「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第5部
白猫夢・隼襲抄 6
麒麟を巡る話、第221話。
金の流れと政治動向。
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6.
「黙って聞いてりゃあ……!」
先陣切って踏み込んできたグレゴは、大司祭に小銃を向ける。
「ひょ、……ひゃあっ!?」
部下たちより大分遅れて事態を呑み込んだらしい大司祭は、ワインを窓の外に落としてしまった。
「な、何故生きておるのだ、羽虫共!?」
「フン……! お前らみてえなうらなり野郎の浅知恵、見破れんわけが無えッ!」
見破った本人を散々なじったことも棚に上げ、グレゴは居丈高に怒鳴り散らした。
「さあ、大人しくしやがれ、てめえら! 抵抗なんかするんじゃねえぞ!」
「ひいい……」
グレゴの脅しが相当に効いたらしく、大司祭たちは素直に従った。
「ファルコン」部隊はこの場にいた「天政会」全員を拘束し、悠々と金を運び出すことができた。
「A隊がぼやいてたぜ、『逃走ルートを必死で確保したってのに、これじゃ遠足じゃねえか』ってな」
「ま、いいじゃない。楽できるのに越したことないでしょ?」
「違いない、ははは……」
窮地から一転、大勝利へと導くことができたためか、マルセロは上機嫌になっていた。
「しかし……、こいつは相当のワルだったな」
表情を忌々しそうなものに変え、マルセロは大司祭を顎で指し示す。
「偉いお坊さんの癖して、大量虐殺しようとしやがって。なーにが大司祭だっつの。随分と徳の無いこったな、え?
しかも、俺たちを羽虫呼ばわりしてたって?」
「ええ」
「殺した方が神様も喜ぶとか言ってたわよ」
「おいおい、何だそりゃ。ふざけてんなあ、まったく!」
マルセロは突然、大司祭を蹴り飛ばした。
「ふげえ……っ」
「ナメてんじゃねーぞ、生臭坊主! 俺たちを羽虫だのなんだの言ったらしいが、てめえの方がよっぽど虫けらじゃねえかッ!
よくもまあ、自分の悪事をそこまでご大層に言い訳できたもんだな、ああ!?」
「はう、はう……」
大司祭はボタボタと涙と鼻血を流し、床に倒れる。
「お前の企んだ爆殺計画は俺たちが公表する。これで『天政会』は央北の救世主から一転、てめえのことしか考えてねえクズに貶められるってわけだ」
「そっ、それだけは……!」
もぞもぞと起き上がった大司教の顔をもう一度蹴り、マルセロは突っぱねた。
「やめてほしいってか? やなこった。
俺たちはお前らが潰れるってんなら、何だってやるつもりだ。恨むんならしょうもねえことを企てた、自分の腐ったオツムを恨みな。
よし、金は運び終えた! ダラダラこんなとこに長居する用は無い! 撤収だ!」
「ファルコン」たちはマルセロの号令に応じ、拘束した大司祭たちを放ったまま、その場を後にした。
その後の流れは、非常に流動的で素早いものとなった。
まず、強奪計画のわずか2日後。トラス王国政府からの正式な援助金として、ロンダリング済の8億エルがカプリ王国へと融資された。カプリ王国はこれに深い感謝の意を表明し、「新央北」諸国との関係を強める意向を公表した。
一方、「天政会」からの援助が事実上の不履行となったこともあり、カプリ王国は「天政会」に対し遺憾の意を表明。「天政会」下の諸国との国交を見直すとの声明を発表した。
加えて、「天政会」の大司祭が高性能爆薬を使って大量虐殺を計画していたことも、出所不明な、しかし信憑性のあるうわさとして人々の口に上った。
この2つのニュースが央北中に伝わったことにより、「天政会」の評判は一時期、下落した。
一時期、と言うのは――その後「天政会」から、次のような声明があったからである。
「我々の名を騙った偽僧侶が存在し、カプリ王国にて大規模な窃盗を行おうと、大規模融資と称して侵入していたとの調べが付いており、その犯人らも既に友好諸国の協力により検挙、および処刑した。
我々がカプリ王国にそのような融資を行おうとした事実は存在せず、我々は今回の件とは無関係である」
