「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第5部
白猫夢・卑狐抄 3
麒麟を巡る話、第239話。
悪夢のような結末。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「ひッ……! く、来るなーッ!」
ロベルトはわめきながら、持っていた軽機関銃を掲げて防御しようとする。
その銃をマロンは、真っ二つに叩き斬った。
「な……、なーッ!?」
バラバラになった軽機関銃を見て、ロベルトはいよいよ怯えた声を挙げた。
「な、なんっ、何なんだお前!? こ、こいつは合金製で、刀なんかより、よっぽど……」
「知らないわよ」
マロンは刀を上段に構え、ロベルトを見据える。
「アンタはこれから死ぬ。それだけ分かれば十分でしょ」
「ま、待てっ、待てって、おい」
ロベルトは銃を捨て、後ずさりをし始める。マロンはそれに合わせてにじり寄り、距離を詰めていく。
「待って何かあるの? アンタ、皆殺しにしたんでしょ? あたしを待たせたらみんな、生き返るって言うの?」
「いや……その……それは……」
「じっとしてなさい。もうこれ以上、焦らさないで」
ぼっ、と音を立て、マロンの刀に火が灯る。
「とどめよ」
「うわあ……ッ」
マロンは燃え盛る刀を、ロベルトに向かって振り下ろした。
「そこまででご容赦をお願いいたします」
振り下ろされた刀が、途中で止まる。
「……ッ」
マロンの刀を、青と緑の派手なドレスに身を包んだ女ががっちりとつかみ、白刃取りしていた。
「邪魔しないでよ……!」
「申し訳ございません。諸事情により、そのご要望はお受けいたしかねます」
「はぁ……、はぁ……、助かったぜ、シェベル」
「お礼には及びません」
シェベルと呼ばれたドレスの女は、マロンの刀を受け止めたまま、ロベルトの方を向く。
「残念ですがブリッツェン様、これ以上の作戦遂行は不可能、かつ無価値と思われます。
隊員5名中4名が死亡、もしくは行動不能状態に陥っており、残るはわたくしとあなた様だけ。この状態で作戦を強行すれば、あなた様にも危険が及びます」
「……違いねえ。分かった、ここは退却だ。
どうせ隊長も隊員も全滅させたんだし、こいつらにはもう、何もできやしねえだろうからな」
「かしこまりました」
そう答え、シェベルはマロンの腹を蹴る。
「うぐ……っ」
無理矢理に弾かれ、マロンは転倒する。
その瞬間、シェベルとロベルトはその場から消えた。
「なっ……!?」
「……『テレポート』よ……今のは……」
プレタが右耳を押さえたまま、弱々しい声で答える。
「でも……黒炎教団じゃない……あんな派手な服……とんでもない破戒よ……」
「いい、しゃべるなプレタ」
マルセロはプレタに駆け寄り、容態を確かめる。
「耳からの出血がひどい。応急処置が精一杯だ。……後、その、頬から耳にかけて、裂傷がある。縫合の必要があるだろう」
「……傷……残るわよね……」
「残るだろうな。……すまない」
マルセロはがくりと膝を着き、プレタに土下座した。
「俺のせいだ。今回の作戦失敗も、部隊の全滅も、あんたにこんなひどい傷を負わせたことも、……全部俺の責任だ。
贖うことなどとてもできない……。許してくれなんて、……言えたもんじゃない」
「……仕方の無いことよ……」
プレタは涙を流していた。
仰向けに倒れたままのマロンも同様だった。
そしてマルセロもまた、空を仰いで慟哭(どうこく)していた。
「これがただの悪夢であってくれたら、……どれほど俺は幸せか……!」
空は既に、東の端が明るくなり始めていた。
数分後、D隊ができる限りの手を尽くし、生き残った隊員たちを救助した。
しかし一方で――各隊隊長、そして隊員45名中31名の死亡が確認され、「ファルコン」部隊の壊滅が確定した。
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悪夢のような結末。
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3.
「ひッ……! く、来るなーッ!」
ロベルトはわめきながら、持っていた軽機関銃を掲げて防御しようとする。
その銃をマロンは、真っ二つに叩き斬った。
「な……、なーッ!?」
バラバラになった軽機関銃を見て、ロベルトはいよいよ怯えた声を挙げた。
「な、なんっ、何なんだお前!? こ、こいつは合金製で、刀なんかより、よっぽど……」
「知らないわよ」
マロンは刀を上段に構え、ロベルトを見据える。
「アンタはこれから死ぬ。それだけ分かれば十分でしょ」
「ま、待てっ、待てって、おい」
ロベルトは銃を捨て、後ずさりをし始める。マロンはそれに合わせてにじり寄り、距離を詰めていく。
「待って何かあるの? アンタ、皆殺しにしたんでしょ? あたしを待たせたらみんな、生き返るって言うの?」
「いや……その……それは……」
「じっとしてなさい。もうこれ以上、焦らさないで」
ぼっ、と音を立て、マロンの刀に火が灯る。
「とどめよ」
「うわあ……ッ」
マロンは燃え盛る刀を、ロベルトに向かって振り下ろした。
「そこまででご容赦をお願いいたします」
振り下ろされた刀が、途中で止まる。
「……ッ」
マロンの刀を、青と緑の派手なドレスに身を包んだ女ががっちりとつかみ、白刃取りしていた。
「邪魔しないでよ……!」
「申し訳ございません。諸事情により、そのご要望はお受けいたしかねます」
「はぁ……、はぁ……、助かったぜ、シェベル」
「お礼には及びません」
シェベルと呼ばれたドレスの女は、マロンの刀を受け止めたまま、ロベルトの方を向く。
「残念ですがブリッツェン様、これ以上の作戦遂行は不可能、かつ無価値と思われます。
隊員5名中4名が死亡、もしくは行動不能状態に陥っており、残るはわたくしとあなた様だけ。この状態で作戦を強行すれば、あなた様にも危険が及びます」
「……違いねえ。分かった、ここは退却だ。
どうせ隊長も隊員も全滅させたんだし、こいつらにはもう、何もできやしねえだろうからな」
「かしこまりました」
そう答え、シェベルはマロンの腹を蹴る。
「うぐ……っ」
無理矢理に弾かれ、マロンは転倒する。
その瞬間、シェベルとロベルトはその場から消えた。
「なっ……!?」
「……『テレポート』よ……今のは……」
プレタが右耳を押さえたまま、弱々しい声で答える。
「でも……黒炎教団じゃない……あんな派手な服……とんでもない破戒よ……」
「いい、しゃべるなプレタ」
マルセロはプレタに駆け寄り、容態を確かめる。
「耳からの出血がひどい。応急処置が精一杯だ。……後、その、頬から耳にかけて、裂傷がある。縫合の必要があるだろう」
「……傷……残るわよね……」
「残るだろうな。……すまない」
マルセロはがくりと膝を着き、プレタに土下座した。
「俺のせいだ。今回の作戦失敗も、部隊の全滅も、あんたにこんなひどい傷を負わせたことも、……全部俺の責任だ。
贖うことなどとてもできない……。許してくれなんて、……言えたもんじゃない」
「……仕方の無いことよ……」
プレタは涙を流していた。
仰向けに倒れたままのマロンも同様だった。
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2014.06.14 修正
2014.06.14 修正



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