「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第3部
白猫夢・清算抄 2
麒麟を巡る話、第152話。
あわてんこ。
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2.
玄関の前に立つ一行を見て、昂子は声を挙げる。
「あれ、秋也? 久しぶりじゃん。……と、渾沌」
「取って付けないでよ。元気してた?」
「そ、ソレなりに、ね。……えっと、他の人は誰?」
昂子に尋ねられ、秋也は皆を紹介した。
「こっちのエルフさんはネロ・ハーミット卿。西方のとある国の大臣さんだ。その後ろのでっかい人が、……あの克大火さん」
「へ? ……またまたぁ」
冗談と取られたらしく、昂子は手を振って笑う。
「マジなんだって」
「んなワケないじゃん。天狐ちゃん言ってるもん、『アイツがこんなトコに来るワケねーよ、天地が引っくり返ってもあり得ねー』って」
「……そうか」
昂子の言葉に、大火は元から細い目をさらに細めた。
「まあいい、そう紹介しろ」
「なんでアンタに命令……」「い、いいから! そう言っとけって!」
反抗的な態度を執りかけた昂子に、秋也が慌てて口添えする。
「……まあ、言えって言うなら言うけどさ、アンタ天狐ちゃんに雷ぶつけられてもあたし、知らないわよ。
んで、アンタの後ろにいる『猫』は?」
「ああ、……えーと、ベル・ハーミットって言って」「シュウヤの彼女だよっ」「ちょ」
「カノジョぉ?」
昂子は目を丸くし、まじまじとベルを見つめる。
「……へーぇ、やるじゃん秋也」
「あ、はは……」
「んで、そんなにゾロゾロ揃って何か用なの?」
「ああ。テンコちゃんに用事があるんだ」
ハーミット卿は小さくお辞儀をし、面会を申し出た。
「彼女とタイカと僕とで、ちょっと話をしにね。取り次いでもらえるかな?」
「……まあ、……ホントに言うわよ? ホントにいいのね?」
「ああ」
昂子は嫌そうな顔をして、そのまま奥へ戻って行った。余程、天狐の機嫌を損ねるのを嫌っているようだ。
そしてやはり、昂子の想像していた通りに――。
「……あ? ふざけてんのか?」
「ふざけてないって! あっちが言えって言うから言ったんだもん!」
「……よーし、見てやろうじゃねーか」
天狐の苛立った声が、奥から響いてきた。
「ドコのどいつだ、大火なんてふざけた名前を名乗るアホンダラはよぉ!?」
「俺だ」
大火が応じる。
「……」
大火を目にした瞬間、怒りに満ちていた天狐の顔から、ざあっと血の気が引く。
「……」
天狐は何も言わず、後ろ歩きに奥へと戻って行った。
「……」
一行はその様子を無言で眺めていたが――。
「おまっ、ちょ、マジふざけんだにゃっておえいわえあひゃああああ」
やがて天狐の、わけのわからない悲鳴が聞こえてきた。
「……ぷ、く、くく」
これを聞いた渾沌は、口元を押さえて笑いをこらえている。
「あ、姉さん落ち着いてっ!?」
鈴林の慌てる声がする。
「お、おちおちっち、おちついららわらやらわられっかってうわああああ」
「姉さんホラ、チョコ、チョコあるよ!?」
昂子がなだめようとしているらしい。
一方、秋也とベルも互いの震える肩を無言でバンバンと叩き合い、笑いをこらえようとする。
「ばかにゃろチョコなんかでおみゃえそんなおちちゅけってあまっ」
と、天狐のわめき声が止まる。
「……むぐ、……んぐ、……うん」
「大丈夫? も一個いる?」
「うん」
「お茶いるっ?」
「うん」
「……大丈夫?」
「……お、おし。……付いてこい、お前ら」
一瞬静まり返った後、天狐が鈴林と昂子とを伴って、再び玄関に現れた。
「な、何の用だ?」
と、渾沌が口元を押さえ、肩を震わせながらこう告げる。
「きっ、……ぷぷっ、聞こえてたわよ」
「……な、なん、の、よう、だ」
顔を真っ赤にし、今にも泣きそうな天狐を見て、渾沌はたまらず噴き出した。
