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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN ~荒野の名探偵~ 4

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    ウエスタン小説、第4話。
    修羅場くぐり。

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    4.
     若者たちは拳銃を見た途端、顔色を変える。
    「てめえ……」
     そして一様に、彼らも拳銃を抜く。
    「まさかてめえが、……か?」
    「違うってば。違うけど、無理矢理脱がされて裸にされるのなんて、嫌だもの。
     お金だって、1セントもくれそうにないしね」
    「ふざけんな、勝手なことばかりべちゃくちゃわめきやがって……!」
     若者の一人が拳銃を構え、ミヌーに狙いを定める。
    「それはあんたたちでしょ? ……ねえ、一言だけ忠告しておくけど」
     ミヌーも拳銃を構えつつ、こう続けた。
    「あたしに物騒なものを向けて、無事でいられた奴はいないわよ」
    「抜かせッ!」
     若者はそのまま、拳銃の引き金を絞る。
     が――次の瞬間、若者の拳銃はぼごん、と鈍い音を立てて腔発する。当然、銃を握りしめていた若者の右手も無事では済まず、親指と人差し指が細切れになって吹き飛んだ。
    「う、……あ、あが、ぎゃああッ!?」
    「だから言ったじゃない」
     若者が引き金を引くその瞬間に、ミヌーがその銃口に向かって銃弾を撃ち込んだのだ。
    「さあ、どうするの? このままガンファイト? それとも素直に出て行かせてもらえるのかしら?」
     残った若者たちは、床をのたうち回り悶絶する仲間と、拳銃を向けるミヌーとを交互に見比べるが、それ以上の行動をしない。どうやら怒りと恐れが拮抗し、攻撃をためらっているらしかった。
     それを見抜いたミヌーは、続けざまに弾をバラ撒こうと構える。
     と――ボン、と言う音と共に突然、部屋中に白い煙が上がった。
    「なっ……!?」
    「なんだ、こりゃ!?」
    「げっほ、げほっ」
     突然の煙幕に、ミヌーも困惑する。
    「一体なに、これ……?」「おい、お嬢さん」
     これも突然、彼女の背後から声がかけられた。
    「逃げるが勝ちってヤツさ、一緒に来いよ」
    「え? ……ええ、そうね」
     一瞬戸惑ったが、言う通りである。
     ミヌーは声に従い、そのまま外へと逃げ出した。

    「げほっ、ごほっ、……くっそ」
     煙が薄まってきた頃には既に、連れてきた余所者たちの姿は無かった。
    「逃げられた、……か」
     若者たちは、一斉に顔を蒼ざめさせる。
    「このままじゃ……、まずいぜ」
    「これが知れたら、『ウルフ』の兄貴に……」
     と、部屋の奥から落ち着いた、これも若い男の声が聞こえてくる。
    「ああ、まずいな。非常にまずい」
    「……う……!」
     若者たちは声のした方を振り返り、そして一様に敬礼した。
    「……うん?」
     声をかけてきた男は、いまだ右手を押さえ倒れたままの若者に目を留める。
    「おいおい、大丈夫か?」
    「いてえ……いてえよ……」
    「そりゃ気の毒だな」
     それを受け――「ウルフ」はそのぐちゃぐちゃになった右手を思い切り、踏みつけた。
    「あがっ、あっ、あうあああー……ッ!?」
    「この能無しが」
     グリグリと踏みつけたまま、「ウルフ」は仲間を叱咤する。
    「あんなアバズレの挑発にひょいひょいと乗って、その隙に全員逃がしちまいやがって。
     使えねえなぁ、お前」
     右手を踏みつけたまま、「ウルフ」は拳銃を抜いて彼の額に銃口を当てる。
    「使えない奴は、さっさと処分しないとなぁ」
    「や、やめ……」
     パン、パンと二度銃声が響き、若者は動かなくなった。
    「……っ」
     真っ青な顔を並べる手下たちに、「ウルフ」はこう続けた。
    「俺が何故、こいつを殺したか分かるな?」
    「……」
    「理由は単純だ。使えない。その上、役にも立たない。
     走りもせず人も乗せず、餌ばかり食うだけの駄馬を飼う農場主はいねえだろ? 違うか?」
    「は……はい」
    「仰る通りです」
    「だろう? じゃあお前たちは何だ?」
    「ウルフ」は拳銃を、残る若者たちに向けた。
    「役に立つのか? 立たねえのか? どっちなんだ?
     立つって言うんならとっとと探偵を探して、捕まえるか殺すかして来いよ」
    「は、……はいっ!」
     若者たちは大慌てで、外へと駆け出そうとする。
    「あー、っと」
     と、それを「ウルフ」が止める。
    「その前に、だ。こいつをきちんと片付けとけ」
     そう言ってから、「ウルフ」はようやく踏みつけていた右手から、足を離した。
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