黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第6部

    白猫夢・分派抄 3

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    麒麟を巡る話、第289話。
    フクザツ天狐。

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    3.
     562年上半期ゼミが開講してから2ヶ月が経った頃、天狐と鈴林が密かに話し合っていた。
    「妙なコトが起きてるな、今期は」
    「妙って言うとっ?」
    「お前なぁ……、今期ほど変なコトばっかりってのは、滅多に無いぜ? 何にも気付かねーのか?」
    「うーん……、まず、フィオくんのことでしょ」
    「ソレは置いといてくれ。……まあ、ソレも奇妙なんだが。
     今期の入塾生が少な目って言うのは確かだが、ソレでも10代組が全入塾生の半分ってのも珍しい。
     んで、もういっこ珍しいのが、アレだ」
    「どれ?」
    「ほら、オレたちに質問するのとは別に、自分たちで考えてみようって集まってるグループがあるだろ? ゼミ生の間じゃ『勉強会』って呼ばれてるが、今期は……」
     言いかけたところで、天狐は顔をドアの方に向ける。
     それと同時に、ドアがノックされた。
    「失礼します」
    「おう、入れ」
     入って来たのは、マークだった。
    「ちょっと今日の講義について、質問したいことがありまして……」
    「ドコだ?」
     マークの質問に答えつつ、天狐はこんなことを尋ね返した。
    「そう言やさ、マーク」
    「はい?」
    「お前、どっち派なんだ?」
    「と、言うと?」
    「いやな、今鈴林とも話してたんだが、今期は勉強会が2つできてるらしいって、な。
     やっぱりお前も、『ハーミット派』の方なのか?」
    「……いえ、ブロッツォさんの方です」
    「へぇ、そうなのか。てっきり10代組は全員葵の方に行ってるのかと思ってたが」
    「色々ありまして」
     言葉を濁したマークに、天狐は何かを察したらしい。
    「なんかあったのか?」
    「いえ、特には何も」
    「『色々あった』のに『特に何も無い』って? あるのか無いのかはっきりしろよー」
    「……ん、まあ、その……、言葉の綾です」
    「ふーん……?」
    「……」
     困った顔で黙り込んだマークに対し、天狐はこう返した。
    「まあ、特にアレコレ尋ねたり口出ししたりする気はねーけどよ、マーク。独りで何でも抱え込まねー方がいいぜ。
     そりゃ誰だって言いたくねーコトはあるだろうし、『んなもん気にせずに明け透けにハラ割っちまえ』なんて絶対言わねーが、ソレでも一人で全部、何でもかんでも、ってのは結構きついぜ?
    『秘密』が生まれるのは他人がいるからこそだし、だから一人で丸ごと抱え込めるようにはできてねーんだ。他人と作ったものは結局、他人と共有するようにできてんだよ」
    「……ご高説、ありがとうございます。言いたくなったら、その時には言います」
    「おう」

     マークが部屋を出た後、鈴林がニヤニヤし始めた。
    「……なんだよ」
    「姉さんのクセにー、って」
    「あ?」
    「一人で色んな秘密隠すタイプなのにっ、よくあんなコト言えるね、って」
    「……るっせーなぁ。まだフィオのコト、根に持ってんのか?」
    「他にも色々ねーっ」
     むくれる鈴林に、天狐はしかめっ面を返す。
    「言っただろ? 誰だって言いたくねーコトはあるんだ。
     理由は色々あるし、差支えも色々ある。ソレ全部さらけ出したって、全部が全部、いい方に向かったりはしねーんだよ。打ち明けていい方に向かうって確信がありゃ、言うけどさ」
    「アタシには言えないコト、多いんだねっ」
    「今は、ってコトだ。時期が来たら、ちゃんと説明もするし、謝りもする。だから今は根掘り葉掘り聞くのは、勘弁してくれ」
    「……はーい」



     その夜――天狐は鈴林に知られぬよう、こっそりと「通信」を送った。
    「『トランスワード:ギアト』、……聞こえるか?」
    《はい、聞こえます》
     相手は件の少年、フィオである。
    「今日も鈴林から突っつかれたぜ。まったく、面倒臭せーコトしてくれるもんだ」
    《本当にすみません。でも》
    「繰り返さなくていい。分かってる、『そうなるべきコト』なんだろ」
    《はい》
    「……で、オレが聞いておきたいのは、だ」
     天狐は辺りに人の気配が無いことを確認し、こう尋ねた。
    「『近い将来に起こる』って聞いたが、具体的にはいつなんだ? ソレだけでも知りたいんだけどな。いつ起こるのか分からねーんじゃ、オレには何をどうしようも無いだろ」
    《……少なくとも、僕が聞いたのは8年後の、570年であると》
    「8年後か。だけどソレは今、確実じゃなくなってるんだよな?」
    《ええ。あまりにも特異かつ、方々に影響が大きすぎることですし、起こるべきことであるのは間違いないです。
     でも僕がここにいることで、誤差が生じる可能性もまた、発生しています》
    「観察者効果、ってヤツだな。だが、まあ、予測は立てられる。
     引き続きお前には――鈴林に気付かれないように――攻撃魔術を指導してやるよ。『その時』のために、な」
    《ありがとうございます》

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    2015.09.28 修正
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