「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第5部
白猫夢・流猫抄 3
麒麟を巡る話、第209話。
チンピラのあしらい方。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
と――通りの向こうから、騒がしい声が聞こえて来る。
「いました! あいつです!」
「おうッ!」
マロンたちが振り向くと、そこには銃や剣を構えた、いかにもならず者と言った風体の男たちが近付いてくるのが見えた。
「あ、さっきの」
「ああ、古新聞屋」
二人は顔を見合わせ、短く言葉を交わす。
「戦う?」
「面倒臭い」
「同意見。逃げよっか」
「賛成、さんせーい」
二人は男たちの来る方と反対を振り向き――揃って顔をしかめる。
「……なんかあっちからも、似たようなのが来るんだけど」
「うわー……」
「どうしたの?」
「あれ、あたしがさっきボコった奴だわ。あっちも仲間連れてきたみたい」
「揉めるわねぇ、アンタもあたしも」
「前から後ろから、……か。どうしよっか、マロン」
「そりゃ、横じゃない?」
「そーね」
二人は先程まで座っていた木箱と、その背後にある苔むした壁に視線を向ける。
「じゃ、行きますか」
「ん」
二人は木箱に乗り、さらにそこから壁へ向かって跳んだ。
ひらりと壁を越え、二人は元々は公園だったと思われる、荒地の中に踏み込む。
「うえ、汚っ」
公園を一瞥したマロンが、そうつぶやく。
「まるでゴミ捨て場ね。カビ臭いし、なんか腐った臭いもするし。うわ、キノコ生えてる」
「さっさと出ましょ。鼻が曲がるわ」
「後ろからも来てるしね」
プレタの言葉に、マロンは今越えてきた壁へと視線を向ける。
「……しつこいわね」
そこには既に3名、チンピラ風の男たちが散弾銃を手に壁を乗り越えて来ていた。
「待ちやがれ、お前らッ!」
一名が散弾銃を構え、二人を狙う。
「撃てば?」
マロンがフン、と鼻を鳴らし、チンピラを挑発する。
「撃ったらあッ!」
簡単に挑発に乗ったチンピラが、散弾銃の引き金を絞る。
しかし――弾は全く当たらない。
「ぱっと見、威力重視に改造してあるわね。ダメージがデカい分、飛距離は無いわよね?」
「そうね。目一杯ソードオフ(銃身を切り詰め威力を高める改造)してあるし、精々20メートルまででしょ」
二人の読み通り、バラ撒かれた散弾は地面に無数の穴を空けるばかりで、既にこの時30メートル以上離れているマロンたちには、全く届いていない。
「オラオラオラああッ!」
しかしそんなことにも気付かないらしく、チンピラたちは散弾銃を乱射している。そのうちに――。
「いってえぇ!?」
「お、ちょ、てめっ、弾飛んで来たぞっ!」
「るせえッ、お前が近付き過ぎなんだッ!」
安全性を無視した改造のためにでたらめな跳弾が起こり、仲間の側に被害が及ぶ。
やがてチンピラたちは勝手に揉め始め、その隙にマロンたちはさっさと、その場から駆け出していた。
「……アホね。自分の使う武器の状態くらい、知っときなさいよ」
「同感」
銃声と罵声を背にしながら、二人は悠々と公園を出ようとする。
ところが――。
「……あら」
「回り込まれてたみたいね」
公園の入口にも、男たちが大勢詰めかけているのが見えた。
「いたぞ!」
「撃て、撃て、撃てッ!」
今度は前方から銃弾が飛んでくる。しかし先程の散弾銃とは違い、こちらは中距離用の、命中精度の高い小銃である。うかつに動けば狙撃されるおそれがあるため、二人は動かない。
その代わり二人同時に、魔術で壁を作った。
「『マジックシールド』!」
二人がかりで築いた二重の盾により、銃弾は完全に遮断された。
「チッ……、魔術師か! じゃあ囲んで袋叩きにするぞ! 魔術師なら接近されりゃどうしようも無いはずだ!」
「おうッ!」
男たちは小銃をひっくり返し、鈍器を持つように振りかざして、二人に突っ込んでくる。
「どうする?」
「どうって、やるならやる、……でしょ?」
「そうね」
二人は腰に佩いていた武器を、同時に取り出した。
と――互いにその得物を見て、二人は「あら」とつぶやく。
「刀? アンタも?」
「え、ええ。……面白いわね、ここまで一緒なんて」
「これを切り抜けたら、改めてじっくり話、したいわね」
「賛成。……じゃ、……やるわよ!」
「ええ!」
