「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第5部
白猫夢・死線抄 2
麒麟を巡る話、第230話。
バカ虎。
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2.
時間と場所は現在の、ミニーノ姉妹らがいる拠点に戻る。
「……」
その場にいた全員が息を呑み、外に立っている刺客の気配を伺う。
(どうするんだ、プレタ)
マルセロが小声で尋ねたが、プレタは目を向けず、ぼそぼそと何かをつぶやく。
(……?)
(先手必勝よ)
プレタの代わりに、マロンがそう答える。
その言葉の通り――プレタは閉め切っていた窓へ向けて、魔術を放った。
「『ファイアランス』!」
炎の槍が窓を雨戸ごと貫き、外へと飛んで行く。
その直後、刺客と思しき男の、慌てた声が聞こえて来た。
「うわ、ちょ、何、……アカンてアカンて、ちょ、うわっ、火点いたっ」
「……!」
その声に、プレタとマロンは顔を強張らせた。
「みんな、爆弾よ! 隠れて!」
「なに……!?」
聞き返すより先に、窓の外からまた、男の声が聞こえて来る。
「しゃあない、オラあッ!」
二人の言葉通り、割れた窓から爆弾が投げ込まれ、そして炸裂した。
屋外に潜んでいたその虎獣人は、「ふう」とため息を漏らした。
「危ない危ない……。死ぬか思たわ」
窓からもくもくと上がる煙を確認し、虎獣人は深々とうなずく。
「なんぼ何でも死んだやろ、うん」
虎獣人は中の様子を確認せず、そのまま踵を返そうとする。
が――その窓を蹴破り、ミニーノ姉妹が飛び出してきた。
「え……、ウソやろ、生きとったんか!?」
「あんなので誰が死ぬもんですか」
「……しぶといなぁ」
虎獣人は二人に向き直り、拳を構える。
「ほんなら、きっちり始末するまでや! かかって来いや、おぉ!?」
「……マジ、チンピラって感じね」
プレタはふう、とため息をつき、一歩前に出る。
「マロン、アンタは中に戻って、ケガ人がいないか見てきて」
「分かったわ」
「え……。お前、1対1でやるつもりなんか?」
虎獣人は面食らったような顔をし、そしてすぐに苛立った様子を見せる。
「なめんなや、『猫』ぉ……ッ」
「なめるわよ。アンタみたいな三下、何人出て来たって相手じゃないわ」
「言うたなッ!」
虎獣人は激昂し、襲い掛かってきた。
「っだらあッ!」
虎獣人が先制し、拳を振り下ろす。
プレタはそれをひらりとかわし、虎獣人へ蹴りを放った。
「……ッ!」
とっさに虎獣人が受け、プレタは右足を挙げたままの状態になる。
「何や? 俺に素手で挑む気か?」
「アンタみたいなバカに刀振り回すなんて、刀が勿体無いわ。素手で十分よ」
「ヘッ、ほざけ!」
虎獣人はプレタの足を引っ張り、自分の方へ寄せようとする。
が、プレタは抵抗せず、逆に虎獣人の方へと飛び込んだ。
「おっ……!?」
「とりあえず、鼻からかしらね」
ふわ、と空中に浮いた状態から、プレタは左足を引き、虎獣人の顔に乗せ、そのまま踏みつける。
「ふ、が、……があああッ!?」
ボキボキと鈍い音を立てて、虎獣人は倒れ込んだ。
「……まだやる?」
何事も無かったかのように着地したプレタは、倒れたままの虎獣人に、挑発気味に声をかける。
「……ふ、ふっざけんなぁッ!」
虎獣人は勢いよく起き上がり、鼻を押さえる。
「……くそ、折れとるやないか。男前が台無しや」
「アンタ、頭だけじゃなくてセンスも悪いのね。どこがいい顔してんのよ? いかにもチンピラでございます、みたいな貧相で下品な顔してるくせに」
「チンピラ、チンピラて、お前ええ加減にせえよ」
虎獣人は鼻を押さえ、バキ、ゴキ、と鼻から痛そうな音を立てて形を直す。
「うっ、……はぁ、はぁ、……めっちゃ痛い」
「でしょうね。
で、もう一度聞くけど。まだ、やるつもり?」
「やるに……」
虎獣人はブッ、と鼻血を噴き出しながら、再度プレタに飛び掛かる。
「決まってんやろがあああッ!」
「……じゃあ、アンタはきっと3分後、悶絶してるわね」
これもひらりとかわし、プレタは素手で構えて見せた。
「悪いけどあたし、アンタみたいなバカ大っ嫌いなのよ。
絶対無事でいさせないつもりだから、せいぜい覚悟しときなさいよ?」
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バカ虎。
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時間と場所は現在の、ミニーノ姉妹らがいる拠点に戻る。
「……」
その場にいた全員が息を呑み、外に立っている刺客の気配を伺う。
(どうするんだ、プレタ)
マルセロが小声で尋ねたが、プレタは目を向けず、ぼそぼそと何かをつぶやく。
(……?)
