DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 9
ウエスタン小説、第9話。
一触即発。
9.
「お前、賭けを穢(けが)したな」
怒りに満ちた目で、「羽冠」がアデルをにらみつける。
「いや、その、まあ」
「私、言ったはず。賭けの結果と、神の言葉には従うと。
私は賭けと神の言葉、同じと考えている。賭けでズルをする奴、神を冒涜したのと同じと考えている」
「……だから?」
ふてぶてしく、アデルが口を開く。
「何かペナルティを課せ、ってことか?」
「そう。
お前たちが神を冒涜したら、その神から見放されると聞く。確か、は……、は……、『破門』と言うのか」
「そうね」
「お前たちにとってそれは、死を受けたに等しい罰だとも聞いている」
「カトリックの人たちならそうらしいわね」
「それに準じてもらう」
そう言って、「羽冠」はアデルのものだった小銃を拾い、撃鉄を起こした。
「うわっ、ちょ、ま、ま、待て、待て!」
丸腰のアデルはテーブルから飛ぶように離れ、後ずさりする。
「ちょ、ちょっとした出来心、いたずらみたいなもんだろ!?」
「許さない」
「待てって! お前が俺たちの宗教観に準じて罰を課すって言うならだ、聖書にだって『罪を犯した時、7の70倍くらいの回数は許してやっていい』って言葉があるんだから、1回くらいは大目に見てくれよ! な!」
「知らない」
「羽冠」はにべも無くそう返し、小銃を構えた。
が――構えたままで、その動きは止まる。
「撃てば、撃つか?」
「そのつもりよ」
エミルが「羽冠」に向け、拳銃を構えていたからだ。

「当たらない」
「当てるまで撃つわ。こんなバカでも、あたしには大事な相棒だもの。死んだら仇くらい討ってやらなきゃ」
「……」
場はしばらく硬直していたが、やがて「羽冠」が小銃を下ろし、撃鉄を戻した。
「いいだろう。許してやる」
「……は、ぁ」
アデルは顔面一杯に冷や汗をかき、その場にへたり込んだ。
「だが、もう賭けはさせない。賭けを冒涜した奴に、テーブルに着く資格、無い」
「いいわ。後はあたしとあんたで勝負しましょう。
でも、一つこっちから提案させてもらいたいんだけど、いいかしら?」
「……何だ?」
「何って、あんたに有利過ぎやしないかってことよ」
エミルは「羽冠」を指差し、続いてテーブルの上のカードを指す。
「あんたのねぐらにあったテーブルに着いて、あんたが用意したカードで勝負。で、こっちがちょっとでも変則的なことをしたら即ズドンだなんて、あんまりにも一方的じゃない」
「それが何だ? お前たちがやると言った」
「それでもよ。あんたの言う『賭け』って、公平だからこそやるんじゃないの? ハナっからあんたが圧倒的有利だって分かってるのに、それをあんたは公平って言うわけ?」
「……何が言いたい」
しわが深く刻まれた顔をしかめさせる「羽冠」に、エミルはこんな提案をした。
「ギャンブルのタネはこっちで用意させて欲しいんだけど、いいかしら?」
「ん……」
「どの道あんた、どんなギャンブルでも負ける気しないんでしょ? それとも自分のカードじゃないと、心もとない?」
「……ああ。いいだろう。どんなものでも、構わない」
結局「羽冠」が折れ、エミルが一度町に戻り、ギャンブル用の道具を調達することになった。
アデルが銃を奪われているため、町へはエミル一人が戻ることとなった。ちなみにマギーも町には戻らず、自分から「羽冠」を見張ると申し出ていた。
「本当に大丈夫?」
「はい」
マギーは顔を蒼くしながらも、はっきりとした口調で答える。
「あなたたちが父の仇を討ってくれるところを見たいんです。わたしにはできないことですから」
「……ええ。約束するわ。
こいつは絶対、あたしが仕留める」
エミルは「羽冠」を指差し、そう断言した。
(……と言っても。どうすればいいやら、ね)
エミルは町に戻る前に、アデルと共に、打つ手を検討することにした。
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一触即発。
9.