マロンとプレタはぱっと駆け出し、押し寄せて来る男たちの中へと斬り込んでいった。
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チンピラのあしらい方。
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と――通りの向こうから、騒がしい声が聞こえて来る。
「いました! あいつです!」
「おうッ!」
マロンたちが振り向くと、そこには銃や剣を構えた、いかにもならず者と言った風体の男たちが近付いてくるのが見えた。
「あ、さっきの」
「ああ、古新聞屋」
二人は顔を見合わせ、短く言葉を交わす。
「戦う?」
「面倒臭い」
「同意見。逃げよっか」
「賛成、さんせーい」
二人は男たちの来る方と反対を振り向き――揃って顔をしかめる。
「……なんかあっちからも、似たようなのが来るんだけど」
「うわー……」
「どうしたの?」
「あれ、あたしがさっきボコった奴だわ。あっちも仲間連れてきたみたい」
「揉めるわねぇ、アンタもあたしも」
「前から後ろから、……か。どうしよっか、マロン」
「そりゃ、横じゃない?」
「そーね」
二人は先程まで座っていた木箱と、その背後にある苔むした壁に視線を向ける。
「じゃ、行きますか」
「ん」
二人は木箱に乗り、さらにそこから壁へ向かって跳んだ。
ひらりと壁を越え、二人は元々は公園だったと思われる、荒地の中に踏み込む。
「うえ、汚っ」
公園を一瞥したマロンが、そうつぶやく。
「まるでゴミ捨て場ね。カビ臭いし、なんか腐った臭いもするし。うわ、キノコ生えてる」
「さっさと出ましょ。鼻が曲がるわ」
「後ろからも来てるしね」
プレタの言葉に、マロンは今越えてきた壁へと視線を向ける。
「……しつこいわね」
そこには既に3名、チンピラ風の男たちが散弾銃を手に壁を乗り越えて来ていた。
「待ちやがれ、お前らッ!」
一名が散弾銃を構え、二人を狙う。
「撃てば?」
マロンがフン、と鼻を鳴らし、チンピラを挑発する。
「撃ったらあッ!」
簡単に挑発に乗ったチンピラが、散弾銃の引き金を絞る。
しかし――弾は全く当たらない。
「ぱっと見、威力重視に改造してあるわね。ダメージがデカい分、飛距離は無いわよね?」
「そうね。目一杯ソードオフ(銃身を切り詰め威力を高める改造)してあるし、精々20メートルまででしょ」
二人の読み通り、バラ撒かれた散弾は地面に無数の穴を空けるばかりで、既にこの時30メートル以上離れているマロンたちには、全く届いていない。
「オラオラオラああッ!」
しかしそんなことにも気付かないらしく、チンピラたちは散弾銃を乱射している。そのうちに――。
「いってえぇ!?」
「お、ちょ、てめっ、弾飛んで来たぞっ!」
「るせえッ、お前が近付き過ぎなんだッ!」
安全性を無視した改造のためにでたらめな跳弾が起こり、仲間の側に被害が及ぶ。
やがてチンピラたちは勝手に揉め始め、その隙にマロンたちはさっさと、その場から駆け出していた。
「……アホね。自分の使う武器の状態くらい、知っときなさいよ」
「同感」
銃声と罵声を背にしながら、二人は悠々と公園を出ようとする。
ところが――。
「……あら」
「回り込まれてたみたいね」
公園の入口にも、男たちが大勢詰めかけているのが見えた。
「いたぞ!」
「撃て、撃て、撃てッ!」
今度は前方から銃弾が飛んでくる。しかし先程の散弾銃とは違い、こちらは中距離用の、命中精度の高い小銃である。うかつに動けば狙撃されるおそれがあるため、二人は動かない。
その代わり二人同時に、魔術で壁を作った。
「『マジックシールド』!」
二人がかりで築いた二重の盾により、銃弾は完全に遮断された。
「チッ……、魔術師か! じゃあ囲んで袋叩きにするぞ! 魔術師なら接近されりゃどうしようも無いはずだ!」
「おうッ!」
男たちは小銃をひっくり返し、鈍器を持つように振りかざして、二人に突っ込んでくる。
「どうする?」
「どうって、やるならやる、……でしょ?」
「そうね」
二人は腰に佩いていた武器を、同時に取り出した。
と――互いにその得物を見て、二人は「あら」とつぶやく。
「刀? アンタも?」
「え、ええ。……面白いわね、ここまで一緒なんて」
「これを切り抜けたら、改めてじっくり話、したいわね」
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