「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第3部
白猫夢・清算抄 3
麒麟を巡る話、第153話。
三人の再会。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「……」「……」
場所を応接間に移し、改めて大火と天狐が対面した。
しかしどちらとも一言も発さず、居心地悪そうに相手を見たり、窓に目をやったりと、そわそわしている。
「埒が明かない」
ハーミット卿はため息をつき、二人に声をかける。
「タイカ、テンコちゃん。とりあえず……、そうだな、僕は知ってるけど、周りは事情を良く知らない人もいるから、僕の方から説明していっていいかな?」
「ああ」
「……勝手にしろ」
両方ともハーミット卿に目を合わさず、そう返す。
「じゃあ、二人の紹介をさせてもらうよ。
黒い方がタイカ・カツミ。金髪の方がテンコ・カツミ。名前から想像は付くと思うけど、二人は非常に関係が深い」
「誰でも知ってるわよ、そんなの」
と、昂子が口を挟む。
「克大火の七番弟子でしょ、天狐ちゃん。んなコト一々言われなくても分かるわよ」
「ところが、二人の関係はそれだけじゃないんだ」
ハーミット卿は昂子に、にこっと微笑んでみせる。
「どゆコト?」
「父娘なんだ」
「誰が?」
「タイカとテンコちゃんが」
「またまたぁ」
これを聞いた昂子は、フンと鼻を鳴らす。
「嘘に決まってんじゃない、そんなの」
「何故嘘と?」
「だって天狐ちゃんがあんだけ毛嫌いしてて、ソレで父娘なんて」「……ううん」
と、昂子の背後にいた鈴林が口を開く。
「本当の話だよっ。本当に姉さんは、お師匠の娘さんなのっ」
「……へ?」
それを継ぐ形で、天狐は渋々と言った顔でこう続ける。
「その通りだ。正真正銘、克大火はオレの師匠であると同時に、オレの親父だ」
「……うっそぉ」
「嘘なんかつくかよ。ソレもこんな話で」
天狐は昂子に向き直り、ぺろっと舌を出す。
「そりゃ嘘だって言いたいが、真実は真実だ。オレは血のつながった娘なんだよ、師匠のな」
「……へ、へぇ」
昂子は目を丸くしている。あまりにも予想外の話を聞かされ、呆然としているらしい。
そしてそれは秋也をはじめとして、そこにいたほとんどの人間にとっても同様だった。
「マジで?」
「みたいだね」
小声で驚きを口に出している秋也とベルを、渾沌が二人の後ろからちょん、と指で突いてたしなめる。
「静かになさい。まだ話は始まってもいないんだから」
「あ、ああ」
「そだね」
場が静まったところで、ハーミット卿が話を続ける。
「そう、まだ本題を切り出してない。その本題が何かって言うとね」
ハーミット卿は天狐に、先程と同様にっこりと笑いかけた。
「君のお父さん、こういう話を切り出しにくいらしいから僕が代わりに言うけど、仲直りしたいんだってさ」
「えっ」
そう言われ、天狐はきょとんとする。
「オレと?」
「うん、君と」
「なんで?」
「なんでって、娘に嫌われてヘラヘラしてる親はいないさ。それ以上の理由は無い」
「なワケないだろ」
天狐は納得行かないらしく、きつい口調になる。
「コイツにそんな情があるかよ! コイツは弟子の、娘のオレをブン殴って封印しやがった張本人だぞ! そんな人間らしい動機なんか、ドコにあるってんだ!」
「テンコちゃん。その話はさ、20年前にもしたじゃないか」
そう返され、天狐はぎょっとした顔になる。
「なんだって?」
「僕の顔を見忘れたかい?」
ハーミット卿は黒眼鏡を外し、青と黒の両目を天狐に見せる。
「お、お前!? まさか!?」
「覚えててくれたかな? そう、20年前にあの話をした、ネロ・ハーミットさ」
「そりゃ、……覚えてるさ。
その目は克一門にしか与えられないはずの目だから、な」
「じゃあそのよしみだ。もう一度、僕の話を聞いてくれるかな?」
「……いいだろう。オレを納得させてみろよ」
