DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 8
ウエスタン小説、第8話。
ホールデム。
8.
「まず、1人につき2枚ずつ配ってくれ」
「は、はい」
アデルから説明を受けつつ、マギーはたどたどしくカードを配っていく。
「で、これを俺たちが確認して、その2枚で勝負するか降りるかを決める。ここで全員降りたら仕切り直しだ。
1人でも勝負するって奴がいれば、そこでまず1枚、チップを賭ける」
話している間に、3人の手札確認が終わる。
まずはエミルがチップを1枚、テーブルの中央に置く。
「ベット(チップを賭けること)」
対する「羽冠」もチップを置く。
「コール(同額のチップを出し、賭けに乗ること)」
一方、マギーに説明しながら自分の手札を確認したアデルは首を振る。
「……ドロップ(勝負から降りること)だ。
で、2人が勝負すると言ったから、ここで君がカードをシャッフルしてから、テーブルに3枚置いてくれ。
俺たちは手持ちの2枚とそのテーブル上の3枚で、役を作る。もし作れない、無理だろうなと思ったら、ここでチェック(パスすること)できる。
全員チェックなら、さらにもう1枚テーブルに置いてくれ。そこで改めて、チェックするか勝負するか決める。
ここで1人だけ勝負できるって奴が出れば、そこでさらにチップを賭けた上で、手役を確認。ちゃんと手役が作れていれば、そこでそいつの勝ちになる。
2人以上勝負できる奴がいた場合は、どちらもチップを賭けてから手役を見せ合う。その場合は手役の強い方が勝ちだ。
勝った奴はそこまで賭けていたチップを総取りする。この流れで1ゲームだ。
何ゲームか繰り返し、先にチップが無くなった方が負けだ」
マギーがテーブルに置いたのは、それぞれクラブの2、5、9だった。
これを見て、エミルはさらにチップを賭ける。
「レイズ(ベットしている状態から、さらに上乗せすること)」
そう言いながら、エミルは卓の下でピン、と親指、人差し指、中指を立てて見せる。
(スリーカードができてる。行けるわ)
(マジで?)
が、「羽冠」も眉ひとつ動かさず、チップを上乗せしてきた。
「コール」
「……いいわよ」
エミルと「羽冠」が、互いに手札を開く。
「……っ」
エミルが自分で言った通り、彼女の手役は2のスリーカードである。
しかし――「羽冠」の手役はそのはるか上を行く、クラブのフラッシュだった。
1局の勝負における手持ちチップはそれぞれ10枚ずつだったが、ゲームを5回行ったところで、エミルたちのチップは手元から消えた。
言うまでも無く、「羽冠」の勝利である。
「……」「……」
この結果に、エミルもアデルも渋い顔をするしか無かった。
「まずはガン、もらう」
そう言って「羽冠」は、床に置かれていたアデルの小銃をつかんで後ろに放り投げた。
「おい、乱暴に扱うなよ!」
咎めたアデルに対し、「羽冠」はにべもなく返した。
「もう私のもの。私がどうしようが、私の勝手」
「~ッ」
アデルは悔しそうな顔を見せていたが、一方のエミルは、彼の振舞いに演技臭いものを感じていた。
(出たわね。このわざとらしい、大げさなパフォーマンス!
……何か、やる気ね?)
エミルの様子に気付いたらしく、アデルがさも悔しそうに顔を覆って見せた、その裏で――エミルに向かって、ニヤリと笑いかけてきた。
その上でバン、とテーブルを叩いて見せ、怒ったような顔を作って叫ぶ。
「……ああ、くそッ! もう一勝負だ!」
「構わない」
相手が応じ、すぐに次の一局が始められた。
たどたどしくマギーが切ったカードを確認し、アデルが上ずった声を出す。
「よっし、……い、いや」
と、その語調を急に落とし、迷ったような口ぶりをする。
「……いや、……うーん、……行けるか。よし、行くぞ! ベット!」
「コール」
この回のゲームはエミルが降り、アデルと「羽冠」との勝負になる。
続いてマギーがもう一枚配り、それを見たアデルがまた、顔を覆って見せる。
「うー……ん、どうするかな、……まあ、行けるか。レイズ!」「おい」
と、ここまでほとんど無表情だった「羽冠」が、ギロリとにらんできた。
「……な、何だよ? 早くコールかチェックか……」「袖をまくれ」「えっ」
「羽冠」に袖口を指され、アデルの額にじわ……、と汗が浮き出る。
「まくれ」
「……ああ」
アデルは観念し、袖をまくる。
そこからぱらぱらと、カードが落ちてきた。
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ホールデム。
8.