(先手必勝よ)
プレタの代わりに、マロンがそう答える。
その言葉の通り――プレタは閉め切っていた窓へ向けて、魔術を放った。
「『ファイアランス』!」
炎の槍が窓を雨戸ごと貫き、外へと飛んで行く。
その直後、刺客と思しき男の、慌てた声が聞こえて来た。
「うわ、ちょ、何、……アカンてアカンて、ちょ、うわっ、火点いたっ」
「……!」
その声に、プレタとマロンは顔を強張らせた。
「みんな、爆弾よ! 隠れて!」
「なに……!?」
聞き返すより先に、窓の外からまた、男の声が聞こえて来る。
「しゃあない、オラあッ!」
二人の言葉通り、割れた窓から爆弾が投げ込まれ、そして炸裂した。
屋外に潜んでいたその虎獣人は、「ふう」とため息を漏らした。
「危ない危ない……。死ぬか思たわ」
窓からもくもくと上がる煙を確認し、虎獣人は深々とうなずく。
「なんぼ何でも死んだやろ、うん」
虎獣人は中の様子を確認せず、そのまま踵を返そうとする。
が――その窓を蹴破り、ミニーノ姉妹が飛び出してきた。
「え……、ウソやろ、生きとったんか!?」
「あんなので誰が死ぬもんですか」
「……しぶといなぁ」
虎獣人は二人に向き直り、拳を構える。
「ほんなら、きっちり始末するまでや! かかって来いや、おぉ!?」
「……マジ、チンピラって感じね」
プレタはふう、とため息をつき、一歩前に出る。
「マロン、アンタは中に戻って、ケガ人がいないか見てきて」
「分かったわ」
「え……。お前、1対1でやるつもりなんか?」
虎獣人は面食らったような顔をし、そしてすぐに苛立った様子を見せる。
「なめんなや、『猫』ぉ……ッ」
「なめるわよ。アンタみたいな三下、何人出て来たって相手じゃないわ」
「言うたなッ!」
虎獣人は激昂し、襲い掛かってきた。
「っだらあッ!」
虎獣人が先制し、拳を振り下ろす。
プレタはそれをひらりとかわし、虎獣人へ蹴りを放った。
「……ッ!」
とっさに虎獣人が受け、プレタは右足を挙げたままの状態になる。
「何や? 俺に素手で挑む気か?」
「アンタみたいなバカに刀振り回すなんて、刀が勿体無いわ。素手で十分よ」
「ヘッ、ほざけ!」
虎獣人はプレタの足を引っ張り、自分の方へ寄せようとする。
が、プレタは抵抗せず、逆に虎獣人の方へと飛び込んだ。
「おっ……!?」
「とりあえず、鼻からかしらね」
ふわ、と空中に浮いた状態から、プレタは左足を引き、虎獣人の顔に乗せ、そのまま踏みつける。
「ふ、が、……があああッ!?」
ボキボキと鈍い音を立てて、虎獣人は倒れ込んだ。
「……まだやる?」
何事も無かったかのように着地したプレタは、倒れたままの虎獣人に、挑発気味に声をかける。
「……ふ、ふっざけんなぁッ!」
虎獣人は勢いよく起き上がり、鼻を押さえる。
「……くそ、折れとるやないか。男前が台無しや」
「アンタ、頭だけじゃなくてセンスも悪いのね。どこがいい顔してんのよ? いかにもチンピラでございます、みたいな貧相で下品な顔してるくせに」
「チンピラ、チンピラて、お前ええ加減にせえよ」
虎獣人は鼻を押さえ、バキ、ゴキ、と鼻から痛そうな音を立てて形を直す。
「うっ、……はぁ、はぁ、……めっちゃ痛い」
「でしょうね。
で、もう一度聞くけど。まだ、やるつもり?」
「やるに……」
虎獣人はブッ、と鼻血を噴き出しながら、再度プレタに飛び掛かる。
「決まってんやろがあああッ!」
「……じゃあ、アンタはきっと3分後、悶絶してるわね」
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