「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
白猫夢番外編 その2
麒麟を巡る話、とはあんまり関係ない話。
生き残ってた3人。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
白猫夢番外編 その2
聖クラム太后像前での戦いが終わってから1時間後、間も無く朝日が昇ろうかと言う頃。
「し、死ぬかと思った」
倒れたままだった「スティングレイ」が、がば、と起き上がった。
「……いや、無事ではないな」
もご、と口を動かし、奥歯を二本吐き出す。
「少尉に仕留められたとは言え、相当に切れのある蹴りを放つ女だった。ほんのもう少しでも距離が近ければ、折れるのは歯だけでは済まなかっただろうな。
……ん? 『キャバリエ』、お前も生きていたか」
「スティングレイ」のところに、よたよたとした足取りで「キャバリエ」が戻ってきた。
「あの爆発で良く生きていたな」
「つ、付けてて良かった、ボデぃアーマー……」
近くまで寄ったところで、「キャバリエ」はぺたんと座り込む。
「無かったらウチ、ぜったぃ死んでた……」
「だろうな。今後はもう少し装備を外した方がいい」
「あんたに言われたくなぃし」
辺りを見回し、「スティングレイ」は肩をすくめた。
「……これで『ブレイザー』までのこのこ歩いてきたら最早、ホラーだがな」
「あっちは確実、死んでる。間違いなぃ」
「だろうな。……さて、これからどうするか」
「戻るしかないんじゃなぃ?」
「キャバリエ」の意見に、「スティングレイ」は首を横に振った。
「どうだかな。
がめつい少尉のことだ。金を独り占めし、我々が戻ってくれば即、射殺するだろう。『こてんぱんにやられたくせして、いっちょ前に金をねだるのかよ』などと難癖をつけてな」
「……少尉ならやりかねなぃね」
「と言って他に行くところも無し。どうすべきか」
二人で思案に暮れようかとしたところで、もう一人、よたよたと近付いてくる者が現れた。
「……ん? 『インテグラ』か」
「おーぅ……」
やって来たのは、顔をボコボコに腫らしたクイントだった。
「ひどい目に遭うたわー……」
「相当殴られたようだな」
「岩みたぃ」
「ほっとけ。……んで、何や困った顔しとるけど、何の話しとったん?」
「ああ……」
二人はクイントにも、このままアジトに戻るのは相当危険であることを話した。
「あー……、確かになぁ。あのどケチやったらマジでやりかねへんよなぁ」
「そこで、他にどこか行く場所は無いかと考えていたのだが……」
それを聞き、クイントは「あー……」と声を漏らした。
「無いことはないねんけどな」
「ほう?」
「いや、これはホンマにもう他に手段が無いなーって言う、ホンマに最後の手段なんやで、ホンマに」
「ホンマホンマいぃすぎ」
「で、それは何だ?」
クイントは口ごもっていたが、やがて仕方なさげに打ち明けた。
「俺の実家や。ゴールドコースト市国やねん、俺ん家。
……でもなぁ、何年も前に勘当やーって追い出されてしもてるから、いまさら戻りづらいなーって」
「むしろ何年も経ったなら、向こうの怒りも冷めているだろう。今なら我々もいることであるし、取り成すくらいのことはする」
「マジで?」
「ああ、請け負おう」
「ウチもぃくよ!」
「……あー、そう言うてくれたらホンマにほっとするわ。一人やとホンマによお行かんし」
三人はそそくさと、その場から立ち去った。
数年後――ゴールドコースト市国の名物・闘技場において、この三人が名を馳せることとなるのだが、それはまた、別の話となる。
閑話 終
@au_ringさんをフォロー
生き残ってた3人。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
白猫夢番外編 その2
聖クラム太后像前での戦いが終わってから1時間後、間も無く朝日が昇ろうかと言う頃。
「し、死ぬかと思った」
倒れたままだった「スティングレイ」が、がば、と起き上がった。
「……いや、無事ではないな」
