「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第6部
白猫夢・捜卿抄 3
麒麟を巡る話、第266話。
目標捕捉。
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3.
SS招集から1時間後、隊員たちが集めてきた情報と、アテナの判断・推理とで、誘拐犯らの居場所を、ほぼ特定することができた。
「3台のタクシーについてですが、アニェント通りから中央大通りへ抜けたのち、数ヶ所の街道を渡って、そのまま郊外、西の方へ向かったとのことでしたね?
その後は目撃情報が無い、とのことでしたが、そのことから逆に、場所を絞れます」
「と言うと?」
隊員の一人が発した言葉に、アテナはいつものように、冷ややかに答える。
「街の西側郊外まで向かったとなると、その後彼らが執るであろう手段は2つあります。1つはそのまま西へ向かって走り続ける。もう1つは、どこかへ駐停車する。
前者を選択するのは、あまりにも無計画かつ無謀です。一般的なタクシー車輌はコストダウンのため軽量化されており、街の外まで長々と走行できるほどの燃料を詰めるような構造にはなっていません。加えて現在は夜であり、走行するにはライトを点ける必要があります。
もしライトを点けて走行していた場合、確実に近隣の町村で目撃されることになります。その情報が無いと言うことは、この方法を執っている可能性は極めて低いものと思われます」
「ライト消して走行してたら……」
隊員の間抜けな発言に、ベルが頭を抱えて反論する。
「できるわけないでしょ。こんな真夜中に、灯りも何もない道を爆走なんてしてたら、即クラッシュするってば」
「ええ、私もそうなる可能性は極めて高いと思われます。また、いずれの場合にせよ、エンジン音で気付く人間は少なくないでしょう」
アテナにも否定され、隊員は顔を真っ赤にしてうつむく。
「……すんません」
「一方、後者を選択した可能性は、少なからずあるでしょう。
前述の通り、このまま夜間に走行し続けていれば、新たな目撃情報が発生するのは確実です。それが無いと言うことは、何らかの『隠れ家』を有している可能性が高いものと思われます。
それを前提として、街の西側近辺にその用途に適う施設が無いか、地図上で検索したところ……」
アテナは机に広げた地図を、指示棒で示す。
「ここに、廃棄車輌を解体する工場があります。通常時より、ここには多数の車輌が集まっているため、タクシー3台程度であれば、簡単に隠すことができるでしょう。
一方、夜間は基本的に無人であるとの情報も得ていますし、また、廃車から抜き取ったガソリンも、多く備蓄されているとのことです。
恐らくはここで給油すると共に夜が明けるのを待ち、他のタクシー車輌の出勤時間に紛れて、さらに逃走するものと思われます。
即ち、逆に考えれば――朝まで犯人たちは、ここを動くことは不可能です。早急に現場へ向かい、取り囲めば、ハーミット卿の奪還は容易でしょう」
アテナの言に従い、SS部隊は自動車廃棄工場へと急行した。
「……流石、アテナ。いるみたいだよ、犯人」
ベルが中の様子を密かに伺い、工場内にうっすらと灯りが点っていることを確認する。
そして工場の前には、まだ廃棄処分にするには早過ぎる、現行のタクシー車輌が3台、乱雑に停められている。
「どうしますか、隊長?」
「そうだね……。まず、第一に考えるべきはパパ、……じゃない、ハーミット卿の確保。それから第二、犯人は極力殺さず、確保すること。これは戦争じゃないからね。
まず、フレッドとキトンは工場裏手に回り、そこから内部に進入。卿の位置を確かめ、可能であれば救出・保護し、工場から脱出して。
遂行でき次第、『頭巾』で合図してね」
「はい」「了解です」
「その間にあたしたちは、あのタクシーまで進む。そこで犯人らの姿を確認し、卿の姿が見えないようであれば、催涙弾を投げ込み相手を無力化。
卿が近くにいる場合は、……そうだな、この場合はフレッドたちにもそれは確認できてるだろうから、『頭巾』で状況を報告後、陽動に回って。
犯人がフレッドたちに気を取られたところで、あたしたちが強襲。そのまま確保する。……これで行こう」
「了解」
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目標捕捉。
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3.
