DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 7
ウエスタン小説、第7話。
博打の始まり。
7.
アデルの推理は残念ながら1点、外れていた。
アデルは「羽冠」の体格を小柄な肥満体と考えていた。しかし実際の「羽冠」は、確かに身長こそ低かったが、その体はげっそりと痩せていた。
(なるほど、そりゃ体が重たくもなるわな。貴重品やら武器やら、あれこれ身に着けて放浪してるってことか。
この小屋の中を見ればもっとはっきり推理できただろうが、……いや、そりゃもう推理じゃねーな)
博打に臨むにあたって、まずエミルたちは「羽冠」に、小屋の中を掃除させた。これ以上マギーを外に置いておくわけには行かなかったし、と言って、中の惨状をまだ若い彼女に見せるわけには行かなかったからである。
もう一つの理由として、「羽冠」からの妨害や、いわゆる「イカサマ」の可能性を封じておきたかったからである。この小屋はずっと「羽冠」が使っていた、いわば相手のテリトリーである。前もって洗っておかなければどんな邪魔が入るか、洞察に長けたエミルたち二人であっても予測しきれないためだ。
更にもう一つ挙げるとするならば――エミルたちが踏み込んだ時、小屋の中にはいかにも呪術に使われそうな、怪しげな道具があちこちに置かれており、「何をされるか分からない」と言う懸念、おそれが強かったのだ。
「片付けた。中、もう血の匂いしない」
「ば、バカ! 黙ってろ!」
「……」
マギーは顔を真っ蒼にして、小屋の隅にうずくまっている。どうやら小屋の外で、エミルたちの会話を聞いていたらしい。
「マギー」
「……」
「その……」
「……」
マギーの目に光は無い。相当なショックを受けているようだった。
「……仇は、取るわ」
「……」
マギーはこくんとうなずき、そのまま膝に顔を埋めてしまった。
「賭け、何にする?」
「そうだな……」
アデルはカードを手に取り、軽くシャッフルしつつ答えた。
「ポーカーはどうだ?」
「それも決める。私が聞いたのは、賭けるもの」
「……ああ、そうだよな。それも決めなきゃな。
俺たちが勝てば、お前の身柄を確保させてもらう。そのまま州立刑務所に引きずって行くからな」
「分かった」
あっさりと応じられ、アデルは面食らう。
「いいのかよ? 俺たちがいきなり勝ったらお前、あっさり絞首刑だぞ?
ギャンブルで人を殺したって話はまだ疑いの範疇だが、それよりもはっきり、3人の人間をバラバラにして犬に食わせるなんてクソみたいなことを、俺たちの目の前でしてやがったからな。
俺たちの証言だけでも実刑は確実だ。その上余罪がはっきりすれば、終身刑や極刑は免れないだろう。それを分かってて、いいって言ってんのか?」
「一回でも負けることがあるなら、私は受け入れる」
これもまた、「羽冠」はあっさりと言ってのけた。
「……チッ」
「私が勝てば、一局ごとに100ドル」
「いいだろう。……いや、待て」
アデルは財布を尻ポケットから出し、中身を確認する。
「……悪い。金はあまり持ち合わせてない。他には無いか?」
「では、まずはお前のガンからもらう」
「分かった。それでいい」
アデルは背負っていた小銃を床に置き、テーブルに着く。
「さっきも言った通り、ポーカーで構わないか?」
「いい」
「エミル、一緒にやるぞ」
「ええ」
エミルもテーブルに着き、続いて「羽冠」も座る。
「……ああ、そうだ」
と、アデルがテーブルを離れ、うずくまっていたマギーに声をかける。
「悪い、マギー。ディーラーをやってくれ」
「え……」
「公平にやる以上、俺たちも『羽冠』の野郎も、ディーラーをやるわけに行かないからな」
「でもわたし、ギャンブルなんて……」
「カードを配ってくれるだけでいい」
「……それ、なら」
蒼ざめた顔のまま、マギーもテーブルに着く。
4人が均等に座ったところで、ポーカーが始められた。
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博打の始まり。
7.
