DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 13
ウエスタン小説、第13話。
ウエスタン・ルーレット。
13.
その後も3回、ダイスを使って賭けを行ったが、そのすべてにエミルは負けた。
「ああ、そんな……」「なんでこうも出す目出す目、20やら30やら出るんだよ……」
「……」
だが、真っ青な顔をしているアデルたちに構わず、エミルはこんな提案をした。
「……ダメね。もうお金がすっからかんよ。残ってるのはこのスコフィールドくらい」
エミルは腰に提げていた拳銃を取り出し、テーブルに置いた。
「だからこれが、最後の勝負になるわね」
「……え?」
ぎょっとするアデルに答えず、エミルはこう続けた。
「多分こうなるだろうと思って、弾の出ない空包を5発用意してきたわ。
もう分かるわよね、何をしようとしてるのか?」
「ああ」
小さくうなずいた「羽冠」に、エミルは拳銃から空包を1発抜いて手渡す。
「薬莢のところに線が引いてあるでしょ? 見分けを付けるためだけど、ちゃんと5発あるか確認してちょうだい」
「ああ」
エミルに促され、「羽冠」はエミルの拳銃を確かめる。
「……空包が5発。線を引いてないの、1発。確認した」
「それじゃ弾倉を回すわよ」
「羽冠」から拳銃を返され、エミルは弾倉を何度か回した。
「さて、と。最後に、どっちが先に引き金を引くかだけど、これで決めましょう」
そう言ってエミルは、ポケットからコインを取り出した。
「表が出たらあんたが先に。裏が出たらあたしが先に引き金を引く、でどうかしら」
「そのコイン、見せろ」
「いいわよ」
エミルからコインを受け取り、「羽冠」は表面を爪で引っかいたり、指の腹でこすったりして確かめる。
「……普通の1セント」
「そうよ?」
「いいだろう、表が私、裏がお前」
エミルは「羽冠」から渡されたコインを上に放り投げ、落ちてきたところをキャッチした。
「……さあ、どっちが先に撃つことになるかしらね」
エミルはコインを持った手をテーブルに付け、そのまま手を離す。
コインは裏を向いていた。
「……っ!?」
何故か目を見開いた「羽冠」に構わず、エミルは拳銃を手に取る。
「あたしから、……ね」
エミルは銃口をこめかみに当て、撃鉄を起こす。
「まず……、あたしから」
「あ、あ」
場がしん、と静まり返る。
エミルの拳銃がカチン、と音を立てたが、弾は発射されなかった。
「はぁ……。次、あんたよ」
「……ああ」
エミルから拳銃を受け取り、「羽冠」が撃鉄を起こす。
「降参してもいいのよ?」
「しない」
カチン、と音が鳴る。
「次、お前」
「ええ」
もう一度エミルが拳銃を手にし、引き金を引く。
そしてこれも、弾が発射されることは無かった。
「あんたよ」
「……」
もう一度「羽冠」が手にし、引き金を引く。そして、弾は出ない。
「お……まえ」
「ええ」
エミルは3度、頭に銃口を当てて引き金を引く。
これも――弾が発射されることは無かった。
「……最後よ」
エミルから拳銃を受け取ろうとする「羽冠」の手が、震えている。
「分かってる?」
「……」
「次が最後よ」
「……」
「どうする? 降参する?」
「……」
「しないなら受け取って、頭に当てて引き金を引きなさい」
「……」
「どうするの?」
しばらく硬直していた「羽冠」は――やがて、拳銃を受け取った。
「どうして……、どうしてお前は」
「あたしの銃が、あたしを撃つわけがないじゃない」
「……そう言って死んだ奴、大勢いる」
「光栄ね。あたしが唯一ってわけね」
「……」
初めて絶望した顔を見せた「羽冠」は、こめかみに銃口を当て――。
「……い、や」
次の瞬間、「羽冠」はエミルに向けて銃を構え、引き金を引く。
パン、と言う鋭い音が、小屋の中にこだました。
@au_ringさんをフォロー
ウエスタン・ルーレット。
13.
