黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第6部

    白猫夢・分派抄 2

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    麒麟を巡る話、第288話。
    2つの派閥。

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    2.
     第1日目の講義が終わり、新しく入ったゼミ生の何人かは、茫然としていた。
    「……すげえ難しい」
    「うん……」
    「やべー……。何言ってるか全然分かんなかった」
     早くも挫折気味になっている者もいたが、大多数のゼミ生は早速、今日の受講内容を復習していた。
    「トポリーノ親子ってすごい方たちなんですね、本当」
    「ホンマになぁ。ポスター見る限りでは、ただのぽっちゃり兎獣人にしか見えへんかったけど」
    「電話があんな風に造られていたなんて、初めて知りました」
    「でもまだ、改良の余地いっぱいあるよ。かける時、プツプツうるさいもん」
     元々歳が近いせいか、葵・春・マロ・フィオの4人は、一緒に固まって話し合っていた。
    「……」
     一方、10代組の残る1人、マークは、その輪に溶け込めないでいるようだった。
     いや――その中の一人を殊更に避けているのだ。
    「お、どうした? 一人でぼーっとして」
     マークの様子を見ていた他のゼミ生が声をかける。
    「話し相手がいないのか? 良かったら……」「いえ、大丈夫です」
     反射的にそう返し、すぐにマークは首を振り、改める。
    「あ、……すみません。やっぱりお願いしていいですか?」
    「ん、おう。まあ、気を遣わなくていいぜ」
    「はい、ありがとうございます」
     マークは同級生にぺこ、と頭を下げ、その直後にチラ、と葵の方に目をやった。
    「どうした?」
    「……いえ」

     マークはゼミ内の、もう一つの教室――こちらは鈴林が講義を行っていた――へと連れて行かれ、そこで短耳の青年に紹介された。
    「ども、ブロッツォさん。彼が今期の10代生の、セブルス君です」
    「ありがとう」
     短耳はマークに手を差し出し、握手を求める。
    「よろしく。3回生のルシオ・ブロッツォだ」
    「よ、よろしくお願いします」
     握手を交わしたところで、ルシオはマークに尋ねる。
    「他の10代生はみんな固まって復習してるって聞いたけど……、君はどうして一人でいたの?」
    「いえ、特に、……理由は」
    「そっか。まあ、これからよろしく。今後も一緒に勉強していければ幸いだ」
    「あ、はい」
     マークが辺りを見回すと、開講前に寮の方で見かけたことのあるゼミ生の半数が、教室内にいるのが確認できた。
    「あの……、皆さんは?」
    「ああ」
     ルシオはにこっと笑い、状況を説明した。
    「なに、怪しい集まりじゃないさ。ただ『みんなで一緒に勉強しよう』って言う、グループみたいなもんだよ。
     基本的に、天狐ゼミに来る人は頭がいい人ばかりだけど、それでもやっぱり難しく感じることはちょくちょくあるし、あんまりテンコちゃんやレイリンさんに質問してばっかりじゃ、手を煩わせちゃうからね。
     そこでゼミ生同士が集まって、互助的に勉強会をしてるんだ。折角この名誉あるゼミに入れたのに、ついてけなくなって退講なんてもったいないからね」
     言われてもう一度周りに目をやると、先程一緒に講義を受け、茫然としていた同級生の姿も見える。
    「無論、君が勉強できなさそうに見えたなんてことは毛頭考えてない。むしろ、僕たちに至らないことがあれば、どんどん教えてほしいなって」
    「いや、そんな。こちらこそ若輩者ですので、よろしくご指導いただければ幸いです」
    「うん、うん。
     じゃ早速、今日の勉強会を始めようか」



     一方――葵たち10代生の周りには、いつの間にか20代の同期生たちも集まっていた。
    「ねえねえ、ハーミットさん」
    「ん」
    「好きな料理は?」
    「トマト煮。特に魚を煮たやつ」
    「コンノさんは?」
    「鶏の炊き込みご飯、ですね」
     最初は教室に残っていた者たちで真面目に講義内容の復習を行っていたのだが、いつの間にか、葵と春への質問の場へと変わっていた。
     そしてもう一人――今期入って来た20代生の女性、短耳のシエナ・チューリンも、周りのゼミ生から色々と尋ねられていた。
    「シエナさんは?」
    「特に好き嫌いないよー」
    「強いて言えば?」
    「うーん……、市国で食べてたワッフルかなぁ」
    「美味しそうですね。甘いもの、わたしも大好きですよ」
     マークがルシオたちのグループに参加する一方、こちらも和気あいあいとしたグループを形成しつつあった。
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