DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 12
ウエスタン小説、第12話。
下った天啓。
12.
その瞬間――太った男は飲んでいた酒を噴き出し、驚いた顔を見せた。
「な……っ!? んなバカな!」
「何で弾が出ねえ!?」
「え、だって弾、全部……」
この言葉を聞いた瞬間、彼はあらゆることを理解した。
(全部、実包だったのか……!
こいつらは、俺を何が何でも殺そうとしていた! しかも、俺の自殺に見せかけて! 自分たちには何の罪も無いと言いつくろおうとして!
こいつらは悪だ! 邪悪だ! 悪魔だッ! どうしてこんな奴らに、俺が、俺の妻が、俺の娘が、兄が、弟が、妹が、両親が、村のみんなが殺されなければならなかった!?
……! そうか……! 神よ、そうだと言うのか!?)
瞬間――彼は撃鉄を起こし、目の前の豚に向けて引き金を引く。
先程の不発弾と違い、今度はちゃんと弾が発射され、豚の顔面を撃ち抜いた。
「ぼげーッ!?」
鼻だったところにぽっかりと空いた穴から不気味な悲鳴を上げ、豚は仰向けになって倒れる。
「ぼ、ボス!?」
手下たちが慌てふためいたその一瞬も、彼は逃さなかった。残っていた4人の手下に、彼は一発ずつ、正確に、ほんの少しの動揺も無く、弾を撃ち込んだ。
全員があっけなく死に、彼一人になったところで、彼は英語でもフランス語でも、スペイン語でもない、かつて自分の村で使っていた言葉で、こうつぶやいた。
「(6発の弾。1発は俺を生かした。残った5発の弾。悪魔は丁度、5匹いた。
神は俺に、こいつらを殺せと命じたのだ。でなければどうして俺は生き残った? どうして弾は5発残っていた?
そして今、確信した。俺はこいつらを、白い豚共を殺さねばならない。それが宿命、運命なのだ。
……そして神の言葉を聞く限り、俺は死なない。こうして博打で生き残ったことこそが、その何よりの証拠だ。
神の言葉は、博打と共にある)」
「……おい! おい、って!」
「ん……」
アデルが何度か声をかけたところで、「羽冠」は顔を挙げた。
「おい、起きろよ」
「すまない。酒が回った。眠った、少し」
「戻って来たぞ、エミルが」
「そうか」
「羽冠」が目を覚ましたところで、エミルはテーブルにダイスを置いた。
「次はこれで勝負よ。ダイスを投げて、その数の合計で競うの。
ただ、次のルールを加えるわ。まず1つ目、ダイス3個のうち2個が同じ目になったら、合計の2倍。2つ目、ダイス3個とも同じ目が揃ったら、合計の3倍。
そして最後に、1の目が3つ揃った時は、合計を55(6のゾロ目×3=54より1つ上)とする。オーケー?」
「ああ」
「勝負は1回ごとに清算。それじゃまず、あたしは100ドル賭けるわ」
この額を聞き、アデルは目を丸くする。
「いいのかよ?」
「あんたと違って、あたしは貯金してるもの。それくらいのお金は持ち歩いてるわ」
「ちぇ、俺だって東部に帰れば貯金はそこそこ……」
ブツブツつぶやくアデルをよそに、エミルは「羽冠」に尋ねる。
「あんたが負けたら、その場で連行。これでいいわね」
「いい」
「それじゃあたしから振るわよ」
エミルはテーブルに置いていたダイスをつかみ、掌の上で軽く振る。
「それっ」
カラ、カラン……、と小気味のいい音を立て、ダイスは皿の上に落ちる。
「……」
エミルが出した目は、1・3・5。合計は9である。
「おいおい……」「ああ……」
あまりの出目の悪さに、アデルもマギーも苦い顔をしている。
「ま、様子見だから。
さあ、次はあんたの番よ」
「分かった」
「羽冠」もダイスを握り、そのまま手を離して皿に落とす。
「……は!?」
出た目を見て、アデルが素っ頓狂な声を漏らした。
「4・6・6、……16の2倍、32」
「……完敗ね」
エミルは肩をすくめ、100ドルをテーブルに投げた。
その100ドルをつかみながら、「羽冠」はエミルたちの知らない言葉でこうつぶやいた。
「(……やはり一片の紛れも無い。俺には依然として、神が味方しているのだ)」
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下った天啓。
12.