もご、と口を動かし、奥歯を二本吐き出す。
「少尉に仕留められたとは言え、相当に切れのある蹴りを放つ女だった。ほんのもう少しでも距離が近ければ、折れるのは歯だけでは済まなかっただろうな。
……ん? 『キャバリエ』、お前も生きていたか」
「スティングレイ」のところに、よたよたとした足取りで「キャバリエ」が戻ってきた。
「あの爆発で良く生きていたな」
「つ、付けてて良かった、ボデぃアーマー……」
近くまで寄ったところで、「キャバリエ」はぺたんと座り込む。
「無かったらウチ、ぜったぃ死んでた……」
「だろうな。今後はもう少し装備を外した方がいい」
「あんたに言われたくなぃし」
辺りを見回し、「スティングレイ」は肩をすくめた。
「……これで『ブレイザー』までのこのこ歩いてきたら最早、ホラーだがな」
「あっちは確実、死んでる。間違いなぃ」
「だろうな。……さて、これからどうするか」
「戻るしかないんじゃなぃ?」
「キャバリエ」の意見に、「スティングレイ」は首を横に振った。
「どうだかな。
がめつい少尉のことだ。金を独り占めし、我々が戻ってくれば即、射殺するだろう。『こてんぱんにやられたくせして、いっちょ前に金をねだるのかよ』などと難癖をつけてな」
「……少尉ならやりかねなぃね」
「と言って他に行くところも無し。どうすべきか」
二人で思案に暮れようかとしたところで、もう一人、よたよたと近付いてくる者が現れた。
「……ん? 『インテグラ』か」
「おーぅ……」
やって来たのは、顔をボコボコに腫らしたクイントだった。
「ひどい目に遭うたわー……」
「相当殴られたようだな」
「岩みたぃ」
「ほっとけ。……んで、何や困った顔しとるけど、何の話しとったん?」
「ああ……」
二人はクイントにも、このままアジトに戻るのは相当危険であることを話した。
「あー……、確かになぁ。あのどケチやったらマジでやりかねへんよなぁ」
「そこで、他にどこか行く場所は無いかと考えていたのだが……」
それを聞き、クイントは「あー……」と声を漏らした。
「無いことはないねんけどな」
「ほう?」
「いや、これはホンマにもう他に手段が無いなーって言う、ホンマに最後の手段なんやで、ホンマに」
「ホンマホンマいぃすぎ」
「で、それは何だ?」
クイントは口ごもっていたが、やがて仕方なさげに打ち明けた。
「俺の実家や。ゴールドコースト市国やねん、俺ん家。
……でもなぁ、何年も前に勘当やーって追い出されてしもてるから、いまさら戻りづらいなーって」
「むしろ何年も経ったなら、向こうの怒りも冷めているだろう。今なら我々もいることであるし、取り成すくらいのことはする」
「マジで?」
「ああ、請け負おう」
「ウチもぃくよ!」
「……あー、そう言うてくれたらホンマにほっとするわ。一人やとホンマによお行かんし」
三人はそそくさと、その場から立ち去った。
数年後――ゴールドコースト市国の名物・闘技場において、この三人が名を馳せることとなるのだが、それはまた、別の話となる。
閑話 終
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
実は前々作「蒼天剣」に、この3人とロベルトの親世代が登場しています。
誰が誰の親か、探してみると面白いかも知れません。
ちなみにクイントについては、「白猫夢」第1部に名前だけ出ています。
当時からアホでした。
実は前々作「蒼天剣」に、この3人とロベルトの親世代が登場しています。
誰が誰の親か、探してみると面白いかも知れません。
ちなみにクイントについては、「白猫夢」第1部に名前だけ出ています。
当時からアホでした。
- 関連記事
-
-
白猫夢番外編 その4 2014/05/13
-
白猫夢番外編 その3 2013/06/20
-
白猫夢番外編 その2 2013/06/03
-
白猫夢番外編 その1 2012/11/29
-
火紅狐番外編 その6 2012/03/07
-



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~