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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN ~荒野の名探偵~ 3

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    ウエスタン小説、第3話。
    尋問。

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    3.
     ミヌーはサルーンから大通り、そして保安官のオフィスだった小屋らしきところへと連れて行かれた。
    「らしき」と言うのは、その小屋はあちこちに穴や血の跡が付いており、とても正義の番人が居てくれていそうな雰囲気ではなかったからだ。
     そして事実、保安官バッジを付けた人間は、そこには一人もいなかった。代わりにいたのは、ミヌーを連れてきた若者たちと同じようなマスクを被った、これもまた薄汚い若者たちだった。
    「そこに立て」
     若者の一人に命じられ、ミヌーは素直に、壁の前に立つ。その壁には他に男が4人、彼女と同様に並んで立っていた。
     一人は旅の牧師風の、40代半ばの痩せた男。一人はまだ20代前にも見える、みすぼらしい金髪。一人はどこか軟派そうな、赤毛の青年。そして残る一人は、フードを深く被った、いかにも行商人風の男だった。
    「これで全員か?」
    「ああ。この町に今いる余所者は、この5人で全部のはずだ」
    「間違い無いな?」
    「勿論だ」
     仲間内でボソボソと話し合った後、若者の一人が5人に向き直る。
    「単刀直入に聞くぞ。東部から来た探偵ってのは、誰だ?」
    「た、探偵?」
     牧師風の男が、おうむ返しに尋ねてくる。
    「そうだ。ちょっと込み入った事情がこの町に起こってな、それを詮索しようって奴が、東部からはるばるやって来ると聞いたんだ」
    「この町は俺たちのものだ。余所者にあれやこれや尋ねられたり、嗅ぎ回られたりするのは真っ平御免だ」
    「そこでつい最近、この町を訪れたって奴をこうして集めて、『穏便に』諭して帰してあげようってわけさ」
    「な、なら」
     と、牧師がほっとした顔をする。
    「私は見ての通り、旅の牧師だ。探偵なんかじゃない。無関係だよ、だから……」
    「だから?」
     若者の一人がじろ、と牧師をにらむ。
    「だ、だからここから出してくれると、その、穏便にだね、済むわけだ」
    「おいおい」
     また別の若者が、呆れた声を出す。
    「探偵ってのは変装もできるんだろ? あんたが牧師のふりをした探偵じゃないって証拠があるのか?」
    「えっ、い、いやいや、私は正真正銘……」
     うろたえる牧師に対し、若者たちは銃を付き付ける。
    「正真正銘の、何者だ? きちんと証拠、見せてくれよ、な?」
    「少しでも怪しいものがありゃ、……分かってるよな?」
    「ひ、ひえ……っ」
     怯える牧師の両腕を、若者たちががっちりと捕らえる。
    「身体検査だ! 真っ裸にしてやれ!」
    「おうっ!」
     若者たちは牧師の衣服を剥ぎ取り、引き裂き、不審な点がないか確かめる。
    「……うーん?」
    「普通の十字架に、ただの聖書」
    「僧服の中にも、変なもんは無い。強いて言えばこのちっちぇえ拳銃くらいか」
    「ご、護身用だ。旅の途中で襲われることもあるし……」
     牧師の弁解に、若者たちは顔を見合わせる。
    「……よし、お前は白だ。出て行っていい」
    「そ、そうか。……あの、服は」
     ボロボロに引きちぎられた服をつまみ、牧師は悲しそうな声を出す。
    「お前にもう用は無い。さっさとどこへでも行け」
    「い、いや、服を弁償……」
    「あ? 何か言ったか?」
    「い、いえ、……では」
     牧師はボタボタと涙を流しながら、何とか無事に残った十字架と聖書を手に、下着姿でオフィスをとぼとぼと出て行った。
    「さーて、次は……」「ちょっと」
     と、この成り行きを眺めていたミヌーが、彼らに声をかけた。
    「ん? なんだ?」
    「まさかお前が探偵だって言うんじゃないだろうな?」
    「違うわ。探偵なんかじゃない。それとは別の話。
     あんたたち、残ったあたしたち4人の服も、今みたいにむしり取るつもりかしら?」
    「ああ、そうだ。疑いが晴れるまで、きっちり調べさせてもらうぜ」
    「嫌だと言ったら?」
    「無理矢理やるまでだ」
     そう返し、両手をにぎにぎと動かしながらにじり寄ってくる若者に――ミヌーはがつっ、と足を振り上げた。
    「……お、ひょ、……ぉう」
     股間を蹴り上げられ、若者は顔を土気色に変えて倒れ込む。
    「なっ……!?」
    「身体検査されるなんて聞いてないし、お断りよ。
     失礼させてもらうわ」
     ミヌーはそう言って、腰に提げていた拳銃を取り出した。
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