「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第4部
白猫夢・龍息抄 5
麒麟を巡る話、第196話。
傲慢な剣。
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5.
関戸たちは三人がかりで笠尾に対峙する。
「1対3が卑怯とは言うまいな? 50対6で袋叩きにしようとした貴様らが」
「……ふん」
笠尾は刀を一振り抜き――。
「言うものか。……貴様らには俺一人で十分だからだ」
さらに脇差を抜き、二刀流の構えを見せた。
「二刀流……?」
「焔流の流儀では無い……、型だな」
「一刀流の焔流に、それぞれの手に刀を構えるような教えは無い。何のつもりだ、笠尾」
そう問われ、笠尾は両方の刀に火を灯しながら答える。
「これぞ俺が新たに編み出した流派、名付けて『笠尾派陰陽焔流』だ。以前の交流戦だかで披露したのは、まだ小手先の遊びよ。
さあ……、参られよ、お三方!」
挑発され、まず関戸が仕掛ける。
「来いってんなら行ってやらぁ! おらよッ!」
関戸も刀に火を灯し、勢い良く振り下ろす。
それを笠尾は左の脇差で受け、右の刀で反撃する。
「食らえ、『火閃』ッ!」
「……!」
関戸に迫り来る炎を、紀伊見が受け止めた。
「させるかッ! えやああッ!」
紀伊見の放った炎が笠尾のそれを巻き込み、彼方へと飛んで行く。
「ほう……、やはり相当の腕前だな」
「なめるなッ!」
今度は紀伊見が、笠尾と刃を交える。
「せやッ! りゃあッ! たあああッ!」
相手に攻撃させまいと畳みかけるが、それを見た水越が叫ぶ。
「駄目だ奈々! それは俺がはまった……」「もう遅いッ!」
突如、紀伊見の攻撃が止まる。
「う……っ」
恐らく、笠尾がわずかに身を引いたのだろう。
目一杯に踏み込み、打ち込んでいたため、紀伊見は手応えを失って体勢を崩す。
「その細い目、こじ開けてやるわあッ!」
「うあ……」
よろけた紀伊見の顔目がけて、笠尾が刀と脇差とを突き込む。
が――とっさに水越が紀伊見の襟を引き、体勢を立て直させる。その一方で、関戸が笠尾の頭めがけて蹴りを放っていた。
「奈々さんの綺麗な顔に何しようとしてんだコラああッ!」
「うぐ、お、っ、……ふぬうううッ!」
側頭部から蹴りを受けた笠尾の首が、一瞬曲がりかける。
だがその瞬間、笠尾の首の筋肉がぼこぼこと盛り上がってその衝撃を受け切り――。
「効く、……かああああッ!」
「うおおお!?」
そのまま首の力だけで、関戸を弾き飛ばした。
「……なんてぇ馬鹿力だ。一瞬、首回りが糸瓜みたいに膨らんだぞ」
「あ、ありがとう、兵治」
と、紀伊見が服の乱れを直しながら、水越に礼を言う。
「ああ、いや、……危なかったな。危うく目がいっこになるところだった」
「いててて……、大丈夫っスか、奈々さん」
関戸の方も、肩を押さえながら二人の側に戻る。
「あなたこそ……、大丈夫?」
「着地し損ねて肩を打った、けど、まあ、大丈夫。
……ってか、流石に言うだけあるな、あいつ」
「ああ。膂力(りょりょく:筋肉の力、強さ)だけじゃなく、確かに二刀流の捌き方も見事と言う他無い。手強いぜ……!」
「まるでゴム製の人形が刀を持って、ぐにぐに縒れながら暴れてるみたい。真っ向から行っても、弾かれるだけだわ」
「どうした、貴様ら」
笠尾は仁王立ちになり、三人を牽制する。
「俺を仕留めるのではなかったのか? うん?」
「チッ……」
「来ないのなら、こちらから行かせてもらうぞ」
笠尾はそう宣言し、ふたたび刀に火を灯す。
「先代家元が考案し、あの猫侍が小癪にも確立したとされる技があるな? 『炎剣舞』と言ったか……。
俺はその技を、さらに昇華させた! 食らえ、『爆炎剣舞』!」
笠尾は突如、回転し始めた。
「爆炎だと?」
「……って、まさか」
「来る!」
回転している間も刀の火は燃え上がったままであり、やがてその炎が大きくなる。
炎は際限なく膨れ上がり、辺り一帯に飛び散った。
「うわ……!」「わあッ!?」「きゃあっ!」
三人の悲鳴も、爆轟によってかき消された。
回転をやめたところで、笠尾の刀から火が消える。
「ふうっ、ふうっ、はあ……。
