黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第6部

    白猫夢・分派抄 4

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    麒麟を巡る話、第290話。
    騒ぎと叱咤。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    4.
     同程度、同格の「組織」や「派閥」が2つ以上あれば、必ず対立や確執が生まれる。
     勉強会が2派となった今期の天狐ゼミもその例に漏れず、不穏な空気が漂い始めていた。

     例えば――。
    「おい、お前ら!」
    「えっ?」
     街の図書館。
     大机の一つを囲んでいた「ハーミット派」のゼミ生たちに向かって、「ブロッツォ派」の上級生たちが突然、怒鳴りつけてきた。
    「そこは僕たちがいつも使っている席だ! 別の席に移れ!」
    「いや、ここは今、僕たちが使って……」
    「そんなの関係ない! どけっ!」
    「……っ」
     高慢な物言いに、席に着いていたゼミ生たちは揃って不快な顔をする。
    「……嫌です」
    「僕たちに逆らうのか!」
    「あなたたちは僕の先生でもリーダーでもないでしょう?」
    「上級生だぞ、僕たちは!」
    「だったらなんですか?」
     言い合いになり、場の空気が険悪になる。
     と、ここで遠巻きに見ていた職員が、顔をこわばらせて近付いて来た。
    「君たち、何をしてる! ここは静かにする場所だぞ! 騒ぐなら出て行ってくれ!」
    「だって、こいつらが……」
    「騒いでいるのは誰だ! さっきから見ていたが、騒ぎ出したのは君たちじゃないか!」
    「……ふん」
    「ブロッツォ派」のゼミ生たちは謝ることもせず、そこから立ち去る。
    「すみません、お騒がせしました……」
     一方、「ハーミット派」の方もいたたまれなくなったらしく、そそくさと席を立った。



     こうした騒ぎを何度となく聞きつけた天狐はゼミ生を集め、きつく注意した。
    「はっきり言っとくぞ、お前ら――今期ほど呆れたのは、ゼミ始まって以来だ!
     あっちこっちから、ガキのケンカみてーなコトしてやがるって苦情が入って来てんだ! おかげで方々謝りに行ってたんだぞ、オレが! お前らのくだらねー背比べのせいで、オレは散々恥かかされたんだ! 分かってんのか!?
     オレはお前らに魔術教えるためにゼミやってんだぞ! ガキのお守りなんかするつもりは一切無え! こんなガキみたいなコト続けるってんなら、今日でゼミは中止だ! 全員帰っちまえッ!」
    「……」「……」
     天狐の怒り様に、ゼミ生たちは揃って蒼ざめる。
    「ソレが嫌だってんなら、もっと行儀よくしろ! お前らは見どころのあるヤツだと思って、オレ自らが毎期毎期選び抜いた優等生なんだからな!
     ……だから、オレをがっかりさせてくれるな。分かったか?」
    「……はい」「すみませんでした」
     ゼミ生たちは一応、その場では謝意を見せ、天狐の訓告は終わった。

     その上で、天狐は葵とルシオの二人を呼び出した。
    「今日も叱ったコトだが、念押しでもう一度、お前らに言っとくぞ。
     オレは勉強会がいくつできようが、ソレについては何も言わねー。ちょっとくらい競う相手がいた方が、張り合いも出るだろうしな。
     だけども一々、ガキみたいなケンカの尻拭いをさせられるのはうんざりだ。お前ら、仲良くできねーのか?」
    「いえ、そんなことは。少なくとも僕は、『みんなにケンカしろ』なんて言ったことは、一度もありません」
     弁解するルシオに、葵も続く。
    「あたしも言ってない。みんな勝手にやってる」
    「ほーぉ」
     二人の返答に、天狐は不服そうな顔をした。
    「二人とも、『言ってない』と。他にも、何もしてないワケだな」
    「はい」「うん」
    「じゃあ聞くが、何かしたか?」
    「いえ」「何にも」
    「『ケンカすんな』って言ったか?」
    「……いえ」「言ってない」
    「ざけんな」
     天狐は机をバン、と叩き、二人の態度をたしなめる。
    「お前ら――勝手になったか、自分で手を挙げたか知らねーが――どっちもリーダーやってんだろーが! そんなら自分の下に来てるヤツを、ちゃんと統率するのがリーダーの責任ってもんだろ!?
     お前らが放任主義よろしく、勝手気ままにさせてっからこんなコトになんだよ! 今後はもっと、ちゃんとリーダーらしくしやがれ!」
    「……すみません。以後、気を付けます」「分かった」



     天狐の一喝が功を奏したらしく、この後しばらくは、両派が対立することは無かった。
     しかし――ある一件により、天狐は再度、のどをからして怒鳴る羽目になった。

    白猫夢・分派抄 終
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