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金の流れと政治動向。
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「黙って聞いてりゃあ……!」
先陣切って踏み込んできたグレゴは、大司祭に小銃を向ける。
「ひょ、……ひゃあっ!?」
部下たちより大分遅れて事態を呑み込んだらしい大司祭は、ワインを窓の外に落としてしまった。
「な、何故生きておるのだ、羽虫共!?」
「フン……! お前らみてえなうらなり野郎の浅知恵、見破れんわけが無えッ!」
見破った本人を散々なじったことも棚に上げ、グレゴは居丈高に怒鳴り散らした。
「さあ、大人しくしやがれ、てめえら! 抵抗なんかするんじゃねえぞ!」
「ひいい……」
グレゴの脅しが相当に効いたらしく、大司祭たちは素直に従った。
「ファルコン」部隊はこの場にいた「天政会」全員を拘束し、悠々と金を運び出すことができた。
「A隊がぼやいてたぜ、『逃走ルートを必死で確保したってのに、これじゃ遠足じゃねえか』ってな」
「ま、いいじゃない。楽できるのに越したことないでしょ?」
「違いない、ははは……」
窮地から一転、大勝利へと導くことができたためか、マルセロは上機嫌になっていた。
「しかし……、こいつは相当のワルだったな」
表情を忌々しそうなものに変え、マルセロは大司祭を顎で指し示す。
「偉いお坊さんの癖して、大量虐殺しようとしやがって。なーにが大司祭だっつの。随分と徳の無いこったな、え?
しかも、俺たちを羽虫呼ばわりしてたって?」
「ええ」
「殺した方が神様も喜ぶとか言ってたわよ」
「おいおい、何だそりゃ。ふざけてんなあ、まったく!」
マルセロは突然、大司祭を蹴り飛ばした。
「ふげえ……っ」
「ナメてんじゃねーぞ、生臭坊主! 俺たちを羽虫だのなんだの言ったらしいが、てめえの方がよっぽど虫けらじゃねえかッ!
よくもまあ、自分の悪事をそこまでご大層に言い訳できたもんだな、ああ!?」
「はう、はう……」
大司祭はボタボタと涙と鼻血を流し、床に倒れる。
「お前の企んだ爆殺計画は俺たちが公表する。これで『天政会』は央北の救世主から一転、てめえのことしか考えてねえクズに貶められるってわけだ」
「そっ、それだけは……!」
もぞもぞと起き上がった大司教の顔をもう一度蹴り、マルセロは突っぱねた。
「やめてほしいってか? やなこった。
俺たちはお前らが潰れるってんなら、何だってやるつもりだ。恨むんならしょうもねえことを企てた、自分の腐ったオツムを恨みな。
よし、金は運び終えた! ダラダラこんなとこに長居する用は無い! 撤収だ!」
「ファルコン」たちはマルセロの号令に応じ、拘束した大司祭たちを放ったまま、その場を後にした。
その後の流れは、非常に流動的で素早いものとなった。
まず、強奪計画のわずか2日後。トラス王国政府からの正式な援助金として、ロンダリング済の8億エルがカプリ王国へと融資された。カプリ王国はこれに深い感謝の意を表明し、「新央北」諸国との関係を強める意向を公表した。
一方、「天政会」からの援助が事実上の不履行となったこともあり、カプリ王国は「天政会」に対し遺憾の意を表明。「天政会」下の諸国との国交を見直すとの声明を発表した。
加えて、「天政会」の大司祭が高性能爆薬を使って大量虐殺を計画していたことも、出所不明な、しかし信憑性のあるうわさとして人々の口に上った。
この2つのニュースが央北中に伝わったことにより、「天政会」の評判は一時期、下落した。
一時期、と言うのは――その後「天政会」から、次のような声明があったからである。
「我々の名を騙った偽僧侶が存在し、カプリ王国にて大規模な窃盗を行おうと、大規模融資と称して侵入していたとの調べが付いており、その犯人らも既に友好諸国の協力により検挙、および処刑した。
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