黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第5部

    白猫夢・死線抄 5

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    麒麟を巡る話、第233話。
    真夜中の死闘。

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    5.
    「そんな男が……、それだけ切れる男が何故、この作戦に介入したのかしら?」
     クイントへの質問とも、単なる疑問とも取れる、中途半端な声色を出したプレタに、クイントが答える。
    「知らん。けどな、結局は金やと思うで。大司教だか何だかに交渉しとった時、金や金や言うてたからな」
    「大司教?」
     プレタの疑問が解消されないまま、話は別方向に移る。
    「あ……、その……、内緒やってんけど、……まあ、もうええか。
     何でもセドリック・アストンとか言う奴が、今回の依頼を出しとんねん。あんたら皆殺しにしろっちゅうてな」
    「なるほどな……。あの下衆野郎め」
    「知ってるの?」
    「『天政会』のナンバー2で、かなり金汚い坊さんだ。
    『天政会』の資金運用計画のほぼ半分を任されてるが、黒いうわさが絶えない。なるほど、そんな奴ならロベルト元少尉とも馬が合うさ。
     ……聞くことは全部聞いた。こいつ、どうする?」
    「へっ?」
     マルセロの言葉に、クイントは蒼ざめる。
    「ちょ、ちょい、待てや、おい!? 助けてくれる言うたやないか!?」
    「お二人さん次第だ。俺は殺しておく方がいいと思うがね」
    「時間が無いわ。ここに転がしておけばいい」
    「……それもアリか」
     三人はクイントを置き去りにし、D隊に命令した。
    「俺たちは敵拠点に向かう。お前らはここで待機しろ」
    「そんな……」
    「我々も行きます!」
     そう答えた隊員たちに、マルセロは首を横に振る。
    「駄目だ。このD隊は後方支援を主な業務としている。他3隊を全滅させた手練に対抗できるとは到底、思えない。
     だからお前らは、俺たちの支援をしてくれ」
    「……分かりました!」
     ビシ、と敬礼した隊員たちに、マルセロは苦笑して見せた。
    「っつっても、……俺もからきしだけどな。
     でも俺は責任者だ。その俺がここに率いてきてしまったせいで、部隊の奴は死んだんだ。
     だからせめて、俺たちを襲った刺客に一矢報いなきゃ、死んだ奴が浮かばれやしねえよ」
     マルセロは懐からリボルバー拳銃を取り出し、安全装置を外す。
    「俺も肚を括る。一緒に戦うぜ」
    「ええ」
    「行きましょう」
     三人はそれ以上何も言葉を交わさず、拠点を後にした。



     時間は真夜中を過ぎていたが、あちこちに人の姿がある。どうやら取引所の爆発を聞きつけ、騒然としているらしい。
    「……なあ」
     と、マルセロがその騒ぎに紛れそうなくらいの小さな声で、二人に尋ねた。
    「俺は、……悪人だろうか」
    「は?」
    「いや……、分かってる。『新央北』のためだと言って、あちこちで非合法な活動をしてきた。俺はきっと、天国には行けない。それは、分かってるんだ。
     でも俺は、皆を死なせるつもりは無かった……! 今回だって被害が出ないように、最善の手を採ったつもりだったんだよ!」
    「マルセロ……」
    「それを、……それを利用されて、……皆、……死んだ……」
    「……まだよ」
     目に涙を浮かべているマルセロの肩を、マロンが優しく叩く。
    「まだ、助けられる奴が残ってるかも知れないでしょ? だからあたしたちは、行くのよ」
    「……そう、……だな」
     人ごみを抜け、いまだ煙を上げる取引所を通り過ぎ、三人は広場に出る。
    「あれね?」
    「ああ。前にあるあの石像だ。
     ……だが、やはり。素直に通しちゃくれないらしいな」
     三人と目標の石像のちょうど中間辺りに、ローブをまとった長耳の青年と、太い筒を背負った軍服姿の、短耳の女性が立っている。
    「やっぱりあいつ、やられたっぽぃ」
     話しかけて来たその女性に、プレタが答える。
    「そうよ。アンタたちも同じ目に遭わせてあげる。覚悟しなさい」
    「するのは貴様らの方だ。
     ミニーノ姉妹……、多少腕は立つと聞き及んでいるが、この『スティングレイ』と『キャバリエ』の敵ではない」
    「その通りぃ」
     相手はそれぞれ横に跳んで離れ、ミニーノ姉妹とマルセロを囲んだ。
    「貴様らの命、頂戴する!」
    「しちゃぃ!」
     それに応じ、ミニーノ姉妹も背を向け合い、敵に刀を向けた。

     が――それよりも早く動いたのは、マルセロだった。
     彼は既に敵二人が離れたその場所に向かって、銃弾を放っていた。
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