黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第3部

    蒼天剣・魍魎録 3

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    晴奈の話、第142話。
    怯えるリスト/笑う大火。

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    3.
     花丘に到着した晴奈たちは、早速村長たちに話を聞いてみた。
    「鷹が現れたと聞き、こちらへと参ったのだが」
    「ええ、まあ。10人ほど、被害に遭いまして」
     村長たちによれば、鷹が村に現れたのは一月半ほど前。いつも突然空から現れ、村に悪さをするのだと言う。
     と言っても、始めは畑を荒らしたり、鶏などの小さな家畜を食い殺したりする程度だった。だが1週間ほど前、ついに人が殺されてしまったのだ。
    「死に方はそりゃもう、ひどいもんで……」
    「一体どのような?」
     後ろで「聞きたくない! 聞かないで! 聞いたら猫耳むしるわよ!」とわめくリストを無視し、晴奈が尋ねてみる。
    「そのー……。(いやーッ)やっぱり、やわらかいところが美味しいんだろう。その、(やめてぇぇ)頬とか、のどとか、目玉とか(ひいぃーッ)」
    「ふむ。……すまぬ、リスト。部屋から出てくれないか?」
    「そーするー……」
     騒ぎ立てるリストを部屋から出したところで、晴奈は話を再開した。
    「(普段から戦場で普通に人を撃っている者が、何故こんな話であれほどおびえるのか……?)コホン、話の腰を折ってしまったな」
    「いえ、まあ、結構気持ちの悪い話ですから」
    「聞いた感じでは、家畜や作物を狙う延長線上なのだな」
    「そのようです。村の者たちは皆、大鷹を恐れて閉じこもっております。
     このままでは農作業とか色々と影響が出てしまうので、早急に何とかしていただけないかと」
    「分かった。数日の間、こちらに詰めさせてもらう。その間に必ず何とかしよう」
    「よろしくお願いします」
    村長は晴奈に深々と頭を下げた。

    晴奈はとりあえず連れてきた兵士たちを花丘の周囲に配置させ、(いまだ涙目の)リストと共に、大鷹についての対策を練った。
    「空からの敵と言うのは正直、私にはどうすべきか見当もつかぬ」
    「まあ、ふつーの鳥とかなら、アタシがパンって撃っちゃえばすぐなんだけどさ」
    「だが今回の相手は、怪物だからな」
    リストは小さい子が「嫌々」をするように、頭を振る。
    「はうぅ……」
    「リスト、銃は大体どれくらいまでなら届く?」
    「ん、えっとね」
    リストは長方形のかばんから、この間黄商会が開発したばかりの狙撃銃を取り出す。
    「シメイさんトコが作ってくれたこの『黄雷一〇三号』なら、そうね……。必中は100、ううん、150メートル以内ってトコかな」
    「ふむ。ならば、こう言うのはどうだろうか?
    現れたら私が囮になる。ギリギリまで近づいたところで、リストが狙撃する。リストはどこか狙撃に都合のいい場所で待機し、現れるまで待つ」
    「それさ、もしアタシが先に狙われたらどーすんのよ」
    「ふむ……」
    晴奈は窓の外に眼を向け、思案する。
    「囮は別に作るか。私がリストと一緒に行動すれば、襲われても対処できるだろう」
    「何を囮にするの?」
    「兵士たちにやってもらおう。彼らなら村人のように無抵抗で殺されることもあるまい」
    「そうね。じゃあ、その方向で進めましょ」
     話がまとまったところで、リストが深いため息をついた。
    「はーぁ。帰りたいなぁ……」
    「そう言うな、これも……」「仕事なんだから、ねっ!」
     リストはぱたぱたと手を振り、晴奈の言葉をさえぎった。
    「分かってるわよ、分かってるんだけどね、バケモノ相手ってのが、もー」
    「まあ、なんだ。バケモノと言っても、相手は鷹だ。ただ、少しばかりなりがでかいだけの、な。バケモノと呼ぶには、大分獣寄りだそうだぞ。人を襲うと言っても、単に食糧としてしか見ていないと言うし」
    「そこよ、問題は。……ふつーの動物がさ、ヒトを食べる?」
    「……むう」
    (言われて見れば、その通りではあるな)
     晴奈はリストの主張を、ちょっとだけ納得してしまった。



    「ほう」
     ウィリアムからの話を聞き終えた大火は一言だけ発し、コーヒーに手をつけた。
     ナーガの存在がどうにも不気味でならなくなったため、ウィリアムは大火を呼び出し相談していた。
    「本当に、気味が悪くて」
    「そうか。……だがウィリアム、この俺をわざわざ南海の孤島から呼び出してする話か、それは?」
    「いや、これはタイカ様以外にはお話できない事柄ですから。『大司教が不気味な蛇を飼い、声高に侵略だ、征服だと叫んでいる』などと他の者に話せば、皆が不安に思うでしょう」
    「それで俺か。……まあ、確かに教団内では、教主のお前以外には、俺は単なる黒子にしか見られんからな」
     大火はクク、と笑いながらコーヒーを飲み干す。すかさずウィリアムがおかわりを注ぎながら話を続ける。
    「その点に関しましては、本当に開祖に感謝したいところです。こうして最も頼れるお方に、気兼ねなく内々の相談ができるのですから」
    「あいつもなかなか、洒落の効くことを考えたものだ。
     ……それでウィリアム、その蛇のことだが。何なら俺が始末してやろうか? それほど不安と言うのなら、手を貸してやってもいい」
    「いえ、いくら気味が悪いとは言え、弟の所有物ですから。……それよりも、もっと根本的なことを調べていただきたいのです」
    「根本的なこと?」
    「弟の行動が、本当に教団のためを思ってやっていることか、をです。私にはとても、そうは思えない。むしろもっと、利己的な理由で動いているような気がするのです」
    「なるほど」
     2杯目のコーヒーを飲み終えた大火に、ウィリアムはもう一杯勧めたが、大火は小さく手を振り断った。
    「それで、代わりに何を出す?」
    「古代の魔術書はいかがでしょうか? 先日、山脈の北西部にて遺跡を発見いたしまして、そこから出土したものがございます」
    「ほう」
     ウィリアムは足元に置いていた手提げ金庫から古びた書物を取り出し、大火に差し出した。
    「……ふむ」
     大火は表紙を見て、元から細い目をさらに絞る。その目はなぜか、笑っているようにも見える。
    「お前、古代語は読めるのか?」
    「いえ、まったく」
    「『今日の料理』だ」
    「へ?」
     目を丸くするウィリアムに、大火は本をトントンと指で叩き、指し示す。
    「古代の遺跡が皆、魔術の研究所と言うわけではあるまい。……クッ、ククク」
     大火は腕を組み、下を向いて肩を震わせた。どうやら笑っているらしい。
    「ク、クク……。まったく面白い奴だ、クク……」
    「し、失礼いたしました」
     顔を真っ赤にして謝るウィリアムに、大火は顔を伏せたまま応える。
    「クク……、まあ、いい。俺が訳してやるから、その料理を作って俺に振舞え。それが『代償』でいい。……クククク」
     よほどツボに入ったらしく、その後数分、大火は顔を伏せたままだった。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    そう言えば料理回だったw

    年明けになってコメントに気付きました(;´∀`)
    遅れましたが良いお年を(この5分後に新年の挨拶をするのが何とも……)

    NoTitle 

    しまった、「蒼天剣・周富徳」はこっちの回であったか(笑)。

    ミカン食いながらPCいじって、横のテレビで「紅白」見てます。

    よいお年を~。
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