そう返した天狐に、ハーミット卿はやんわりとした口調で話し始めた。
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「……」「……」
場所を応接間に移し、改めて大火と天狐が対面した。
しかしどちらとも一言も発さず、居心地悪そうに相手を見たり、窓に目をやったりと、そわそわしている。
「埒が明かない」
ハーミット卿はため息をつき、二人に声をかける。
「タイカ、テンコちゃん。とりあえず……、そうだな、僕は知ってるけど、周りは事情を良く知らない人もいるから、僕の方から説明していっていいかな?」
「ああ」
「……勝手にしろ」
両方ともハーミット卿に目を合わさず、そう返す。
「じゃあ、二人の紹介をさせてもらうよ。
黒い方がタイカ・カツミ。金髪の方がテンコ・カツミ。名前から想像は付くと思うけど、二人は非常に関係が深い」
「誰でも知ってるわよ、そんなの」
と、昂子が口を挟む。
「克大火の七番弟子でしょ、天狐ちゃん。んなコト一々言われなくても分かるわよ」
「ところが、二人の関係はそれだけじゃないんだ」
ハーミット卿は昂子に、にこっと微笑んでみせる。
「どゆコト?」
「父娘なんだ」
「誰が?」
「タイカとテンコちゃんが」
「またまたぁ」
これを聞いた昂子は、フンと鼻を鳴らす。
「嘘に決まってんじゃない、そんなの」
「何故嘘と?」
「だって天狐ちゃんがあんだけ毛嫌いしてて、ソレで父娘なんて」「……ううん」
と、昂子の背後にいた鈴林が口を開く。
「本当の話だよっ。本当に姉さんは、お師匠の娘さんなのっ」
「……へ?」
それを継ぐ形で、天狐は渋々と言った顔でこう続ける。
「その通りだ。正真正銘、克大火はオレの師匠であると同時に、オレの親父だ」
「……うっそぉ」
「嘘なんかつくかよ。ソレもこんな話で」
天狐は昂子に向き直り、ぺろっと舌を出す。
「そりゃ嘘だって言いたいが、真実は真実だ。オレは血のつながった娘なんだよ、師匠のな」
「……へ、へぇ」
昂子は目を丸くしている。あまりにも予想外の話を聞かされ、呆然としているらしい。
そしてそれは秋也をはじめとして、そこにいたほとんどの人間にとっても同様だった。
「マジで?」
「みたいだね」
小声で驚きを口に出している秋也とベルを、渾沌が二人の後ろからちょん、と指で突いてたしなめる。
「静かになさい。まだ話は始まってもいないんだから」
「あ、ああ」
「そだね」
場が静まったところで、ハーミット卿が話を続ける。
「そう、まだ本題を切り出してない。その本題が何かって言うとね」
ハーミット卿は天狐に、先程と同様にっこりと笑いかけた。
「君のお父さん、こういう話を切り出しにくいらしいから僕が代わりに言うけど、仲直りしたいんだってさ」
「えっ」
そう言われ、天狐はきょとんとする。
「オレと?」
「うん、君と」
「なんで?」
「なんでって、娘に嫌われてヘラヘラしてる親はいないさ。それ以上の理由は無い」
「なワケないだろ」
天狐は納得行かないらしく、きつい口調になる。
「コイツにそんな情があるかよ! コイツは弟子の、娘のオレをブン殴って封印しやがった張本人だぞ! そんな人間らしい動機なんか、ドコにあるってんだ!」
「テンコちゃん。その話はさ、20年前にもしたじゃないか」
そう返され、天狐はぎょっとした顔になる。
「なんだって?」
「僕の顔を見忘れたかい?」
ハーミット卿は黒眼鏡を外し、青と黒の両目を天狐に見せる。
「お、お前!? まさか!?」
「覚えててくれたかな? そう、20年前にあの話をした、ネロ・ハーミットさ」
「そりゃ、……覚えてるさ。
その目は克一門にしか与えられないはずの目だから、な」
「じゃあそのよしみだ。もう一度、僕の話を聞いてくれるかな?」
「……いいだろう。オレを納得させてみろよ」
そう返した天狐に、ハーミット卿はやんわりとした口調で話し始めた。
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