短編・掌編
幻想的異種格闘
幻想的異種格闘
わしはいわゆる神である。
わしは怒っていた。ここ数十年、いや、百年を超えようかと言う時間、人間たちに忘れ去られていたからである。
神をないがしろにするとは何事か。その怒りはいよいよ頂点に達し、わしは今、人間たちに神罰を下すべく、野に降り立った。
「……お、う?」
ところが――いざ人の世に降り立ってみると、そこには荒野が広がっているばかりである。
「これは……、どうしたことか」
百年前に見た時には、どこもかしこも煌々(こうこう)と輝いていた街は、ほとんど跡形も無く壊滅していた。
「まさか、わしへの信仰がぱたりと途絶えたのは、絶滅でもしてしまったからか……?」
怒りに任せて修行ばかりしていたのが仇となったか。
まさか人々に忘れ去られているどころか、消えてしまっていたとは。
これではわしの方が忘れ去ったも同然ではないか。
不覚であった。
と、茫然としていたその時であった。
「た、たすけてぇ……」
どこからか、今にも消え入りそうな童(わらし)の声がする。
忘れられて久しいとはいえども、助けを呼ぶのであれば、報いてやらねば神が廃ると言うもの。
「どこじゃ? どこにおる? ……むっ!?」
声を頼りに探し、すぐにその童は見付かった。これくらいは容易い。何の不測もあるはずが無い。
不測であったのは――助けを呼んだその童のすぐ側に、異形の妖(あやかし)が立っておったからだ。
「なっ、なんじゃあ、此奴(こやつ)は!?」
長いこと生きてきたわしも、こんな輩を目にしたことは一度も無い。
とは言え、今まさに襲われようとしているのは間違いない。
妖は妙なものを――ぬるぬると照り光る、鉄砲のような――童に構えていたからだ。
わしはとっさに仙術を放ち、妖をはるか彼方へ弾き飛ばした。
助けた童はしきりに頭を下げ、わしに平伏した。
おお、なんと気持ちのいいものよ。やはり神はこうでなければ。
「で、童よ。今の妖はなんじゃ?」
「あや、か……? エイリアンのこと?」
「『鋭利闇』? けったいな名前じゃのう」
「おじさん、知らないの? もう1週間も前から世界中でニュースになってるのに。……テレビも2日前から映んないけど」
「うん……?」
聞くところによれば、空から「鋭利闇」なる異形の輩が「空飛ぶ円盤」なるものによって多数飛来し、人の世のそこかしこで乱暴狼藉を働いておるのだと言う。
「でもおじさん、すごいね」
「と言うと?」
「今まであのエイリアンを、あんなに簡単に撃退した人なんていなかったのに」
「ほう、そうであったか」
この一件が人の間でうわさとなり、わしはいつの間にか「地球防衛軍」なる組織に居つくこととなった。
前にも言った通り、神たるもの、人の救いを願う声には応えねばならぬのだ。
わしは長い修行で培った仙術の数々を惜しげも無く披露し、「鋭利闇」どもから人々を救い続けた。
そのうちに――わしは救世主と呼ばれるようになった。
いや、わし、神だから。
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わしはいわゆる神である。
わしは怒っていた。ここ数十年、いや、百年を超えようかと言う時間、人間たちに忘れ去られていたからである。
神をないがしろにするとは何事か。その怒りはいよいよ頂点に達し、わしは今、人間たちに神罰を下すべく、野に降り立った。
「……お、う?」
ところが――いざ人の世に降り立ってみると、そこには荒野が広がっているばかりである。
「これは……、どうしたことか」
百年前に見た時には、どこもかしこも煌々(こうこう)と輝いていた街は、ほとんど跡形も無く壊滅していた。
「まさか、わしへの信仰がぱたりと途絶えたのは、絶滅でもしてしまったからか……?」
怒りに任せて修行ばかりしていたのが仇となったか。
まさか人々に忘れ去られているどころか、消えてしまっていたとは。
これではわしの方が忘れ去ったも同然ではないか。
不覚であった。
と、茫然としていたその時であった。