「お前、賭けを穢(けが)したな」
怒りに満ちた目で、「羽冠」がアデルをにらみつける。
「いや、その、まあ」
「私、言ったはず。賭けの結果と、神の言葉には従うと。
私は賭けと神の言葉、同じと考えている。賭けでズルをする奴、神を冒涜したのと同じと考えている」
「……だから?」
ふてぶてしく、アデルが口を開く。
「何かペナルティを課せ、ってことか?」
「そう。
お前たちが神を冒涜したら、その神から見放されると聞く。確か、は……、は……、『破門』と言うのか」
「そうね」
「お前たちにとってそれは、死を受けたに等しい罰だとも聞いている」
「カトリックの人たちならそうらしいわね」
「それに準じてもらう」
そう言って、「羽冠」はアデルのものだった小銃を拾い、撃鉄を起こした。
「うわっ、ちょ、ま、ま、待て、待て!」
丸腰のアデルはテーブルから飛ぶように離れ、後ずさりする。
「ちょ、ちょっとした出来心、いたずらみたいなもんだろ!?」
「許さない」
「待てって! お前が俺たちの宗教観に準じて罰を課すって言うならだ、聖書にだって『罪を犯した時、7の70倍くらいの回数は許してやっていい』って言葉があるんだから、1回くらいは大目に見てくれよ! な!」
「知らない」
「羽冠」はにべも無くそう返し、小銃を構えた。
が――構えたままで、その動きは止まる。
「撃てば、撃つか?」
「そのつもりよ」
エミルが「羽冠」に向け、拳銃を構えていたからだ。

「当たらない」
「当てるまで撃つわ。こんなバカでも、あたしには大事な相棒だもの。死んだら仇くらい討ってやらなきゃ」
「……」
場はしばらく硬直していたが、やがて「羽冠」が小銃を下ろし、撃鉄を戻した。
「いいだろう。許してやる」
「……は、ぁ」
アデルは顔面一杯に冷や汗をかき、その場にへたり込んだ。
「だが、もう賭けはさせない。賭けを冒涜した奴に、テーブルに着く資格、無い」
「いいわ。後はあたしとあんたで勝負しましょう。
でも、一つこっちから提案させてもらいたいんだけど、いいかしら?」
「……何だ?」
「何って、あんたに有利過ぎやしないかってことよ」
エミルは「羽冠」を指差し、続いてテーブルの上のカードを指す。
「あんたのねぐらにあったテーブルに着いて、あんたが用意したカードで勝負。で、こっちがちょっとでも変則的なことをしたら即ズドンだなんて、あんまりにも一方的じゃない」
「それが何だ? お前たちがやると言った」
「それでもよ。あんたの言う『賭け』って、公平だからこそやるんじゃないの? ハナっからあんたが圧倒的有利だって分かってるのに、それをあんたは公平って言うわけ?」
「……何が言いたい」
しわが深く刻まれた顔をしかめさせる「羽冠」に、エミルはこんな提案をした。
「ギャンブルのタネはこっちで用意させて欲しいんだけど、いいかしら?」
「ん……」
「どの道あんた、どんなギャンブルでも負ける気しないんでしょ? それとも自分のカードじゃないと、心もとない?」
「……ああ。いいだろう。どんなものでも、構わない」
結局「羽冠」が折れ、エミルが一度町に戻り、ギャンブル用の道具を調達することになった。
アデルが銃を奪われているため、町へはエミル一人が戻ることとなった。ちなみにマギーも町には戻らず、自分から「羽冠」を見張ると申し出ていた。
「本当に大丈夫?」
「はい」
マギーは顔を蒼くしながらも、はっきりとした口調で答える。
「あなたたちが父の仇を討ってくれるところを見たいんです。わたしにはできないことですから」
「……ええ。約束するわ。
こいつは絶対、あたしが仕留める」
エミルは「羽冠」を指差し、そう断言した。
(……と言っても。どうすればいいやら、ね)
エミルは町に戻る前に、アデルと共に、打つ手を検討することにした。
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ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
ありがとうございます!
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