SS招集から1時間後、隊員たちが集めてきた情報と、アテナの判断・推理とで、誘拐犯らの居場所を、ほぼ特定することができた。
「3台のタクシーについてですが、アニェント通りから中央大通りへ抜けたのち、数ヶ所の街道を渡って、そのまま郊外、西の方へ向かったとのことでしたね?
その後は目撃情報が無い、とのことでしたが、そのことから逆に、場所を絞れます」
「と言うと?」
隊員の一人が発した言葉に、アテナはいつものように、冷ややかに答える。
「街の西側郊外まで向かったとなると、その後彼らが執るであろう手段は2つあります。1つはそのまま西へ向かって走り続ける。もう1つは、どこかへ駐停車する。
前者を選択するのは、あまりにも無計画かつ無謀です。一般的なタクシー車輌はコストダウンのため軽量化されており、街の外まで長々と走行できるほどの燃料を詰めるような構造にはなっていません。加えて現在は夜であり、走行するにはライトを点ける必要があります。
もしライトを点けて走行していた場合、確実に近隣の町村で目撃されることになります。その情報が無いと言うことは、この方法を執っている可能性は極めて低いものと思われます」
「ライト消して走行してたら……」
隊員の間抜けな発言に、ベルが頭を抱えて反論する。
「できるわけないでしょ。こんな真夜中に、灯りも何もない道を爆走なんてしてたら、即クラッシュするってば」
「ええ、私もそうなる可能性は極めて高いと思われます。また、いずれの場合にせよ、エンジン音で気付く人間は少なくないでしょう」
アテナにも否定され、隊員は顔を真っ赤にしてうつむく。
「……すんません」
「一方、後者を選択した可能性は、少なからずあるでしょう。
前述の通り、このまま夜間に走行し続けていれば、新たな目撃情報が発生するのは確実です。それが無いと言うことは、何らかの『隠れ家』を有している可能性が高いものと思われます。
それを前提として、街の西側近辺にその用途に適う施設が無いか、地図上で検索したところ……」
アテナは机に広げた地図を、指示棒で示す。
「ここに、廃棄車輌を解体する工場があります。通常時より、ここには多数の車輌が集まっているため、タクシー3台程度であれば、簡単に隠すことができるでしょう。
一方、夜間は基本的に無人であるとの情報も得ていますし、また、廃車から抜き取ったガソリンも、多く備蓄されているとのことです。
恐らくはここで給油すると共に夜が明けるのを待ち、他のタクシー車輌の出勤時間に紛れて、さらに逃走するものと思われます。
即ち、逆に考えれば――朝まで犯人たちは、ここを動くことは不可能です。早急に現場へ向かい、取り囲めば、ハーミット卿の奪還は容易でしょう」
アテナの言に従い、SS部隊は自動車廃棄工場へと急行した。
「……流石、アテナ。いるみたいだよ、犯人」
ベルが中の様子を密かに伺い、工場内にうっすらと灯りが点っていることを確認する。
そして工場の前には、まだ廃棄処分にするには早過ぎる、現行のタクシー車輌が3台、乱雑に停められている。
「どうしますか、隊長?」
「そうだね……。まず、第一に考えるべきはパパ、……じゃない、ハーミット卿の確保。それから第二、犯人は極力殺さず、確保すること。これは戦争じゃないからね。
まず、フレッドとキトンは工場裏手に回り、そこから内部に進入。卿の位置を確かめ、可能であれば救出・保護し、工場から脱出して。
遂行でき次第、『頭巾』で合図してね」
「はい」「了解です」
「その間にあたしたちは、あのタクシーまで進む。そこで犯人らの姿を確認し、卿の姿が見えないようであれば、催涙弾を投げ込み相手を無力化。
卿が近くにいる場合は、……そうだな、この場合はフレッドたちにもそれは確認できてるだろうから、『頭巾』で状況を報告後、陽動に回って。
犯人がフレッドたちに気を取られたところで、あたしたちが強襲。そのまま確保する。……これで行こう」
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