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あわてんこ。
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玄関の前に立つ一行を見て、昂子は声を挙げる。
「あれ、秋也? 久しぶりじゃん。……と、渾沌」
「取って付けないでよ。元気してた?」
「そ、ソレなりに、ね。……えっと、他の人は誰?」
昂子に尋ねられ、秋也は皆を紹介した。
「こっちのエルフさんはネロ・ハーミット卿。西方のとある国の大臣さんだ。その後ろのでっかい人が、……あの克大火さん」
「へ? ……またまたぁ」
冗談と取られたらしく、昂子は手を振って笑う。
「マジなんだって」
「んなワケないじゃん。天狐ちゃん言ってるもん、『アイツがこんなトコに来るワケねーよ、天地が引っくり返ってもあり得ねー』って」
「……そうか」
昂子の言葉に、大火は元から細い目をさらに細めた。
「まあいい、そう紹介しろ」
「なんでアンタに命令……」「い、いいから! そう言っとけって!」
反抗的な態度を執りかけた昂子に、秋也が慌てて口添えする。
「……まあ、言えって言うなら言うけどさ、アンタ天狐ちゃんに雷ぶつけられてもあたし、知らないわよ。
んで、アンタの後ろにいる『猫』は?」
「ああ、……えーと、ベル・ハーミットって言って」「シュウヤの彼女だよっ」「ちょ」
「カノジョぉ?」
昂子は目を丸くし、まじまじとベルを見つめる。
「……へーぇ、やるじゃん秋也」
「あ、はは……」
「んで、そんなにゾロゾロ揃って何か用なの?」
「ああ。テンコちゃんに用事があるんだ」
ハーミット卿は小さくお辞儀をし、面会を申し出た。
「彼女とタイカと僕とで、ちょっと話をしにね。取り次いでもらえるかな?」
「……まあ、……ホントに言うわよ? ホントにいいのね?」
「ああ」
昂子は嫌そうな顔をして、そのまま奥へ戻って行った。余程、天狐の機嫌を損ねるのを嫌っているようだ。
そしてやはり、昂子の想像していた通りに――。
「……あ? ふざけてんのか?」
「ふざけてないって! あっちが言えって言うから言ったんだもん!」
「……よーし、見てやろうじゃねーか」
天狐の苛立った声が、奥から響いてきた。
「ドコのどいつだ、大火なんてふざけた名前を名乗るアホンダラはよぉ!?」
「俺だ」
大火が応じる。
「……」
大火を目にした瞬間、怒りに満ちていた天狐の顔から、ざあっと血の気が引く。
「……」
天狐は何も言わず、後ろ歩きに奥へと戻って行った。
「……」
一行はその様子を無言で眺めていたが――。
「おまっ、ちょ、マジふざけんだにゃっておえいわえあひゃああああ」
やがて天狐の、わけのわからない悲鳴が聞こえてきた。
「……ぷ、く、くく」
これを聞いた渾沌は、口元を押さえて笑いをこらえている。
「あ、姉さん落ち着いてっ!?」
鈴林の慌てる声がする。
「お、おちおちっち、おちついららわらやらわられっかってうわああああ」
「姉さんホラ、チョコ、チョコあるよ!?」
昂子がなだめようとしているらしい。
一方、秋也とベルも互いの震える肩を無言でバンバンと叩き合い、笑いをこらえようとする。
「ばかにゃろチョコなんかでおみゃえそんなおちちゅけってあまっ」
と、天狐のわめき声が止まる。
「……むぐ、……んぐ、……うん」
「大丈夫? も一個いる?」
「うん」
「お茶いるっ?」
「うん」
「……大丈夫?」
「……お、おし。……付いてこい、お前ら」
一瞬静まり返った後、天狐が鈴林と昂子とを伴って、再び玄関に現れた。
「な、何の用だ?」
と、渾沌が口元を押さえ、肩を震わせながらこう告げる。
「きっ、……ぷぷっ、聞こえてたわよ」
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顔を真っ赤にし、今にも泣きそうな天狐を見て、渾沌はたまらず噴き出した。
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