DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 10
ウエスタン小説、第10話。
オカルトの中身。
10.
念のため、マギーに予備の短銃を渡して小屋に残し、エミルとアデルは相談していた。
「大丈夫かな、マギー」
「大丈夫よ。相手にも『この子を襲ったら、あたしが町に戻って用意するのはギャンブルのタネじゃなく、箱一杯のダイナマイトになるわよ』って念押ししたし」
「ま、手早く相談を終わらせりゃ問題ないか」
状況整理のため、エミルが起こっていた事実を挙げていく。
「まず第一に、あいつが神の言葉を聞いてるなんてことは、まずありえないわ」
「どうしてそう言える? あの神がかり的な強さは、どう説明するんだ?」
「確かに異様な強さと言っていいわね。とても生半可な腕やツキじゃ、太刀打ちできないくらいだった。
でももし神託を聞いている、言い換えれば『あらゆる物事について完全な情報を超自然的な方法で得ていて、相手がどんな手を持っているか、勝負する前から分かっている』と言うのなら、あんたがイカサマした時の反応はおかしい。明らかに遅いわ」
「遅いって?」
「もし事前にイカサマしてるってことが分かってたなら――イカサマに対してあんなキレ方するくらいだし――勝負に入る前に止めるはずよ。コールなんかするわけない。
なのにあいつは勝負に乗ってから、イカサマをとがめた。つまり勝負に入るまで気付かなかったってことになる。だから神託を聞いたなんて眉唾な話は、まず嘘よ」
「なるほどな」
「他にももう一つ、気になることがあるわ。あたしたちが小屋に入ってすぐの時、あいつと野犬とを一緒に狙って撃ったけど、あいつには当たらなかった」
「相当運がいい、ってことか……」
アデルの返答に、エミルははあ、とため息をついた。
「あんたね、仮にも探偵だって言うなら、話のオチを片っ端からオカルトで付けないでよ。何かの理由があるに決まってるでしょ?
これもまあ、考えればそれなりには説明が付けられるのよ。野犬と中年男とじゃ、直感的にどっちが危険だと思う?」
「まあ、野犬だな。……ふむ」
今度は先程より、まともな答えを返す。
「つまり、あいつは俺たちがどんな行動に出るか、予測が付いてたってことか。
先に野犬を撃つ分、自分が狙われるまでに若干の余裕ができるし、その間に相手がどんなタイミングで発砲するかも把握できる。
それが分かれば、銃を撃ってくる瞬間を狙ってかわせば、弾は当たらない、……ってことになるな」
「多分、そうでしょうね。そしてこれは、あらゆることにつながってる気がする」
「……ん、ん?」
またも間抜けな顔をしたアデルを見て、エミルは苛立たしげに説明する。
「あいつはあたしたちの行動を読んで、賭けを有利に運んでるってことじゃないかしら」
「俺たちの行動を? うーん……、まあ、いい手が来ればそわそわもするし、ゴミ手が入れば勢いは落ちる。
相手のそう言う、ちょっとした様子の違いを、あいつは正確に読んでる、……ってことか?」
「多分ね。それと多分、観察眼も相当に鋭いわ。
あんたが100ドル持ってないってことを、あいつはすぐに見抜いたもの」
「え?」
「先に銃を奪い、あんたからの攻撃手段を完璧に奪い、かつ、簡単に帰れないようにしたかったからよ。あんたがもっと持ってたら、多分あいつは賭け金を吊り上げたでしょうね。
お金が無いなら代わりのものを出さなきゃ、賭けは成立しない。そこで銃を出せと言われたら、出さざるを得なくなるでしょ?」
「確かに……。
じゃあ全部、あいつの計算通りに運んでたってわけか。……しかし、それだとなおのこと、打つ手なんか見当たらねえな」
「そんなこと言ってちゃ、何にもできないでしょ? 何か探さなきゃ」
「だな。……本気でマイト持って来るしかないかなぁ」
「バカ。
もういいわ。あたしが何とかしてみる」
エミルは踵を返し、町へと戻っていった。
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オカルトの中身。
10.