アデルの推理は残念ながら1点、外れていた。
アデルは「羽冠」の体格を小柄な肥満体と考えていた。しかし実際の「羽冠」は、確かに身長こそ低かったが、その体はげっそりと痩せていた。
(なるほど、そりゃ体が重たくもなるわな。貴重品やら武器やら、あれこれ身に着けて放浪してるってことか。
この小屋の中を見ればもっとはっきり推理できただろうが、……いや、そりゃもう推理じゃねーな)
博打に臨むにあたって、まずエミルたちは「羽冠」に、小屋の中を掃除させた。これ以上マギーを外に置いておくわけには行かなかったし、と言って、中の惨状をまだ若い彼女に見せるわけには行かなかったからである。
もう一つの理由として、「羽冠」からの妨害や、いわゆる「イカサマ」の可能性を封じておきたかったからである。この小屋はずっと「羽冠」が使っていた、いわば相手のテリトリーである。前もって洗っておかなければどんな邪魔が入るか、洞察に長けたエミルたち二人であっても予測しきれないためだ。
更にもう一つ挙げるとするならば――エミルたちが踏み込んだ時、小屋の中にはいかにも呪術に使われそうな、怪しげな道具があちこちに置かれており、「何をされるか分からない」と言う懸念、おそれが強かったのだ。
「片付けた。中、もう血の匂いしない」
「ば、バカ! 黙ってろ!」
「……」
マギーは顔を真っ蒼にして、小屋の隅にうずくまっている。どうやら小屋の外で、エミルたちの会話を聞いていたらしい。
「マギー」
「……」
「その……」
「……」
マギーの目に光は無い。相当なショックを受けているようだった。
「……仇は、取るわ」
「……」
マギーはこくんとうなずき、そのまま膝に顔を埋めてしまった。
「賭け、何にする?」
「そうだな……」
アデルはカードを手に取り、軽くシャッフルしつつ答えた。
「ポーカーはどうだ?」
「それも決める。私が聞いたのは、賭けるもの」
「……ああ、そうだよな。それも決めなきゃな。
俺たちが勝てば、お前の身柄を確保させてもらう。そのまま州立刑務所に引きずって行くからな」
「分かった」
あっさりと応じられ、アデルは面食らう。
「いいのかよ? 俺たちがいきなり勝ったらお前、あっさり絞首刑だぞ?
ギャンブルで人を殺したって話はまだ疑いの範疇だが、それよりもはっきり、3人の人間をバラバラにして犬に食わせるなんてクソみたいなことを、俺たちの目の前でしてやがったからな。
俺たちの証言だけでも実刑は確実だ。その上余罪がはっきりすれば、終身刑や極刑は免れないだろう。それを分かってて、いいって言ってんのか?」
「一回でも負けることがあるなら、私は受け入れる」
これもまた、「羽冠」はあっさりと言ってのけた。
「……チッ」
「私が勝てば、一局ごとに100ドル」
「いいだろう。……いや、待て」
アデルは財布を尻ポケットから出し、中身を確認する。
「……悪い。金はあまり持ち合わせてない。他には無いか?」
「では、まずはお前のガンからもらう」
「分かった。それでいい」
アデルは背負っていた小銃を床に置き、テーブルに着く。
「さっきも言った通り、ポーカーで構わないか?」
「いい」
「エミル、一緒にやるぞ」
「ええ」
エミルもテーブルに着き、続いて「羽冠」も座る。
「……ああ、そうだ」
と、アデルがテーブルを離れ、うずくまっていたマギーに声をかける。
「悪い、マギー。ディーラーをやってくれ」
「え……」
「公平にやる以上、俺たちも『羽冠』の野郎も、ディーラーをやるわけに行かないからな」
「でもわたし、ギャンブルなんて……」
「カードを配ってくれるだけでいい」
「……それ、なら」
蒼ざめた顔のまま、マギーもテーブルに着く。
4人が均等に座ったところで、ポーカーが始められた。
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NoTitle
この時代だったら、ドロー・ポーカーですね。手札を交換できるやつ。
でもポーカーは賭け金を操作するところに面白さがあるゲームだからなあ。賭け金が固定された勝負には向いてないような気もする。
まあお手並み拝見というところであります(^^)
でもポーカーは賭け金を操作するところに面白さがあるゲームだからなあ。賭け金が固定された勝負には向いてないような気もする。
まあお手並み拝見というところであります(^^)
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NoTitle
丁度この時代辺りから始まったっぽいですし。
ちなみに現在執筆中の「白猫夢 第6部」でも、
ポーカーを行うシーンがあります。
ホールデムのルールがまだ良く分かっていないので、
覚える目的も兼ねて書いています。