DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 1
ウエスタン小説2作目、第1話。
博打とオカルト。
1.
この国で合法的な賭博場、即ち「カジノ」が造られたのは1930年代はじめ、ネバダ州においてのことであるが、当然それ以前にも賭博は広く行われていた。
そもそも「賭博」というこの行為自体は、この大陸に欧州からの移民が来るよりもっと昔から、世界のあちこちで行われている。
ちなみに賭博のはじまりは、占いであると言われている。賭博に使用されているダイスも、元は牛骨を使った占いを起源としている。また、トランプも元々はタロットカードに代表される占いの道具であり、これらのことからも占いと賭博との関係は、相当に深い。
現在においても、「それまで吉か、あるいは凶であるのか分からないことが、数瞬の後にはっきりと示される」と言うこの過程は、占いにも、賭博にも、共通して見られる。
占いと賭博は、非常に似通っているのだ。
「これで、私の、勝ち」
たどたどしい英語でそう宣言された瞬間、男は頭を抱え、椅子から転げ落ちた。
「うっ……、そだろ……ぉ」
「まだやるか、ガン、……えー、ガン……マン」
「や、……やるに決まってんだろッ」
男はフラフラと立ち上がり、何とかテーブルに着き直す。
「何賭ける、……マン」
「ガンマン! ガンマンだ、ド田舎野郎!」
「お前、もう違う」
男の前に座る、派手な色をした羽を中折れ帽に載せた、その色黒の男は、ニヤニヤと笑っている。
「ガン、ここ。私、勝った。ガン、獲物」
「う……ぐ」
男は挑発した「羽冠」をにらみつけるが、腰を探っても既に、相棒の姿はそこには無い。
「次は何、賭ける」
「……っ」
男は腰から手を挙げ、自分の胸や尻のポケットを探ったが、1セントの金も出てこない。すべて「羽冠」に奪われたからだ。
「……ちくしょう」
男は諦め、席を離れようとした。
ところが――。
「チャンスやる」
「……あ?」
背中を見せかけた男に、「羽冠」はこんな提案をしてきた。
「お前、まだ1つだけ、賭けるもの持ってる。
お前の、命」
「なんだと……?」
「お前、命賭けるなら、私も、賭ける、それ」
「つまり、……お前も命を賭けるって言いてえのか?」
「そう」
そう返すなり、「羽冠」はゴト、と男のものだったコルトをテーブルに置いた。
「負けた奴、頭撃つ」
「……やってやろうじゃねえか」
男はもう一度椅子に座り直し――テーブルに散らばっていたトランプをばさっ、と払いのけた。
「だがもうポーカーは勘弁だ。こいつで勝負しようじゃねえか」
男はコルトから弾を抜き取り、一発だけ残して弾倉を回す。
「こいつをこめかみに当てて、互いに一回ずつ引き金を引き合う。運悪く弾が発射されりゃ、そこでジ・エンドだ」
「いい」
男の提案に乗り、「羽冠」は1セントをテーブルに置く。
「順番、これで決める。表、私。裏、お前」
「いいだろう」
男はコインをつかみ、親指で弾いた。
コインはぴぃん、と鋭い音を立てて、バーの天井近くまで上がる。そして落ちてきたコインを男がつかみ、再度テーブルに置いた。
「表が出たらお前が先に、裏が出たら俺が先に、だな?」
「そう」
「……」
男は手を離す。コインは裏を向いていた。
「……行くぜ」
男はコルトの撃鉄を起こし、銃口を自分のこめかみに当てる。
「頼むぜ……、相棒。俺のところに戻ってきてくれよ。
俺ともう一丁、暴れ回ろうぜ。な?」
祈りの言葉を愛銃にかけ、男は引き金を引く。
パン、と火薬の弾ける音が、バーに響いた。
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博打とオカルト。
1.
