黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第6部

    白猫夢・五雛抄 6

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    麒麟を巡る話、第285話。
    ふしぎな少年。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    6.
     玄関に向かった鈴林が、ニコニコと笑いながら戻って来た。
    「姉さん姉さんっ、も一人受講希望者が来たよっ」
    「お、そっか。……ギリギリだな」
     目の端でチラ、と確認すると、時計は締切の5分前を指している。
    「でねっ、その子も……」「子? ……って言うと、また10代のヤツか?」
    「うんうんっ」
    「……ま、とにかく面接だな」

     やって来たのは、10代半ばと言うくらいの長耳で、淡い青髪の少年だった。
    「じゃ、まず名前から聞かせてもらおうか」
    「はい。フィオリーノ・ギアトです」
    「央中人か? 東部っぽい名前だが」
    「いえ、先祖は東部の人だったそうですが、祖父の代からゴールドコースト市国に引っ越したらしいです」
    「ココには誰の紹介で?」
    「ここの関係者だった、カンパーナ・フォレスター・コンキストさんです。あ、これ、紹介状です」
    「あ?」
     名前を聞くなり、天狐は怪訝な顔をした。
    「誰だって? 聞いたコトねー名前だな」
    「えっと、紹介状……」
     おずおずと差し出されたその紹介状を受け取り、天狐は中身を確認する。
    「……」
     読み終えるなり――何故か天狐は立ち上がり、「テレポート」でその場から消えた。
     突然の行動に、鈴林は面食らう。
    「えっ……? あ、姉さん!? ドコ行っちゃったのっ!?」
    「騒ぐな」
     と、すぐに天狐が姿を現す。
    「ちっと、……な。
     ああ、何て言ったっけ、お前。フィオでいいか?」
    「はい」
    「研究したいテーマは? ゼミに入れるってのに、お前だけ設定しない理由はねーからな」
    「え?」
     天狐のこの言葉に、鈴林は戸惑った。
    「姉さん? 面接もせずに入れるのっ?」
    「ああ。『そうしなきゃいけない』らしいからな」
    「え? え?」
     天狐の真意が分からず、鈴林がうろたえている間に、フィオは研究テーマを決めた。
    「じゃあ、金属加工で。神器技術を僕なりに研究したいです」
    「分かった。ただし、分かってると思うが、克一門は神器造りに関しては秘密にしてるコトが多い。オレもその例に漏れず、だ。
     神器関係については、助言はするが指導はできねーからな。お前の試行錯誤に任せる形になる。それでいいか?」
    「はい。問題ありません」
    「だろうな」
    「え? ……えー、それでいいの……?」
     通常の面接とは明らかに異なる二人のやり取りに結局、異を唱えることができず、鈴林は不満げな声を挙げるしかなかった。

     フィオを寮へ案内した後、鈴林は天狐に詰め寄った。
    「どう言うコトなの、姉さんっ? なんでちゃんと面接しなかったのっ? しかも途中で席を立っちゃうし!」
    「色々あんだよ。悪いが今は、ソレ以上の説明ができねー」
    「ナニソレ」
     いつも笑顔でいる鈴林には珍しく、苛立った目つきになっている。
    「ホントにお師匠のわるーいトコ受け継いでるね、姉さんって! 大事な話に限って、アタシに教えてくれないっ!」
    「……教えたいさ。お前の機嫌損ねたって、晩飯がしょぼくなるだけだからな。オレとお前の仲だし、秘密は無しにしたいってのは、マジに思ってる。
     だがコレに限っては――マジで悪いと思ってるが――今はまだ、何も聞かないでくれ」
    「今は?」
    「コレに関しては今、詳しく話すと、色々まずいコトになりそうなんだ。本当だったらオレにすら、教えたくないコトだったろうし、な」
    「姉さんにすら? ……あの紹介状? 何て書いてあったのっ?」
    「だからソレは、今は言えねーんだよ。時が来るまで、誰にも言えねーコトなんだ」
    「時って、いつ来るの?」
    「今じゃない。近い将来でもない。今はソレしか言えない」
    「……むー」
     頬を膨らませる鈴林を見て、天狐はもう一度、「悪いな」と言った。

     そして――むくれる鈴林はまったく気づいていなかったが――二人のやり取りを、フィオが何故か嬉しそうに、そして、どこか意外そうな様子で眺めていた。
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    NoTitle 

    残念ながらハズレです。
    もうちょっと複雑な事情があります。

    NoTitle 

    紹介状

    「記憶を失って若い身体になったオレが行くから鍛えてくれ 大火」

    ……なんて(^^;)
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