くくく、辺り一面焼け野原だ。見たか、木端共め! 我が『笠尾派陰陽焔流』こそ、後世に名を残す優れた剣術なのだ、うわははは……」「おい」
勝ち誇り、大笑いしようとした笠尾の背後から、またも関戸が飛び蹴りを放った。
「うごっ!?」
「だっせぇんだよ、一々ガキみたいな名前付けやがって。
だからこんな引っ掛けに騙されんだよ」
虚を突かれたためか、今度は威力を受け止め切れず、笠尾は膝を着く。
「全くだ。筋肉はあっても、感性がからきしだったな。
まさか俺たちが、本気で貴様にてこずるとでも?」
膝立ちになったところで、笠尾の顔面に水越の拳がめり込む。
「ふごあ……っ!」
「しかも勝ちを確信した瞬間に隙、丸出し。
……こんな愚か者に刀を振るのも馬鹿馬鹿しいですね」
「ああ」「全く同感」
「では、峰打ちで勘弁してあげましょうか」
目と鼻から血を噴き出し、悶絶する笠尾に、紀伊見が頭から刀を振り下ろす。
ごきん、と恐ろしく痛そうな音が、笠尾の脳天から響いた。
「ふが、は、が、っ……、な、なへは、なへいひへひぅ……」
「『何故生きている』、だと? 避けたからに決まってんじゃねえか」
「あんな子供だまし、誰でも避けれます」
「お前が黄先生の技を昇華? 劣化させた、の間違いだろ」
「……ほひゅ……」
何だかよく分からない音を鼻と口から漏らし、笠尾はその場に倒れた。
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傲慢な剣。
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関戸たちは三人がかりで笠尾に対峙する。
「1対3が卑怯とは言うまいな? 50対6で袋叩きにしようとした貴様らが」
「……ふん」
笠尾は刀を一振り抜き――。
「言うものか。……貴様らには俺一人で十分だからだ」
さらに脇差を抜き、二刀流の構えを見せた。
「二刀流……?」
「焔流の流儀では無い……、型だな」
「一刀流の焔流に、それぞれの手に刀を構えるような教えは無い。何のつもりだ、笠尾」
そう問われ、笠尾は両方の刀に火を灯しながら答える。
「これぞ俺が新たに編み出した流派、名付けて『笠尾派陰陽焔流』だ。以前の交流戦だかで披露したのは、まだ小手先の遊びよ。
さあ……、参られよ、お三方!」
挑発され、まず関戸が仕掛ける。
「来いってんなら行ってやらぁ! おらよッ!」
関戸も刀に火を灯し、勢い良く振り下ろす。
それを笠尾は左の脇差で受け、右の刀で反撃する。
「食らえ、『火閃』ッ!」
「……!」
関戸に迫り来る炎を、紀伊見が受け止めた。
「させるかッ! えやああッ!」
紀伊見の放った炎が笠尾のそれを巻き込み、彼方へと飛んで行く。
「ほう……、やはり相当の腕前だな」
「なめるなッ!」
今度は紀伊見が、笠尾と刃を交える。
「せやッ! りゃあッ! たあああッ!」
相手に攻撃させまいと畳みかけるが、それを見た水越が叫ぶ。
「駄目だ奈々! それは俺がはまった……」「もう遅いッ!」
突如、紀伊見の攻撃が止まる。
「う……っ」
恐らく、笠尾がわずかに身を引いたのだろう。
目一杯に踏み込み、打ち込んでいたため、紀伊見は手応えを失って体勢を崩す。
「その細い目、こじ開けてやるわあッ!」
「うあ……」
よろけた紀伊見の顔目がけて、笠尾が刀と脇差とを突き込む。
が――とっさに水越が紀伊見の襟を引き、体勢を立て直させる。その一方で、関戸が笠尾の頭めがけて蹴りを放っていた。
「奈々さんの綺麗な顔に何しようとしてんだコラああッ!」
「うぐ、お、っ、……ふぬうううッ!」
側頭部から蹴りを受けた笠尾の首が、一瞬曲がりかける。
だがその瞬間、笠尾の首の筋肉がぼこぼこと盛り上がってその衝撃を受け切り――。
「効く、……かああああッ!」
「うおおお!?」
そのまま首の力だけで、関戸を弾き飛ばした。
「……なんてぇ馬鹿力だ。一瞬、首回りが糸瓜みたいに膨らんだぞ」
「あ、ありがとう、兵治」
と、紀伊見が服の乱れを直しながら、水越に礼を言う。
「ああ、いや、……危なかったな。危うく目がいっこになるところだった」
「いててて……、大丈夫っスか、奈々さん」
関戸の方も、肩を押さえながら二人の側に戻る。
「あなたこそ……、大丈夫?」