念のため、マギーに予備の短銃を渡して小屋に残し、エミルとアデルは相談していた。
「大丈夫かな、マギー」
「大丈夫よ。相手にも『この子を襲ったら、あたしが町に戻って用意するのはギャンブルのタネじゃなく、箱一杯のダイナマイトになるわよ』って念押ししたし」
「ま、手早く相談を終わらせりゃ問題ないか」
状況整理のため、エミルが起こっていた事実を挙げていく。
「まず第一に、あいつが神の言葉を聞いてるなんてことは、まずありえないわ」
「どうしてそう言える? あの神がかり的な強さは、どう説明するんだ?」
「確かに異様な強さと言っていいわね。とても生半可な腕やツキじゃ、太刀打ちできないくらいだった。
でももし神託を聞いている、言い換えれば『あらゆる物事について完全な情報を超自然的な方法で得ていて、相手がどんな手を持っているか、勝負する前から分かっている』と言うのなら、あんたがイカサマした時の反応はおかしい。明らかに遅いわ」
「遅いって?」
「もし事前にイカサマしてるってことが分かってたなら――イカサマに対してあんなキレ方するくらいだし――勝負に入る前に止めるはずよ。コールなんかするわけない。
なのにあいつは勝負に乗ってから、イカサマをとがめた。つまり勝負に入るまで気付かなかったってことになる。だから神託を聞いたなんて眉唾な話は、まず嘘よ」
「なるほどな」
「他にももう一つ、気になることがあるわ。あたしたちが小屋に入ってすぐの時、あいつと野犬とを一緒に狙って撃ったけど、あいつには当たらなかった」
「相当運がいい、ってことか……」
アデルの返答に、エミルははあ、とため息をついた。
「あんたね、仮にも探偵だって言うなら、話のオチを片っ端からオカルトで付けないでよ。何かの理由があるに決まってるでしょ?
これもまあ、考えればそれなりには説明が付けられるのよ。野犬と中年男とじゃ、直感的にどっちが危険だと思う?」
「まあ、野犬だな。……ふむ」
今度は先程より、まともな答えを返す。
「つまり、あいつは俺たちがどんな行動に出るか、予測が付いてたってことか。
先に野犬を撃つ分、自分が狙われるまでに若干の余裕ができるし、その間に相手がどんなタイミングで発砲するかも把握できる。
それが分かれば、銃を撃ってくる瞬間を狙ってかわせば、弾は当たらない、……ってことになるな」
「多分、そうでしょうね。そしてこれは、あらゆることにつながってる気がする」
「……ん、ん?」
またも間抜けな顔をしたアデルを見て、エミルは苛立たしげに説明する。
「あいつはあたしたちの行動を読んで、賭けを有利に運んでるってことじゃないかしら」
「俺たちの行動を? うーん……、まあ、いい手が来ればそわそわもするし、ゴミ手が入れば勢いは落ちる。
相手のそう言う、ちょっとした様子の違いを、あいつは正確に読んでる、……ってことか?」
「多分ね。それと多分、観察眼も相当に鋭いわ。
あんたが100ドル持ってないってことを、あいつはすぐに見抜いたもの」
「え?」
「先に銃を奪い、あんたからの攻撃手段を完璧に奪い、かつ、簡単に帰れないようにしたかったからよ。あんたがもっと持ってたら、多分あいつは賭け金を吊り上げたでしょうね。
お金が無いなら代わりのものを出さなきゃ、賭けは成立しない。そこで銃を出せと言われたら、出さざるを得なくなるでしょ?」
「確かに……。
じゃあ全部、あいつの計算通りに運んでたってわけか。……しかし、それだとなおのこと、打つ手なんか見当たらねえな」
「そんなこと言ってちゃ、何にもできないでしょ? 何か探さなきゃ」
「だな。……本気でマイト持って来るしかないかなぁ」
「バカ。
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