この国で合法的な賭博場、即ち「カジノ」が造られたのは1930年代はじめ、ネバダ州においてのことであるが、当然それ以前にも賭博は広く行われていた。
そもそも「賭博」というこの行為自体は、この大陸に欧州からの移民が来るよりもっと昔から、世界のあちこちで行われている。
ちなみに賭博のはじまりは、占いであると言われている。賭博に使用されているダイスも、元は牛骨を使った占いを起源としている。また、トランプも元々はタロットカードに代表される占いの道具であり、これらのことからも占いと賭博との関係は、相当に深い。
現在においても、「それまで吉か、あるいは凶であるのか分からないことが、数瞬の後にはっきりと示される」と言うこの過程は、占いにも、賭博にも、共通して見られる。
占いと賭博は、非常に似通っているのだ。
「これで、私の、勝ち」
たどたどしい英語でそう宣言された瞬間、男は頭を抱え、椅子から転げ落ちた。
「うっ……、そだろ……ぉ」
「まだやるか、ガン、……えー、ガン……マン」
「や、……やるに決まってんだろッ」
男はフラフラと立ち上がり、何とかテーブルに着き直す。
「何賭ける、……マン」
「ガンマン! ガンマンだ、ド田舎野郎!」
「お前、もう違う」
男の前に座る、派手な色をした羽を中折れ帽に載せた、その色黒の男は、ニヤニヤと笑っている。
「ガン、ここ。私、勝った。ガン、獲物」
「う……ぐ」
男は挑発した「羽冠」をにらみつけるが、腰を探っても既に、相棒の姿はそこには無い。
「次は何、賭ける」
「……っ」
男は腰から手を挙げ、自分の胸や尻のポケットを探ったが、1セントの金も出てこない。すべて「羽冠」に奪われたからだ。
「……ちくしょう」
男は諦め、席を離れようとした。
ところが――。
「チャンスやる」
「……あ?」
背中を見せかけた男に、「羽冠」はこんな提案をしてきた。
「お前、まだ1つだけ、賭けるもの持ってる。
お前の、命」
「なんだと……?」
「お前、命賭けるなら、私も、賭ける、それ」
「つまり、……お前も命を賭けるって言いてえのか?」
「そう」
そう返すなり、「羽冠」はゴト、と男のものだったコルトをテーブルに置いた。
「負けた奴、頭撃つ」
「……やってやろうじゃねえか」
男はもう一度椅子に座り直し――テーブルに散らばっていたトランプをばさっ、と払いのけた。
「だがもうポーカーは勘弁だ。こいつで勝負しようじゃねえか」
男はコルトから弾を抜き取り、一発だけ残して弾倉を回す。
「こいつをこめかみに当てて、互いに一回ずつ引き金を引き合う。運悪く弾が発射されりゃ、そこでジ・エンドだ」
「いい」
男の提案に乗り、「羽冠」は1セントをテーブルに置く。
「順番、これで決める。表、私。裏、お前」
「いいだろう」
男はコインをつかみ、親指で弾いた。
コインはぴぃん、と鋭い音を立てて、バーの天井近くまで上がる。そして落ちてきたコインを男がつかみ、再度テーブルに置いた。
「表が出たらお前が先に、裏が出たら俺が先に、だな?」
「そう」
「……」
男は手を離す。コインは裏を向いていた。
「……行くぜ」
男はコルトの撃鉄を起こし、銃口を自分のこめかみに当てる。
「頼むぜ……、相棒。俺のところに戻ってきてくれよ。
俺ともう一丁、暴れ回ろうぜ。な?」
祈りの言葉を愛銃にかけ、男は引き金を引く。
パン、と火薬の弾ける音が、バーに響いた。
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約3ヶ月ぶりの、ウエスタン小説。
今回も矢端想さんにイラストを提供していただきました。ありがとうございます。
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今回も矢端想さんにイラストを提供していただきました。ありがとうございます。
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【祝電】
ウェスタン小説第二弾公開おめでとうございます
今後ますますのご活躍をお祈り申し上げます
これまでにないようなおもろいウェスタンに期待いたします
矢端想
今後ますますのご活躍をお祈り申し上げます
これまでにないようなおもろいウェスタンに期待いたします
矢端想
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