その後も3回、ダイスを使って賭けを行ったが、そのすべてにエミルは負けた。
「ああ、そんな……」「なんでこうも出す目出す目、20やら30やら出るんだよ……」
「……」
だが、真っ青な顔をしているアデルたちに構わず、エミルはこんな提案をした。
「……ダメね。もうお金がすっからかんよ。残ってるのはこのスコフィールドくらい」
エミルは腰に提げていた拳銃を取り出し、テーブルに置いた。
「だからこれが、最後の勝負になるわね」
「……え?」
ぎょっとするアデルに答えず、エミルはこう続けた。
「多分こうなるだろうと思って、弾の出ない空包を5発用意してきたわ。
もう分かるわよね、何をしようとしてるのか?」
「ああ」
小さくうなずいた「羽冠」に、エミルは拳銃から空包を1発抜いて手渡す。
「薬莢のところに線が引いてあるでしょ? 見分けを付けるためだけど、ちゃんと5発あるか確認してちょうだい」
「ああ」
エミルに促され、「羽冠」はエミルの拳銃を確かめる。
「……空包が5発。線を引いてないの、1発。確認した」
「それじゃ弾倉を回すわよ」
「羽冠」から拳銃を返され、エミルは弾倉を何度か回した。
「さて、と。最後に、どっちが先に引き金を引くかだけど、これで決めましょう」
そう言ってエミルは、ポケットからコインを取り出した。
「表が出たらあんたが先に。裏が出たらあたしが先に引き金を引く、でどうかしら」
「そのコイン、見せろ」
「いいわよ」
エミルからコインを受け取り、「羽冠」は表面を爪で引っかいたり、指の腹でこすったりして確かめる。
「……普通の1セント」
「そうよ?」
「いいだろう、表が私、裏がお前」
エミルは「羽冠」から渡されたコインを上に放り投げ、落ちてきたところをキャッチした。
「……さあ、どっちが先に撃つことになるかしらね」
エミルはコインを持った手をテーブルに付け、そのまま手を離す。
コインは裏を向いていた。
「……っ!?」
何故か目を見開いた「羽冠」に構わず、エミルは拳銃を手に取る。
「あたしから、……ね」
エミルは銃口をこめかみに当て、撃鉄を起こす。
「まず……、あたしから」
「あ、あ」
場がしん、と静まり返る。
エミルの拳銃がカチン、と音を立てたが、弾は発射されなかった。
「はぁ……。次、あんたよ」
「……ああ」
エミルから拳銃を受け取り、「羽冠」が撃鉄を起こす。
「降参してもいいのよ?」
「しない」
カチン、と音が鳴る。
「次、お前」
「ええ」
もう一度エミルが拳銃を手にし、引き金を引く。
そしてこれも、弾が発射されることは無かった。
「あんたよ」
「……」
もう一度「羽冠」が手にし、引き金を引く。そして、弾は出ない。
「お……まえ」
「ええ」
エミルは3度、頭に銃口を当てて引き金を引く。
これも――弾が発射されることは無かった。
「……最後よ」
エミルから拳銃を受け取ろうとする「羽冠」の手が、震えている。
「分かってる?」
「……」
「次が最後よ」
「……」
「どうする? 降参する?」
「……」
「しないなら受け取って、頭に当てて引き金を引きなさい」
「……」
「どうするの?」
しばらく硬直していた「羽冠」は――やがて、拳銃を受け取った。
「どうして……、どうしてお前は」
「あたしの銃が、あたしを撃つわけがないじゃない」
「……そう言って死んだ奴、大勢いる」
「光栄ね。あたしが唯一ってわけね」
「……」
初めて絶望した顔を見せた「羽冠」は、こめかみに銃口を当て――。
「……い、や」
次の瞬間、「羽冠」はエミルに向けて銃を構え、引き金を引く。
パン、と言う鋭い音が、小屋の中にこだました。
- 関連記事
-
-
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 15 2013/08/15
-
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 14 2013/08/14
-
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 13 2013/08/13
-
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 12 2013/08/12
-
DETECTIVE WESTERN 2 ~死の博打~ 11 2013/08/11
-



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
Re: タイトルなし
「空包」という言葉にちょっと語弊がありました。
次の話でも説明している通り、
「雷管と火薬がセットされていない、薬莢と弾頭のみの構造」
というニュアンスで捉えていただけると幸いです。