「た、たすけてぇ……」
どこからか、今にも消え入りそうな童(わらし)の声がする。
忘れられて久しいとはいえども、助けを呼ぶのであれば、報いてやらねば神が廃ると言うもの。
「どこじゃ? どこにおる? ……むっ!?」
声を頼りに探し、すぐにその童は見付かった。これくらいは容易い。何の不測もあるはずが無い。
不測であったのは――助けを呼んだその童のすぐ側に、異形の妖(あやかし)が立っておったからだ。
「なっ、なんじゃあ、此奴(こやつ)は!?」
長いこと生きてきたわしも、こんな輩を目にしたことは一度も無い。
とは言え、今まさに襲われようとしているのは間違いない。
妖は妙なものを――ぬるぬると照り光る、鉄砲のような――童に構えていたからだ。
わしはとっさに仙術を放ち、妖をはるか彼方へ弾き飛ばした。
助けた童はしきりに頭を下げ、わしに平伏した。
おお、なんと気持ちのいいものよ。やはり神はこうでなければ。
「で、童よ。今の妖はなんじゃ?」
「あや、か……? エイリアンのこと?」
「『鋭利闇』? けったいな名前じゃのう」
「おじさん、知らないの? もう1週間も前から世界中でニュースになってるのに。……テレビも2日前から映んないけど」
「うん……?」
聞くところによれば、空から「鋭利闇」なる異形の輩が「空飛ぶ円盤」なるものによって多数飛来し、人の世のそこかしこで乱暴狼藉を働いておるのだと言う。
「でもおじさん、すごいね」
「と言うと?」
「今まであのエイリアンを、あんなに簡単に撃退した人なんていなかったのに」
「ほう、そうであったか」
この一件が人の間でうわさとなり、わしはいつの間にか「地球防衛軍」なる組織に居つくこととなった。
前にも言った通り、神たるもの、人の救いを願う声には応えねばならぬのだ。
わしは長い修行で培った仙術の数々を惜しげも無く披露し、「鋭利闇」どもから人々を救い続けた。
そのうちに――わしは救世主と呼ばれるようになった。
いや、わし、神だから。



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今日の旅岡さん

~ Comment ~
面白かったです。
ここは童に乗り移って、銀色の巨人に変化して仙術を使うべきだと思います。(^_^)/
もちろん、仙術を使う際には手を交差させたり額に当てたりするサービスも忘れてはいけません(^_^)
そうしたら信仰くらいすぐに取り戻せますって。(゚o゚☆\(^^ ;)エエカゲンニシナサイ
ここは童に乗り移って、銀色の巨人に変化して仙術を使うべきだと思います。(^_^)/
もちろん、仙術を使う際には手を交差させたり額に当てたりするサービスも忘れてはいけません(^_^)
そうしたら信仰くらいすぐに取り戻せますって。(゚o゚☆\(^^ ;)エエカゲンニシナサイ
NoTitle
ご笑覧いただき、ありがとうございます。
ソドムとゴモラの炎上やノアの大洪水と同時期に、
エイリアンの侵略があったとしたら、
きっと神様も人間に罰を与えるどころじゃなくなるでしょうね。
ソドムとゴモラの炎上やノアの大洪水と同時期に、
エイリアンの侵略があったとしたら、
きっと神様も人間に罰を与えるどころじゃなくなるでしょうね。
NoTitle
コメディですね!!久々に笑いました。
うん、そうですね、すごく楽しくて面白いですね。
個人的にツボにはまりました。
救世主が実は元々神とかありえそうですよね。
世界の危機のときは案外そういうことなのかもしれませんね。
うん、そうですね、すごく楽しくて面白いですね。
個人的にツボにはまりました。
救世主が実は元々神とかありえそうですよね。
世界の危機のときは案外そういうことなのかもしれませんね。
- #1715 LandM
- URL
- 2013.08/23 20:00
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NoTitle
最近の流行にあやかって、むしろ巨人を倒す側に(