「まず、1人につき2枚ずつ配ってくれ」
「は、はい」
アデルから説明を受けつつ、マギーはたどたどしくカードを配っていく。
「で、これを俺たちが確認して、その2枚で勝負するか降りるかを決める。ここで全員降りたら仕切り直しだ。
1人でも勝負するって奴がいれば、そこでまず1枚、チップを賭ける」
話している間に、3人の手札確認が終わる。
まずはエミルがチップを1枚、テーブルの中央に置く。
「ベット(チップを賭けること)」
対する「羽冠」もチップを置く。
「コール(同額のチップを出し、賭けに乗ること)」
一方、マギーに説明しながら自分の手札を確認したアデルは首を振る。
「……ドロップ(勝負から降りること)だ。
で、2人が勝負すると言ったから、ここで君がカードをシャッフルしてから、テーブルに3枚置いてくれ。
俺たちは手持ちの2枚とそのテーブル上の3枚で、役を作る。もし作れない、無理だろうなと思ったら、ここでチェック(パスすること)できる。
全員チェックなら、さらにもう1枚テーブルに置いてくれ。そこで改めて、チェックするか勝負するか決める。
ここで1人だけ勝負できるって奴が出れば、そこでさらにチップを賭けた上で、手役を確認。ちゃんと手役が作れていれば、そこでそいつの勝ちになる。
2人以上勝負できる奴がいた場合は、どちらもチップを賭けてから手役を見せ合う。その場合は手役の強い方が勝ちだ。
勝った奴はそこまで賭けていたチップを総取りする。この流れで1ゲームだ。
何ゲームか繰り返し、先にチップが無くなった方が負けだ」
マギーがテーブルに置いたのは、それぞれクラブの2、5、9だった。
これを見て、エミルはさらにチップを賭ける。
「レイズ(ベットしている状態から、さらに上乗せすること)」
そう言いながら、エミルは卓の下でピン、と親指、人差し指、中指を立てて見せる。
(スリーカードができてる。行けるわ)
(マジで?)
が、「羽冠」も眉ひとつ動かさず、チップを上乗せしてきた。
「コール」
「……いいわよ」
エミルと「羽冠」が、互いに手札を開く。
「……っ」
エミルが自分で言った通り、彼女の手役は2のスリーカードである。
しかし――「羽冠」の手役はそのはるか上を行く、クラブのフラッシュだった。
1局の勝負における手持ちチップはそれぞれ10枚ずつだったが、ゲームを5回行ったところで、エミルたちのチップは手元から消えた。
言うまでも無く、「羽冠」の勝利である。
「……」「……」
この結果に、エミルもアデルも渋い顔をするしか無かった。
「まずはガン、もらう」
そう言って「羽冠」は、床に置かれていたアデルの小銃をつかんで後ろに放り投げた。
「おい、乱暴に扱うなよ!」
咎めたアデルに対し、「羽冠」はにべもなく返した。
「もう私のもの。私がどうしようが、私の勝手」
「~ッ」
アデルは悔しそうな顔を見せていたが、一方のエミルは、彼の振舞いに演技臭いものを感じていた。
(出たわね。このわざとらしい、大げさなパフォーマンス!
……何か、やる気ね?)
エミルの様子に気付いたらしく、アデルがさも悔しそうに顔を覆って見せた、その裏で――エミルに向かって、ニヤリと笑いかけてきた。
その上でバン、とテーブルを叩いて見せ、怒ったような顔を作って叫ぶ。
「……ああ、くそッ! もう一勝負だ!」
「構わない」
相手が応じ、すぐに次の一局が始められた。
たどたどしくマギーが切ったカードを確認し、アデルが上ずった声を出す。
「よっし、……い、いや」
と、その語調を急に落とし、迷ったような口ぶりをする。
「……いや、……うーん、……行けるか。よし、行くぞ! ベット!」
「コール」
この回のゲームはエミルが降り、アデルと「羽冠」との勝負になる。
続いてマギーがもう一枚配り、それを見たアデルがまた、顔を覆って見せる。
「うー……ん、どうするかな、……まあ、行けるか。レイズ!」「おい」
と、ここまでほとんど無表情だった「羽冠」が、ギロリとにらんできた。
「……な、何だよ? 早くコールかチェックか……」「袖をまくれ」「えっ」
「羽冠」に袖口を指され、アデルの額にじわ……、と汗が浮き出る。
「まくれ」
「……ああ」
アデルは観念し、袖をまくる。
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