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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第4部

    白猫夢・剣宴抄 3

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    麒麟を巡る話、第172話。
    剣士たちの宴、始まる。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     事前に明奈とプレアは試合形式と出場者の選出方法を、両陣営に伝えていた。
     まず前述の通り、試合形式は5対5の勝ち抜き団体戦。先鋒対先鋒から進め、三本勝負の二本先取で勝利。負けた先鋒は次鋒に交代し、同様に負けた側が中堅、副将、大将と交代していき、先に相手側の大将を倒した方が勝利となる。
     そして選出される者については、門下生2名(先鋒・次鋒)と錬士を2名(中堅・副将)、そして範士を1名(大将)ずつとした。これは先鋒や次鋒が大将を倒してしまうような、一方的な試合になってしまうのを避けるためである。
     そして事前に剣士内で集計した人気投票により、出場者が決定された。

     黄派焔流からは、以下の5名。
      先鋒:鍋谷輿生(猫獣人、男性)
      次鋒:黄朱明(猫獣人、男性)
      中堅:紀伊見奈々子(狐獣人、女性)
      副将:水越兵治(長耳、男性)
      大将:清滝敬史(短耳、男性)

     そして柊派からは、以下の5名が選出された。
      先鋒:楠瑛吉(狐獣人、男性)
      次鋒:柊晶奈(長耳、女性)
      中堅:関戸侍郎(狐獣人、男性)
      副将:笠尾松寿(短耳、男性)
      大将:藤川霙子(短耳、女性)

    (ちなみに人気投票において、晴奈と雪乃は対象外となっていた。『選出してしまうと、後でお姉様からものすごく文句を言われそうだから』、……と明奈が判断したためである)



     黄海の広場に作られた特設会場に、この10名が揃う。
     そして司会役を買って出た明奈が彼らの前に立ち、マイクを片手に開会宣言した。
    「黄海市民の紳士、淑女の皆様。そして誇り高き焔流剣士の皆様。本日はこの催しにご参加いただき、誠にありがとうございます!
     さてさて、本日のこの交流戦、市民の皆様方にとってはその焔流の技と精神との結実、その鍛錬の成果を実際に目にするまたと無い機会であり、また、剣士の皆様方にとっては、それを発揮する絶好の機会でもあります!
     どうぞ、市民の皆様方はご声援を! どうぞ、剣士の皆様方はご奮戦を!」
     明奈にあおられる形で、街の者たちは盛り上がりを見せる。そして剣士たちも、多少の差はあるが、一様にワクワクとした様子を見せていた。
    「それでは両陣、先鋒のみ残してひとまずご退場ください! 早速第一回戦、始めさせていただきます!」
     明奈のアナウンスに従い、壇上に鍋谷と楠が残って、竹刀を提げて向かい合う。
    「両者、礼!」
     互いに礼をし、そこで互いに竹刀を構える。
    「……始めっ!」

     先に初太刀を放ったのは、鍋谷の方だった。
    「うりゃああッ!」
     ブン、と竹刀をうならせ、楠の頭を狙う。
     しかし楠はそれをくい、と身をひねってかわし、鍋谷の左に回り込む。
    「やあッ」
     パン、と乾いた小気味の良い音が響き、楠の竹刀が鍋谷の籠手を打った。
    「う……っ」
    「一本!」
     開始からたったの5秒足らずで勝ちを奪われ、鍋谷は絶句した。
    「強え……」
     ぽろ、とそんな弱気の言葉が漏れる。
     それ自体は聞こえはしなかったが、鍋谷の動揺を察した晴奈が、観客席から叱咤する。
    「うろたえるな、輿生! 冷静に構えて行け!」
    「はっ、はい!」
     一方、柊派では雪乃の二番弟子であり、大将でもある霙子が、楠をほめている。
    「やるじゃない、瑛くん! このまま勝っちゃいなさいよ!」
    「はい!」
     再び鍋谷と楠が構え、二戦目が始まる。
    「……ッ、これならどうだーッ!」
     鍋谷は全力で踏み込み、突きを放つ。
     しかしこれも楠はひょいとかわし、鍋谷の背後に回り込む。
    (あ、馬鹿……)
     無防備になった鍋谷を見て、晴奈も、黄派陣営も頭を抱える。
     鍋谷がきょろきょろと辺りを見回した次の瞬間、すぱん、とまたも鋭い音を立てて、その面が叩かれた。
    「勝負あり! 勝者、楠暎吉!」
    「うそだろ……」
     二度も瞬殺され、鍋谷はがくりと膝を着いた。
    「やったー! 万歳、暎くん!」
    「へへ……、ちょっと恥ずかしいです、母上。落ち着いて下さい」
     そして楠の勝利を一番喜んだのは――実は彼の母でもある、霙子だった。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    今回は先鋒でした。

    NoTitle 

    五人対五人の団体戦というとどうしても思い出してしまうのがあの人。

    「次鋒、レオパルドン行きます!」

    気の毒にもほどがある人だったなあ……(^^;)
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