「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第3部
白猫夢・黒々抄 4
麒麟を巡る話、第145話。
2人の復活。
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4.
時代は進み――双月暦520年5月。
「……う……」
随分長い間眠っていたような感覚を引きずりながらも、ランドは目を覚ました。
「あれ……ここは……?」
重い手足を何とか動かし、ランドは辺りの様子を確かめる。
しかし眼鏡が無く、しかも真っ暗なため、何がどうなっているのかさっぱり分からない。
「……思い出してきた……ような。
確か僕は、タイカと話してて、で、タイカが契約が何とか言って……」
思い出そうとするが頭痛がひどく、どうしても考えがまとまらない。
「……く……」
と、どこかから声が聞こえてくる。
「……?」
暗い室内を手探りでうろつき、どうにか声のする場所を探り当てる。
「……イール?」
偶然触った猫耳と、彼女のうめく声とで、ランドはそれがイールだと分かる。
「しっかりして、イール。起きてくれ」
「……あ……え……?」
何かをしゃべろうとしたようだが、まったく言葉にならない。
ランドは彼女の手を触り、異様に冷えていることに気付いた。
「うわっ、まるで氷じゃないか! ……ここにいたら駄目だ、僕も寒い」
ランドはイールを引きずりながら、出口が無いか探る。
やがてそれらしいものを見付け、どうにか坑道のようなところに脱出した。
「……ん?」
と、ミシミシと何かが鳴っているのに気付く。
「え、……これって、……もしかして」
その恐ろしげな音が周囲のあちこちから聞こえてきたため、ランドは大急ぎでイールを背負い、坑道を走る。
「はあっ、はあっ、……ひぃ」
自分でも驚くほどの力が出たが、それでも元々非力なランドである。
坑道を何とか抜けたところで力尽き、そして倒れ込むと同時に、坑道のはるか奥でずん……、と重い音が聞こえてきた。
それから1週間――ランドの方は周囲の木の実や水を採ることで、何とか体力を回復させたが、イールは依然として昏睡状態にあった。
(こんなにやつれて……。一体何があったんだ?)
着ていた服のポケットに入れられていた黒眼鏡――デザインからすると元々自分がかけていた眼鏡のようだったが、何故かレンズが真っ黒なものに換えられている――をかけ、自分たちが何故この状況に置かれているか考える。
(多分、……だけどあの部屋はタイカが造ったものなんだろう。で、僕と、何故かイールも、そこに封印みたいなことを、されてたんだろうな。
……それだけだ。それ以上は分からない)
しかし、考えようにも判断材料が乏しく、ランドはぼんやりとイールの蒼ざめた顔を見ていることしかできない。
(ここら辺の食べ物は粗方採り尽くしちゃったし、水だけじゃ衰弱する一方だ。どうにか近くの街に行って、イールを看てもらわないと)
そうは思ったものの、自分の力だけでは到底、イールを運ぶことなどできない。打開策が見出せず、ランドは途方に暮れていた。
と――どこかから、人の声が聞こえてくる。
「……だ、……か」
「……な、なぁんだ」
(人……!?)
ランドは思わず立ち上がり、そちらに駆け出した。
元々畑があったらしいところに、男女5名が固まっているのが見える。そのうち2人の女性は、数日前に気紛れでランドが体を洗ってやった狐を、楽しそうに撫でている。
「この*、*****ですねぇ」
「そうだな。まったく、****しない」
彼らが話している言葉を聞き、ランドは戸惑った。
(あれ……? 何て言ってるんだ? 中央語や北方語に似てる感じだけど、どっちでも無さそうだし)
「……良く***、体を****があるな?
***こんなところに、この*を*****ような**がいるのか?」
どうやら狐について何か言っているようだが、その語彙の半分以上が何を示し、何を伝えているのかが分からない。
まるで別世界に来たような感覚を覚え、ランドは逡巡していたが、それでもこの機会を逃がせば、イールの命に関わってくる。
ランドは意を決して、彼らに話しかけた。
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時代は進み――双月暦520年5月。
「……う……」
随分長い間眠っていたような感覚を引きずりながらも、ランドは目を覚ました。
「あれ……ここは……?」
重い手足を何とか動かし、ランドは辺りの様子を確かめる。
しかし眼鏡が無く、しかも真っ暗なため、何がどうなっているのかさっぱり分からない。
「……思い出してきた……ような。
確か僕は、タイカと話してて、で、タイカが契約が何とか言って……」
思い出そうとするが頭痛がひどく、どうしても考えがまとまらない。
「……く……」
と、どこかから声が聞こえてくる。
「……?」
暗い室内を手探りでうろつき、どうにか声のする場所を探り当てる。
「……イール?」
偶然触った猫耳と、彼女のうめく声とで、ランドはそれがイールだと分かる。
「しっかりして、イール。起きてくれ」
「……あ……え……?」
何かをしゃべろうとしたようだが、まったく言葉にならない。
ランドは彼女の手を触り、異様に冷えていることに気付いた。
「うわっ、まるで氷じゃないか! ……ここにいたら駄目だ、僕も寒い」
ランドはイールを引きずりながら、出口が無いか探る。
やがてそれらしいものを見付け、どうにか坑道のようなところに脱出した。
「……ん?」
と、ミシミシと何かが鳴っているのに気付く。
「え、……これって、……もしかして」
その恐ろしげな音が周囲のあちこちから聞こえてきたため、ランドは大急ぎでイールを背負い、坑道を走る。
「はあっ、はあっ、……ひぃ」
自分でも驚くほどの力が出たが、それでも元々非力なランドである。
坑道を何とか抜けたところで力尽き、そして倒れ込むと同時に、坑道のはるか奥でずん……、と重い音が聞こえてきた。
それから1週間――ランドの方は周囲の木の実や水を採ることで、何とか体力を回復させたが、イールは依然として昏睡状態にあった。
(こんなにやつれて……。一体何があったんだ?)
着ていた服のポケットに入れられていた黒眼鏡――デザインからすると元々自分がかけていた眼鏡のようだったが、何故かレンズが真っ黒なものに換えられている――をかけ、自分たちが何故この状況に置かれているか考える。
(多分、……だけどあの部屋はタイカが造ったものなんだろう。で、僕と、何故かイールも、そこに封印みたいなことを、されてたんだろうな。
……それだけだ。それ以上は分からない)
しかし、考えようにも判断材料が乏しく、ランドはぼんやりとイールの蒼ざめた顔を見ていることしかできない。
(ここら辺の食べ物は粗方採り尽くしちゃったし、水だけじゃ衰弱する一方だ。どうにか近くの街に行って、イールを看てもらわないと)
そうは思ったものの、自分の力だけでは到底、イールを運ぶことなどできない。打開策が見出せず、ランドは途方に暮れていた。
と――どこかから、人の声が聞こえてくる。
「……だ、……か」
「……な、なぁんだ」
(人……!?)
ランドは思わず立ち上がり、そちらに駆け出した。
元々畑があったらしいところに、男女5名が固まっているのが見える。そのうち2人の女性は、数日前に気紛れでランドが体を洗ってやった狐を、楽しそうに撫でている。
「この*、*****ですねぇ」
「そうだな。まったく、****しない」
彼らが話している言葉を聞き、ランドは戸惑った。
(あれ……? 何て言ってるんだ? 中央語や北方語に似てる感じだけど、どっちでも無さそうだし)
「……良く***、体を****があるな?
***こんなところに、この*を*****ような**がいるのか?」
どうやら狐について何か言っているようだが、その語彙の半分以上が何を示し、何を伝えているのかが分からない。
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