黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第6部

    白猫夢・狙狐抄 2

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    麒麟を巡る話、第292話。
    二度目の叱咤。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
    「お前、ココに何しに来てんだ?」
     ある日、マロは天狐から呼び出され、行状を咎められていた。
    「勿論、勉強です」
    「ほーぉ。じゃ、コレについて聞かせてもらおうか?」
     天狐は机に置いてあった手紙を開き、マロに見せる。
    「お前の親父さんからだ。『先月、私宛てに合計何十万エルと言う額の請求が来た。どうやら御ゼミに預けている息子が小切手で支払ったものと思われるが、息子は一体、そちらでどんな研究をしているのか』ってな。
     で、調べてみりゃ、島の高級レストランやらラウンジやら、おおよそ学生がひょいひょい気軽に入れねーようなところに散々、入りびたってるらしいじゃねーか。
     オレは言ったよな、『学生の本分から著しく外れるような、くだらねー遊びに没頭してやがったら、即退講処分だ』って。お前のコレは、その範疇に扱ってもおかしくない。
     どう言うつもりでこんなところ行き来してんのか、きっちり答えろ」
     明らかに怒りを抱えた様子の天狐に対し、マロはへらへらと言い訳する。
    「いや、別に俺は自分が遊ぶ目的で入ったわけちゃうんですよ。
     ほら、テンコちゃんもこないだ叱ってはった通り、今、うちのゼミってハーミット派とブロッツォ派に分かれて対立しとるやないですか? 俺、そう言う仲間内での争いとか、ホンマに嫌ですねん。
     で、それを何とかして解消でけへんもんかと思いまして、こうして両派問わず誘って楽しんで、垣根を無くしたいなーと」
     この言い訳を聞いた天狐の額に、ぴくりと青筋が浮かぶ。
    「別にソレは、普通の安い店に行ったってできるコトだろ? 何でわざわざ高級店に入る?」
    「普通の店やったら誰でも入れますやん。そんなところやったら、対立してることを忘れられませんやんか。
     せやったら常識が一瞬吹っ飛ぶようなものすごい店に入って、憂さ晴らしさしたったら……」「お前はなんだ? ホストかなんかか?」
     バン、と天狐が机を叩く。
    「お前のやってるコトは『学生の本分』どころの話じゃねーんだよ! お前一人ならまだしも、他のゼミ生にまで迷惑かけやがって! 朝の講義に出た途端、二日酔いで顔真っ青の、酒くせーゼミ生に出迎えられる羽目になるオレの身になってみろってんだ!
     これ以上、そのみっともねードラ息子っぷりを披露するんなら、とっととオレのゼミから出て行けッ! 遊び人ごっこなら余所でやれやッ!」
    「いや、あの、それはちょっと……」
    「ソレが嫌だってんなら、二度とこんな、金をバラ撒くようなコトすんなッ!」
    「すんませんでした……」
     散々に怒鳴られ、マロはこってりと絞られた。

    「……あーッ、もおッ!」
     マロへの叱責を終えた天狐は、天井を仰いでうなった。
    「何なんだ今期は! こんなに怒鳴り散らしっぱなしなのは初めてだぜ、まったく!」
    「お疲れさま、姉さんっ」
     鈴林から受け取った茶を、天狐はぐい、と一気に飲み干し、ため息をつく。
    「ああ、マジで疲れたよ! ……ったく、本気で今期のゼミは中止しようかと思っちまうぜ」
    「駄目だよっ、真面目に頑張ってる人もいっぱいいるんだからねっ」
     不安そうな顔をした鈴林に、天狐は肩をすくめて返した。
    「ケケ……、冗談だよ、冗談」



     一方――天狐から叱咤されたにもかかわらず、マロは自分の部屋に戻るなり懐から小切手を取り出し、ぺらぺらと開いて数を確認しだした。
    「さーて、と。今日はどこ行こかなー」
     その様子に、反省の色は全く見えない。

     と――ドアの向こうに、マロの様子を覗く者がいた。
    「……」
     まだ50枚以上は残っている小切手束を眺め、ヘラヘラしているマロの姿に、彼は歯ぎしりする。
    (絶対に許しておけない……! 許すものか……!)
     怒りを胸に秘め、彼はその場から立ち去った。
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