲ライフルの連射でさえ貫けなかったアロイスの体を、光弾は易々と貫通する。
「馬鹿ナ……! 私ガ……コンナ……簡単ニ……!?」
大きく穴の開いた箇所から、アロイスの体はゆっくりと後方に折れ、やがて真っ二つに破断した。
「20年前と同じだと思ってた? お生憎様、私はあれから桁違いに成長したのよ」
「……ダ、ダガ……」
上半身だけになったアロイスは、なおも口を開く。
「忘レタワケデハアルマイ……私ハ何度デモ蘇リ……ソシテマタ……ガー……新タナ御子ヲ立テルノダ……。
永遠ニ……イタチゴッコヲ……ガ、ガッ……続ケルツモリカ……オ前タチ『克』ハ……?」
「そのつもりよ」
渾沌は残っていたアロイスの頭部に、がつっ、と剣を突き立てた。
「あなたたちが諦めるまで、いくらでも続けるつもりよ。
私たちにはそれができるだけの力も、意志もあるもの」
次の瞬間、アロイスの体が爆発し、渾沌を巻き込む。
「ちょっ!?」
秋也は驚き、声を挙げるが、渾沌の笑い声が返ってくる。
「あはは……、何? 私がこの程度で死ぬと思ったの?」
もうもうと立つ土煙の中から、渾沌は平然と戻ってきた。
「はい、これで大丈夫」
渾沌は傷ついた秋也たち一行を、治療術で癒してくれた。
「すげえな……。本国の最新医療チームでもなかなかこうは……」
痕も残らず完治した足を撫でながら、サンクが感心した声を挙げる。渾沌はそれを、いつもの含み笑いで応じた。
「私を誰だと思ってるの? 『克』よ?」
「いつもながらアンタ、人間離れしてるぜ……」
「うふふふ」
と、秋也は彼女の声を聴いて、あることを思い出した。
「あれ? ……渾沌?」
「何かしら?」
「国境にいた?」
「さあ?」
「……もしかしてオレがあそこで撃たれた時、助けてくれた?」
「ええ。助けてあげたわよ」
「後、……もう一個聞くけどさ」
「どうぞ」
「昨日、民家で寝泊まりしてたオレたちの側にいた? その仮面、昨夜も見たような……」
「ええ。見守ってあげてたわよ」
「まったく……、呆れるほどアンタ、すげーよなぁ」
「うふふっ」
そのやり取りに、同様に治療を受けたベルが頬を膨らませる。
「シュウヤ、それで結局、この人誰なの?」
「あ、えーと」
「そうねぇ。良くお世話してるから、お母さんみたいなもんね」
こう返され、ベルは目を丸くする。
「えっ!? じゃあ、この人がセイナさんなの?」
「違うっつの。変なコト言わないでくれよ、渾沌」
「あははは……。ごめんなさいね、今のは冗談。
その晴奈の、古い友達みたいなもんよ。秋也とも、結構古い付き合いなの」
「ちなみに前に言ってた『悪魔みたいな剣士』ってのはこの人だよ。すげー変だけどすげー強いんだ、マジで」
「へ、へぇー……」
目をパチパチとさせたベルを見て、渾沌は口元をにやっとさせる。
「あなた、もしかして秋也の恋人? 反応がそれっぽいけど」
「ふえっ!?」
「……ああもう、一々かっわいいわぁ」
渾沌はいきなり、ベルにぎゅっと抱き着いてきた。
「ひゃあ!? ちょ、な、何するのよ!?」
「んもう、持ち帰りたーい」
「ちょ、やめろって渾沌!」
秋也は慌てて引きはがそうとするが、渾沌はその前にベルから離れ、するりと逃れる。
「冗談よ、冗談。……っと、ところで秋也、あなたたちが乗ってきた車壊れちゃったし、帰る手段が無いでしょ?」
「……ああ、そうだな」
憮然としている秋也に、渾沌はピン、と人差し指を立てて見せた。
「私が『テレポート』使って、シルバーレイクまで送ってあげるわよ」
「え、いいのか!?」
「勿論。秋也のためならそれくらい、お安い御用よ」
そう言うなり渾沌は、ぼそっと呪文らしきものを唱えた。
秋也たちが瞬きを一回、二回するくらいの間に、一行は見覚えのある場所に戻っていた。
「……あれ?」
「ここって……」
「あたしん家、……の庭、だね」
一行がきょろきょろとしている間に、屋敷の中から人が現れた。
「ハーミット卿!」
「ああ、うん、……おかえり。いきなりだね」
流石の卿もこんなことは想像していなかったらしく、驚いている。
「もしかしてこれ、『テレ……』」「じゃ、私はこの辺で、ね」
そう言って渾沌はそそくさと去ろうとしたが、秋也がそれを止める。
「もう行くのか、渾沌?」
「ええ。アル、……じゃないか、アロイスを倒したこと、師匠に報告しないといけないから」
そう返したところで、卿が渾沌へ声をかけてきた。
「師匠? アル? ……コントンさんだっけ、ちょっといいかい?」
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