その瞬間――太った男は飲んでいた酒を噴き出し、驚いた顔を見せた。
「な……っ!? んなバカな!」
「何で弾が出ねえ!?」
「え、だって弾、全部……」
この言葉を聞いた瞬間、彼はあらゆることを理解した。
(全部、実包だったのか……!
こいつらは、俺を何が何でも殺そうとしていた! しかも、俺の自殺に見せかけて! 自分たちには何の罪も無いと言いつくろおうとして!
こいつらは悪だ! 邪悪だ! 悪魔だッ! どうしてこんな奴らに、俺が、俺の妻が、俺の娘が、兄が、弟が、妹が、両親が、村のみんなが殺されなければならなかった!?
……! そうか……! 神よ、そうだと言うのか!?)
瞬間――彼は撃鉄を起こし、目の前の豚に向けて引き金を引く。
先程の不発弾と違い、今度はちゃんと弾が発射され、豚の顔面を撃ち抜いた。
「ぼげーッ!?」
鼻だったところにぽっかりと空いた穴から不気味な悲鳴を上げ、豚は仰向けになって倒れる。
「ぼ、ボス!?」
手下たちが慌てふためいたその一瞬も、彼は逃さなかった。残っていた4人の手下に、彼は一発ずつ、正確に、ほんの少しの動揺も無く、弾を撃ち込んだ。
全員があっけなく死に、彼一人になったところで、彼は英語でもフランス語でも、スペイン語でもない、かつて自分の村で使っていた言葉で、こうつぶやいた。
「(6発の弾。1発は俺を生かした。残った5発の弾。悪魔は丁度、5匹いた。
神は俺に、こいつらを殺せと命じたのだ。でなければどうして俺は生き残った? どうして弾は5発残っていた?
そして今、確信した。俺はこいつらを、白い豚共を殺さねばならない。それが宿命、運命なのだ。
……そして神の言葉を聞く限り、俺は死なない。こうして博打で生き残ったことこそが、その何よりの証拠だ。
神の言葉は、博打と共にある)」
「……おい! おい、って!」
「ん……」
アデルが何度か声をかけたところで、「羽冠」は顔を挙げた。
「おい、起きろよ」
「すまない。酒が回った。眠った、少し」
「戻って来たぞ、エミルが」
「そうか」
「羽冠」が目を覚ましたところで、エミルはテーブルにダイスを置いた。
「次はこれで勝負よ。ダイスを投げて、その数の合計で競うの。
ただ、次のルールを加えるわ。まず1つ目、ダイス3個のうち2個が同じ目になったら、合計の2倍。2つ目、ダイス3個とも同じ目が揃ったら、合計の3倍。
そして最後に、1の目が3つ揃った時は、合計を55(6のゾロ目×3=54より1つ上)とする。オーケー?」
「ああ」
「勝負は1回ごとに清算。それじゃまず、あたしは100ドル賭けるわ」
この額を聞き、アデルは目を丸くする。
「いいのかよ?」
「あんたと違って、あたしは貯金してるもの。それくらいのお金は持ち歩いてるわ」
「ちぇ、俺だって東部に帰れば貯金はそこそこ……」
ブツブツつぶやくアデルをよそに、エミルは「羽冠」に尋ねる。
「あんたが負けたら、その場で連行。これでいいわね」
「いい」
「それじゃあたしから振るわよ」
エミルはテーブルに置いていたダイスをつかみ、掌の上で軽く振る。
「それっ」
カラ、カラン……、と小気味のいい音を立て、ダイスは皿の上に落ちる。
「……」
エミルが出した目は、1・3・5。合計は9である。
「おいおい……」「ああ……」
あまりの出目の悪さに、アデルもマギーも苦い顔をしている。
「ま、様子見だから。
さあ、次はあんたの番よ」
「分かった」
「羽冠」もダイスを握り、そのまま手を離して皿に落とす。
「……は!?」
出た目を見て、アデルが素っ頓狂な声を漏らした。
「4・6・6、……16の2倍、32」
「……完敗ね」
エミルは肩をすくめ、100ドルをテーブルに投げた。
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