「着地し損ねて肩を打った、けど、まあ、大丈夫。
……ってか、流石に言うだけあるな、あいつ」
「ああ。膂力(りょりょく:筋肉の力、強さ)だけじゃなく、確かに二刀流の捌き方も見事と言う他無い。手強いぜ……!」
「まるでゴム製の人形が刀を持って、ぐにぐに縒れながら暴れてるみたい。真っ向から行っても、弾かれるだけだわ」
「どうした、貴様ら」
笠尾は仁王立ちになり、三人を牽制する。
「俺を仕留めるのではなかったのか? うん?」
「チッ……」
「来ないのなら、こちらから行かせてもらうぞ」
笠尾はそう宣言し、ふたたび刀に火を灯す。
「先代家元が考案し、あの猫侍が小癪にも確立したとされる技があるな? 『炎剣舞』と言ったか……。
俺はその技を、さらに昇華させた! 食らえ、『爆炎剣舞』!」
笠尾は突如、回転し始めた。
「爆炎だと?」
「……って、まさか」
「来る!」
回転している間も刀の火は燃え上がったままであり、やがてその炎が大きくなる。
炎は際限なく膨れ上がり、辺り一帯に飛び散った。
「うわ……!」「わあッ!?」「きゃあっ!」
三人の悲鳴も、爆轟によってかき消された。
回転をやめたところで、笠尾の刀から火が消える。
「ふうっ、ふうっ、はあ……。
くくく、辺り一面焼け野原だ。見たか、木端共め! 我が『笠尾派陰陽焔流』こそ、後世に名を残す優れた剣術なのだ、うわははは……」「おい」
勝ち誇り、大笑いしようとした笠尾の背後から、またも関戸が飛び蹴りを放った。
「うごっ!?」
「だっせぇんだよ、一々ガキみたいな名前付けやがって。
だからこんな引っ掛けに騙されんだよ」
虚を突かれたためか、今度は威力を受け止め切れず、笠尾は膝を着く。
「全くだ。筋肉はあっても、感性がからきしだったな。
まさか俺たちが、本気で貴様にてこずるとでも?」
膝立ちになったところで、笠尾の顔面に水越の拳がめり込む。
「ふごあ……っ!」
「しかも勝ちを確信した瞬間に隙、丸出し。
……こんな愚か者に刀を振るのも馬鹿馬鹿しいですね」
「ああ」「全く同感」
「では、峰打ちで勘弁してあげましょうか」
目と鼻から血を噴き出し、悶絶する笠尾に、紀伊見が頭から刀を振り下ろす。
ごきん、と恐ろしく痛そうな音が、笠尾の脳天から響いた。
「ふが、は、が、っ……、な、なへは、なへいひへひぅ……」
「『何故生きている』、だと? 避けたからに決まってんじゃねえか」
「あんな子供だまし、誰でも避けれます」
「お前が黄先生の技を昇華? 劣化させた、の間違いだろ」
「……ほひゅ……」
何だかよく分からない音を鼻と口から漏らし、笠尾はその場に倒れた。
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本日2/25、一日のアクセス件数が1,000件を超えたことを、
このブログを開設して以来、初めて確認しました。
ものすごく集中して読みふけってくれた読者さんがいらっしゃるのか……、と想像し、喜んでおります。
もしくはあちこちからドッと集まって来て下さったのか。
いずれにしても、非常に喜ばしいことであり、深く感謝しております。
これからもよろしくお願いいたします(*´∀`)
本日2/25、一日のアクセス件数が1,000件を超えたことを、
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もしくはあちこちからドッと集まって来て下さったのか。
いずれにしても、非常に喜ばしいことであり、深く感謝しております。
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一日60アクセスあれば大成功といううちにしてみればうらやましい限り。
零細ブロガーはつらいなあとほほ(^_^;)
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- #1561 ポール・ブリッツ
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- 2013.02/26 08:46
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