黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第5部

    白猫夢・死線抄 1

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    麒麟を巡る話、第229話。
    隼狩り。

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    1.
     ミニーノ姉妹と刺客が接触する、その2時間前。

     B隊隊長ジェラルドとその隊員たちは作戦通りに、取引所の金庫室前に集まっていた。
    「万事、予定通りだな。後はこの金庫をこじ開けるだけ、……と」
     マルセロから連絡を受けていた通り、確かにここまで、取引所を警備していた敵兵はほとんど応戦などする様子を見せず、中にはB隊を無視してそのまま歩き去る者すらいる有様だった。
    「司令官の仰ってた通りでしたね」
    「ああ。まさかここまでうまく行くとは思わなかった。工作が効いたな」
     これまでにないくらいの呆気なさに、隊長を含む隊員の誰もが、緊張感を無くしていた。
    「ここまで楽に進むのなんて、アレ以来ですね」
    「アレ? ……って言うと?」
    「ほら、カプリ王国の時の。って言ってもあれは罠でしたけど」
    「ああ……」
     隊員の言葉に同意しかけ、そこでジェラルドは嫌な予感を覚える。
    「……ああ?」
    「どうしました?」
    「……何か……ヤバいな?」
    「え?」
     ジェラルドは金庫の前に集まっている隊員たちに、慌てて号令をかけた。
    「離れろ! 何か嫌な……」
     が――言い終わらないうちに、ギギギ……、と金属がこすれるような音が響き渡る。
    「……っ」
     その音と共に金庫が内側から開き、そこからこん、こんと硬い音を立て、手榴弾が飛んできた。



     同時刻。
     C隊隊長グレゴは取引所周辺に隊員たちを配置し、不測の事態に備えて見張らせていたが――その誰とも連絡が取れなくなっていた。
    「どうなってる……!? それに何だ、今の爆発音は……!?」
     完全に孤立し、そしてうろたえたグレゴは、まったく身動きが取れなくなる。
     と、そこへローブを着た、一見浮浪者風の男がフラ……、と現れる。
    「すまないが……、そこの『熊』の方……」
    「あ、あぁ!? い、忙しいんだ俺は! あっちへ行け!」
     いまだ狼狽したままのグレゴに対し、その長耳の青年はじりじりと近付いて来る。
    「あっちへ行けと言っているだろう!」
    「君は……」
     青年はひょい、と手を挙げる。
     次の瞬間――グレゴは物理的にも、身動きが取れなくなった。
    「ぬ、が、かっ……、これ、はっ、……!?」
     一瞬のうちにグレゴを鎖でがんじがらめにした青年は、にやぁ、と笑った。
    「マーキー大尉で間違い無いな?」
    「き、きさ、まっ、何者、……ぐえ、……っ」
     首を強く絞められ、グレゴの意識が消えた。



     そしてこの時――A隊は全員縄で縛られ、ある場所に閉じ込められていた。
    「てめえ……! 何なんだよ、くそッ!」
     A隊隊長アセラは、自分たちの目の前で悠然と座り込む、狐獣人の男をにらみつけていた。
    「何って、いわゆる刺客ってヤツさぁ。あんたら『ファルコン』の幹部を全員始末してくれって頼まれたんだよ」
    「なっ……!?」
    「お前ら身動きできねーから、俺、安心してこんなこと言っちゃうけどよ」
     そう前置きし、狐獣人――ロベルト・ブリッツェンはニヤニヤと笑う。
    「イッシオ司令官ってのも、とんだ間抜けだな」
    「何だと!?」
    「一端の策略家気取って、取引所の警備に金をバラ撒いたそうだが、……くっく、まさかそれが全員入れ替わったなんて、思いもしなかったみてーだなぁ?」
    「え……!?」
    「もうちょっと考えりゃ分かるだろうに――用心深い『天政会』の奴らが、自分たちに反感持ってるヘブン王国のヤツらを警備に当たらせるわきゃねーだろーが。
     まあ、確かに先週までは詰めてたぜ、王国のヤツらが。しかしアンタらにとっちゃ非常に残念なことに、今週に入って警備体制を丸ごと一新。警備してたのは全員ヘブン王国以外の、敬虔な天帝教信者ばっかりってワケよ。
     その上で、俺からちょいと一言、アドバイスもさせてもらったんだ」
    「アドバイスだって?」
     尋ねたアセラに、ロベルトは肩をすくめて返した。
    「『自分の作戦が完璧にうまく行ってると勘違いしてるアホを騙し、金庫前までおびき寄せれば、そこで一網打尽にできますぜ』ってな」
    「……!」
     アセラの顔が真っ青になるのを見て、ロベルトは嬉しそうに笑った。
    「ひっひっひ……、B隊は今頃、全滅してるだろうな。金庫室の前はグチャグチャになってるだろうさ」
    「てめえ……!」
    「おっと、それだけじゃないぜ。C隊も攻撃を仕掛けてる。凄腕の暗殺者をけしかけたからな、そっちも全滅だろう」
    「……!」
    「そして」
     ロベルトは立ち上がり、アセラの襟をつかんで強引に立ち上がらせる。
    「な、何しやがる!」
    「A隊も今から全滅する」
     ロベルトは背負っていた銃のような「何か」を、身動きできない隊員たちに向けた。
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